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安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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今、当ブログがすべての「主戦論者」に送る全面核戦争の恐怖描いた映画「THE DAY AFTER」(1983年米国)

2022-05-08 18:02:26 | 反戦・平和
ロシアによるウクライナ侵攻から2ヶ月半が経過した。事態は収束の気配を見せないまま、5月9日、ロシアにとって最も重要な祝日である対独戦勝記念日を、まもなく迎える。

日本国内には危うい空気が流れている。侵略者ロシアを懲らしめるために、経済制裁しろ、防衛費を倍増しろ、敵の基地だけでなく中枢も叩ける能力を持て、そして挙げ句の果てには「日本も核武装を」--。核が抑止力にならないことを学ばなければならないのが今回の戦争ではなかっただろうか。

そんな中、四国旅行中の5月1日、現地で見つけた「徳島新聞」に政治学者・姜尚中さんが「保てるか共存可能な世界」と題した一文を寄せている。姜さんは「私たちは敵を倒したとしても味方の存続すらままならない、破局の深淵を垣間見つつある」とした上で、「正義が実現されなくても、醜悪な取引であっても、平和的な「共存」が可能な国際秩序を保つことができるだろうか」と問うている。この問いは、少なくとも「打倒ロシアのためなら何をしてもいい」という極論よりはマシなのではないだろうか。

今、いきり立って「ロシアをせん滅せよ」と叫んでいる人たちは、その正義が絶対かどうか冷静になってもらいたい。人類が破滅してまでも、それは貫かなければならないほどの正当性を持っているのか。「ロシアなんてどうでもいいから、自分は生き残りたい。世界の終末なんて見たくない。自分の人生を楽しみたい」という人がいても、それもまた正義なのではないだろうか。

人類は、今、「正義」とやらのために滅亡の淵に立っている。世界の終末を防ぐには、全員が少しずつ「正義」をあきらめ、譲歩しなければならないのではないだろうか。特に、ロシア制裁を声高に叫ぶ保守層に私は問いたい。20年前、米国がイラクに侵攻したとき、あなた方は「対テロ戦争」と叫び米国を支持していたのではなかったか。同じ「力による一方的な現状変更」なのに、米国ならよく、ロシアならダメだというなら当ブログが納得できるだけの根拠を示してもらいたい。

それに、河合案里事件に見られるように、有権者を汚いカネで買収して不正選挙で勝ち、平和・人権・環境保護・脱原発などを訴える人たちを「お花畑」「9条信者」「きれい事」「対案を出せ」などと口汚く罵ってきたお前らが、相手がロシアになったとたんに正義だのなんだのとご託を並べているのを見ると、吐き気がするんだよ!

ご都合主義の保守層・対ロシア「主戦論者」どもに告ぐ。1983年に米国で公開され、全米に衝撃を与えた映画「THE DAY AFTER」の一部をご紹介する(映画「The Day After」(1983年、米国)から、核爆発の瞬間の場面)。世界全面核戦争になればどのような事態が起きるかを迫真の映像で描いている。日本でも1980年代にテレビ朝日系「日曜洋画劇場」で放送され話題を呼んだ。日本もこのようになるかもしれない。

これを見てもなお、「それでもロシアを倒すべきだ。世界が終わってもいい」という人とは、残念ながら対話の余地はない。当ブログは「ロシアなんてどうでもいいから、自分は生き残りたい。世界の終末なんて見たくない。自分の人生を楽しみたい」と思っているから、そのような人々がもしいたら、容赦なく「敵」とみなす。世界がこのような事態を迎えないため、当ブログは今後もあらゆる努力を続けたい。

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プーチン氏が病気治療か、甲状腺がん専門家が別荘に出入り…露メディア報道

2022-04-02 23:34:50 | 反戦・平和
プーチン氏が病気治療か、甲状腺がん専門家が別荘に出入り…露メディア報道

驚くべきニュースが飛び込んできた。情報の真偽が現段階では明らかではないが、ロシアのような独裁的・情報統制的な国家では、このような情報が表に出ること自体が「帝国の終わりの始まり」を告げるものであることが多い。とりわけそれが世界の運命を狂わせた指導者に関するものであればなおさらである。

政敵を葬り去りたいとき、病気でもないのに病気をでっち上げ、強制入院させて辞任せざるを得ないように仕向ける手法は、古今東西問わず常套手段としてしばしば歴史上に登場してきた。

ちなみに、甲状腺がんというと、放射線被ばくを思い出す人が、とりわけ当ブログの読者には多いかもしれない。プーチン大統領の甲状腺がんが事実だとして、それがチェルノブイリ原発事故と影響があるかどうかは何とも言えない。甲状腺がんは、加齢に伴って発生率が上がることが知られており、ロシア人男性としてはすでに平均寿命を超えているプーチン大統領の場合、放射線被ばくの影響がなくても発生して何らおかしくないからである。

チェルノブイリや福島での甲状腺がんは、18歳以下の若年層では、通常100万人に1人程度の発生率であるものが、20万人の検査で300人近くも発生しているから問題とされているのであり、高年齢層では発生率が幾分増えたとしても、それが放射線被ばくに由来するかどうかの見極めは、実はきわめて難しい。

それはともかく、平均寿命が68歳といわれるロシア人男性にとって、プーチン大統領の69歳は平均年齢を超えており、日本で言えば80歳を超えた二階俊博前自民党幹事長や麻生太郎自民党副総裁が首相になるようなものだといえば、日本人にもその危険性が理解されると思う。プーチン大統領もそろそろ「引き際」を考えるときだろう。

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【ウクライナ侵攻1ヶ月】映画「ひまわり」(ソフィア・ローレン主演)テーマ曲

2022-03-24 22:31:50 | 反戦・平和
ウクライナで撮影、名作「ひまわり」上映広がる 「同じこと現実に」(朝日)

早いもので、ロシア軍によるウクライナ侵攻から1ヶ月となった。当初は短期終結が見込まれたこの戦争は予想外に長引いている。ロシア、ウクライナとも停戦交渉は続けているが、現状は「交渉のチャンネルは閉ざさない」というメッセージの意味合いが大きいように見える。

当ブログ管理人は、9条改憲を狙う改憲派が衆院ではすでに発議に必要な3分の2を握る中、この戦争が継続したままの状態で参院選に突入するのはまずいと考え、早期停戦を願ってきた。だが、ロシア、ウクライナともに政治・軍事両面で決め手を欠いており、当ブログが最も恐れていた展開--「停戦できず、戦争が継続したまま参院選突入」もそれなりに考えなければならない事態になってきた。

これ以上、この戦争のことを考えても今は決め手もないので、今日はウクライナにまつわる話題として、1970年制作のイタリア映画「ひまわり」を取り上げる。第二次大戦における独ソ戦の悲劇を描いた反戦映画で、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ主演。一面にひまわりが咲き誇るシーンは、当時のソ連・ウクライナ共和国(正式国名「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国」)のヘルソン州で撮影されたとされる。ヘルソン州での撮影には、ソ連の映画制作スタジオ・モスフィルムが協力している。モスフィルムは、これ以外にも「誓いの休暇」などの優れた反戦映画を世に送り出している。

今、半世紀前に映画で描かれたのと同じ事態が進行、ひまわり畑のすぐそばで独ソが激戦を繰り広げたヘルソン州は再び戦場となり、ロシアに制圧された。戦争に翻弄された主役たちを象徴するように、美しくももの悲しいメロディーが印象的な主題歌がアップされているので、曲だけでも聴いて現地に思いを馳せてほしい。

ひまわり テーマ曲


なお、ウクライナでの今回の戦争は現在「社会・時事」カテゴリーで扱っているが、もともとこのカテゴリーは他のカテゴリーに収まりきれない種々雑多な記事のために設けたものである。この戦争が長期化した場合、ウクライナ戦争を専門に扱うカテゴリーを新設する可能性があるので、お知らせしておきたい。4月末までに戦争が終結しなかった場合をひとつの判断時期としたいと考えており、当ブログとしては、その前に停戦となるよう努力を続けたいと考えている。

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世界情勢を一夜にして塗り替えたロシアのウクライナ侵略戦争 第3次世界大戦に至る前に停戦を!

2022-03-21 21:36:00 | 反戦・平和
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2022年4月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 ●2世紀も戻った歴史の針

 2月24日、ロシアが引き起こしたウクライナ侵略戦争は、世界情勢を文字通り一夜にして塗り替えた。21世紀も5分の1をすでに終えた今日になって、20世紀どころか19世紀に戻ったかのような野蛮な帝国主義がこんな露骨な形で復活するとは予想さえしていなかった。近年の「戦争」は、国家対テロ組織のような形で行われるものが多く、互いに国連に議席を持ち、国際社会に承認を受けている主権国家同士のこれほど本格的な戦争は、米国の対イラク侵略戦争以来、約20年ぶりのことである。

 時計の針を2世紀も逆流させるような今回の戦争の発生は、多くの識者によって昨年秋くらいから予想されていたことでもある。ロシアが2021年から10万を超える兵力をウクライナ国境へ展開させていたからである。日本でもこのニュースは報道されている。

 軍事に疎い一般の人々にとって、10万が軍事作戦上どのような意味を持つのかを判断するのは難しいかもしれない。しかし、自衛隊の兵員数が陸15万、海4.5万、空4.7万、計25万(出典:令和2年版防衛白書)という数字を示せばその巨大さがわかるだろう。自衛隊の約半数と同規模のロシア軍をウクライナ国境に投入するという信じがたい事態が起きていたのである。ロシアのような広大な国土面積を持つ国では、兵員を移動させるだけでも莫大な経費がかかる。単なる軍事的威嚇のレベルでここまでの犠牲は通常、払わない。悪い意味でロシアの本気度を見せつけるのに十分な兵員数である。

 もうひとつは、ウクライナの死活的重要性である。ウクライナはロシアにとって裏庭というべき存在であり、ロシア革命によるソ連建国後、第2次大戦中の一時期、ナチスドイツに奪われたことがあるものの、ソ連が奪還した。以降、ウクライナはソ連内の共和国として存在し、ソ連解体後も現在のゼレンスキーが大統領に就任するまではずっと親露派政権が続いてきた。ウクライナはナチスから奪還後、ロシアにとって敵対的外国勢力には一度も割譲したことがない絶対不可侵の土地である。

 ソ連・ロシアでは第2次大戦中の独ソ戦を「大祖国戦争」と呼ぶが、ウクライナ東部では、ソ連軍とナチスドイツ軍が激突、死闘が繰り広げられ、多くの犠牲者を出した。世界地図を見ればわかるが、ウクライナ、ベラルーシ両国が親露派の手中にある限り、NATO(北大西洋条約機構)加盟諸国は陸路で直接ロシア領内に入れない。一方でここを失うなら、ロシアにとってウクライナ領内に展開するNATO軍と国境で直接対峙しなければならない。冷戦終結当時「NATOは1インチたりとも東方拡大させない」との約束が反故にされ、NATOに加盟したバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)とロシアはすでに国境を接する事態を迎えている。バルト3国は、ロシア革命後のソ連政府が自国に編入した経緯もあり、最初から自宅の裏庭だったわけではないから我慢できるとしても、戦後一度も親西側勢力に譲ったことのない「裏庭」ウクライナまで失うならば、それはロシアにとって悪夢そのものであり、第2次大戦後最大の危機といえる。盗人にも三分の理と言われるが、戦争では一方だけに100%責任があるということはなく、ロシアにもこうした「言い分」がある。もちろん、そうした理由があっても武力による国境線変更を正当化できるものではない。

 今、国内では何の罪もないロシア料理店が破壊されるなど、反ロシア感情が暴走する兆しも見え始めている。こうした嫌がらせは中韓両国に対する「ヘイトスピーチ」と同じであり、戦争とは別問題として毅然と対応すべきであることは言うまでもない。


<地図>ウクライナがNATOに加盟した場合、NATO軍はウクライナ経由で直接、陸路からロシア領内に侵入できる。

 ●理解できるウクライナ市民の心情

 全人類を何度も全滅させることができるといわれる6千発の核兵器をロシア軍は持つ。そんな超大国と戦いたい国などあるわけがなく、現時点ではNATO加盟国でもないウクライナはNATO加盟国にとって「集団的自衛権」の発動対象に当たらない。どこからも助けが来ないまま、早ければ2月中に首都キエフがロシア軍の圧倒的軍事力の前に陥落し、ウクライナは独立国家からロシアの事実上の衛星国になるか、最悪の場合、旧ソ連時代のような形(ロシア連邦共和国内の1共和国に格下げ)となる――本稿筆者もまたロシアによる開戦の時点ではそのようなシナリオしか思い描けなかった。

 ところが大方の予想に反し、ロシアによる侵攻開始から3週間を過ぎた本稿執筆(3月20日)段階でもウクライナ全土はおろか首都キエフが陥落する気配さえ見えない。ロシアは国際法違反を承知で大規模な軍事侵攻を仕掛けた行きがかり上、引くに引けない。一方、ウクライナはNATOに接近し、加盟を望むという「命知らずの政治的冒険」の過ちを犯したとはいえ、それだけで国際法違反に当たる一方的軍事侵攻を受け、屈服を強いられなければならない道理はない。危惧されるのは、お互いのメンツがぶつかったまま、落としどころが見つからず、消耗戦に突入して犠牲者数だけが積み上がることである。

 ウクライナは、スターリン時代、モスクワの党中央による非人道的飢餓政策が採られるなど「大ロシア」に虐げられた歴史を持つ一方で、第2次大戦後は旧ソ連を構成する共和国同士、ロシアとは家族のように仲良く暮らしてきた。そうした歴史と、西側とロシアの狭間で両文明の衝突を防がなければならない自国の微妙な地理的事情を踏まえることなく、バランス感覚を失い、NATO接近と加盟を訴える危険な人物をトップに選んでしまったことで、ウクライナ市民が払う代償は高くつきつつある。しかし、「民主主義は、これまで人類が経験してきた他の制度を除けば最低の制度である」(ウィンストン・チャーチル英元首相)という言葉通り、民主主義もまた多くの欠陥を抱えている。多くの国々で民主主義が選択されているのは完璧な制度だからではなく、単なる比較優位の結果に過ぎない。

 選挙で誤った人物を選んでしまうことは「自由選挙」である以上はいつでも起きうる。侵略決行を決断したウラジーミル・プーチン大統領が口を極めて非難するヒトラーもまた「正当な自由選挙」によって生まれた。米国ですらドナルド・トランプという奇特な人物をトップに選ぶことで国際的評価を大きく下げるという経験を最近したばかりである。プーチン大統領にとっての最善の道は、ロシアにとって家族だったウクライナとその市民を信じ、ゼレンスキー大統領が他の親露的人物に取って代わられるまで数年間我慢するという理性的な方法を選ぶことだった。だが、その数年間すらプーチン大統領は待てず、時計の針を2世紀も逆戻りさせる野蛮な帝国主義的侵略に打って出た。この暴挙を許すことはやはりできない。

 筆者にはウクライナ市民の心情は大いに理解できる。同列に論じられないかもしれないが、本稿筆者もまた2011年3月の福島原発事故以降、ずっと東京電力と闘い続けてきたからである。東電という企業には、一般的な企業が持ち合わせているような良識、常識はまったく通じない。ライオンがウサギを殺すにも全力を尽くすといわれるように、原発反対派をつぶすためにどんな卑劣な手段でも平気で使う。見え透いたデマやプロパガンダを平然と流し、1万の証拠を突きつけても事実を認めることも恥じることもない。いわば東電とその背後にいる原子力ムラは「日本経済界のプーチン」である。

 自分たちは何も悪いことをしていないにもかかわらず、一方的に生業を奪われ、生活を壊され、健康を害され、財産を毀損させられ、踏みにじられる。その原因を作った相手がどれだけ巨大であっても、自分の名誉・生活・健康・財産を守るために闘いをやめる選択肢はない。正直なところ、勝てるとは思えない。しかし、自分たちを見くびった代償がどれだけ高くつくかくらいは、せめて相手にわからせたい。武器を取るか取らないかが違うだけで、巨象と闘うアリの心境としては通じるものがある。筆者の立場上、戦争や日本の軍事支援に同意することは決してできないが、ウクライナの市民がロシアに屈せず闘い続ける心情には、寄り添いたいと思っている。

 ●今後の行方は?

 ロシアに戦争を止めさせる唯一の手段は、ウクライナが望むNATO加盟をあきらめさせることである。第2次大戦後、人の一生に匹敵する時間を家族のように暮らしてきたロシアの元に戻るか、ロシアの専制主義的政治体制に同意できないのであれば、せめて文明の衝突を防ぐ「緩衝地帯」として、政治的には民主主義を、軍事的には中立を維持する。前述した歴史、地理的条件を考えると、ウクライナにはこの2つの道しかない。

 大半の日本人にとって初めて聞く話かもしれないが、ウクライナのゼレンスキー大統領は元コメディアンである。政治経験、行政経験はなく、ポピュリズムと、旧ソ連時代、スターリンに虐げられてきたウクライナ国民の歴史的反ロシア感情をうまくくすぐり、大統領の地位を射止めた。「吉本興業のお笑い芸人が大阪維新に担がれて首相を射止めるようなもの」だと例えれば日本人にもぐっと理解が容易になるであろう。面白半分に維新所属の犯罪予備軍を選挙で連戦連勝させるようなことをしていては、日本もいずれ戦争を招き寄せることになる。日本人にとっても教訓とすべき事例だと筆者は考える。

 軍事力による現状変更は認められないという近代以降の世界が確立してきたルールに忠実であろうとするならば、今回の軍事侵攻でロシア軍が強奪し、支配下に置いた場所はウクライナに返すべきである。プーチン大統領は「民主主義的“自由選挙”の下では、自分たちの意に沿わない人物がリーダーに選出されることがある」ということを理解しなければならない。ロシアでもはなはだ不公正ではあるが「選挙」が行われており、自分自身もそれにより選ばれることで大統領の地位に就いているはずである。

 有権者は、公職に選ばれた人が自分の投票した人物以外であったとしても、ルールとして受け入れると同時に、全体の奉仕者として行動しているか任期中常に監視する。選ばれた公職者は「自分に投票しなかった有権者も含む国民全体」を代表しているのだという自覚の下に政治、行政を担う。この原則が貫かれる限り、「これまで人類が経験してきた他の制度を除く最低の制度」としての民主主義の地位くらいは少なくとも維持できるだろう。

 平穏期と動乱期が交互に現れ、その両極端を行ったり来たりするのがロシアの歴史であるという点で、ロシアに詳しい識者の認識は一致している。ロシアはソ連時代という安定期を終え、ソ連崩壊から始まった本格的動乱期に入ったと認識すべきである。これから2020年代末くらいまでは何が起きてもおかしくないと見ておかなければならない。

 ウクライナ侵略への懲罰として国際社会が科している経済制裁が実を結ぶかどうかは正直なところわからない。ロシアは何度もこのような極限の経済危機に直面しては、克服してきた歴史を持つからである。レーニン率いるロシア社会民主労働党(ボルシェヴィキ)が人類史上初の社会主義革命を実現したときも、世界はこの革命が広がることを恐れてソ連に経済封鎖を科した。ロシアの通貨ルーブルは紙屑同然になったが、スターリン政権は重工業部門での生産力強化と並行して無価値となったルーブルを事実上廃棄、チェルヴォーネツという新通貨を臨時に発行した。一部を金との兌換制(金本位制の部分的復活)とし、市場流通する財・サービスの総価値を超えるチェルヴォーネツの発行を禁止することで通貨価値を維持した。この大胆な新政策に成功し経済を急回復させたことがその後の「大祖国戦争」における勝利にもつながった。

 ウクライナ戦争に伴う制裁で今またルーブルが紙屑になっても、過去の歴史に学んだロシアが経済制裁に耐え抜くという展開もあり得る。広大な国土面積を持ち、エネルギー・食料から生活必需品に至るまで何でも自分たちで作ることができるという点もロシアの強みである。世界がロシアを必要とする時期は遠からず再びやってくる。この大国を追い詰めすぎることが得策とは思えない。

 一方、世界をあっと言わせる別の展開もあり得る。ロシアの再社会主義化である。荒唐無稽だと思われるかもしれない。しかし世界史の教科書を紐解き、もう一度、社会主義がどんなときに生まれてきたか調べてみるといい。戦争と動乱、格差拡大と貧困が同時進行するときに社会主義は生まれてきた。

 ロシアの中高年世代にはまだソ連時代の記憶が残っている。加えて、ロシア議会(一院制)には小選挙区制が導入されており、プーチン与党「統一ロシア」7割、ロシア共産党3割という議席構成になっている。ロシア共産党は、ゴルバチョフ大統領によるソ連解体と共産党解散に反対していた旧党員らがその後再建したが、ソ連のような一党独裁制は再び採用しないとしている。プーチン政権の政策に反対はしておらず準与党的立場にある。真の意味での野党は存在せず、そのことが「プーチン1強」の政治的土壌となってきた。

 このまま制裁による経済危機が長引けば、ソ連解体で巨大な財を成した「オリガルヒ」(新興財閥)がプーチンを見限る可能性がある。一方、プーチンは自分に敵対する者は許さないとして、オリガルヒの財産を接収し、国有化すると言い出すかもしれない。それは決して杞憂ではない。実際、制裁によってロシアから撤退したスターバックスやマクドナルドなどの西側企業の「接収」をほのめかす発言が「統一ロシア」幹部からすでに出ている。プーチンが統一ロシアを解党してロシア共産党と合流しそのまま全産業を再国有化(ロシアの再社会主義化)――冗談ではなく本当に起こりかねない。そのような可能性さえ視野に入れなければならない動乱期に、ロシアは突入しているのである。

 ●反戦の闘い続く

 野蛮な帝国主義的戦争の勃発によって、この2年、人類を悩ませてきた新型コロナ問題はすっかり後景に退いた感がある。新型コロナ感染拡大以降、人々の感情は自分自身の内部へと向かい続けてきた。長く続いた行動自粛とあいまって鬱屈した市民感情が、何らかのはけ口を求めるタイミングでウクライナ戦争は起きた。抑鬱的状態にあった市民感情が爆発的に解放された結果、はなはだ不適切な表現だが、日本国内にも世界にも妙な高揚感すら漂っているように感じる。まだまだ新型コロナの感染拡大が続く地域があるにもかかわらず、世界は科学的検証抜きに「ポストコロナ」時代という新しいフェーズに突入させられた。プーチンという野蛮で常識外れの指導者が「世界劇場」のカーテンを暴力的に引き裂いたのである。

 抑鬱的感情が解放された結果、市民はコロナを恐れず街頭で再び意思表示を始めた。2月24日以前はウクライナがどこにあるのかさえわからなかった市民までが、黄色と青の旗を振り、反ロシア感情をみなぎらせている。ウクライナ国旗の色は、青空とその下で黄色く実る小麦畑を象徴する。「木の枝をウクライナの土に突き刺せば、そのまま育つ」といわれるほど肥沃な土地を持つウクライナは世界の穀物倉庫として重要な役割を果たしてきた。そこでの戦争を止めることは、世界を食糧危機突入という事態から救う意味でも、価値ある行動であることは確かだろう。

 今月号の本誌はウクライナ情勢一色になると見込まれる。首都圏や関西圏での戦争反対行動に関しては他の執筆者に譲って、本稿では筆者も参加し、札幌で開催されたウクライナ戦争反対集会についてのみ報告する。

 3月19日、「戦争させない北海道委員会」主催のウクライナ反戦集会には、約200人が集まった。主催者を代表して、佐藤環樹代表(自治労北海道本部副委員長)があいさつ。「大阪では、都構想をめぐる住民投票が二度行われ、二度とも否決。2015年は橋下徹・大阪府知事が辞任。2020年は松井一郎・大阪維新の会代表が政界引退を表明した。改憲国民投票でもし負ければ、トップは辞任しなければならないことを与党は理解しており、だからこそ今年夏の参院選で改憲派に3分の2を与えれば、彼らは死に物狂いで改憲に全力を挙げるだろう」と参院選に向けた結束と「3分の2阻止」を訴えた。

 同委員会呼びかけ人の清末愛砂・室蘭工業大学大学院教授は「ウクライナ戦争を台湾有事に結びつけ改憲をあおる動きに断固抗議する」とロシアと国内改憲勢力を批判する一方、旧ソ連による侵略が行われたアフガニスタンについて、今日のウクライナのような世論の盛り上がりはなかったとして「私たちの中にあるレイシズムと不平等性を問いたい」とした。同じ戦争被害者なのに、世界のどこにいるどんな人々かによって関心に差を付ける日本の市民の意識に一石を投じる重要な問題提起として受け止める必要がある。

 岩本一郎・北星学園大学教授は核保有国による帝国主義的戦争が核抑止戦略を破たんさせ、冷戦時代さながらに人類を滅亡の危機に追いやっている、とした上で「プーチンに対し、勇気を持って民主的手段で反戦の声を上げているロシア市民を支えなければならない。21世紀を20世紀のような野蛮な暴力と戦争の時代に戻してはならない」と訴えた。

 北海道高等学校教職員組合に所属する20代女性労働者からも発言があった。「私は学者でも政治家でも専門家でもなく、地域の有力者でもないただの1人である。戦争を前にして市民にできることは少ない。しかし2015年の戦争法強行採決の際、テレビの前で怒っているだけでは何も変わらないと、初めて自分の意思でデモに参加した。黙っていてはいけないという自分の意思に背中を押された。会場に行ってみると、同じ思いの仲間がこんなにいたんだと思い勇気が出て、毎週のように仲間がいる会場に行くようになった」。

 札幌での護憲集会、反戦集会では必ず一般市民の発言枠が設けられる。労働現場で、デモや集会の現場で、闘いながら成長する自分の姿を生き生きとした言葉で表現する。その表現が空気振動のように、場を共有する参加者に伝わる。オンライン集会では決して味わうことができない久しぶりの臨場感。やはり街頭集会はいいと思う。「今日は久しぶりの大型の街頭集会ですよ」という市民の弾む声を開始前にも聞いた。ステイホームが始まって2年、市民はこの瞬間を待っていたのだ。

 「安保法は成立させられてしまったが、私たちの闘いによって強行採決せざるを得なかったという事実は残った。世界には逮捕される危険があっても街頭に出る人たちがいる。ロシアで声を上げる人たちへの連帯を表明し、世界中の人々が見ているよ、と伝えたい」――若き労働組合員からの訴えは続く。この日の集会で、発言者が異口同音に訴えたのはプーチン政権に怯まず平和的、民主主義的手段で闘う市民への連帯だった。

 この他、同じく戦争させない北海道委員会呼びかけ人の上田文雄・元札幌市長から「ロシア軍によるウクライナの原発占拠が、福島を経験した日本の市民の前で、よりによって3月に行われるとは許しがたい暴挙だ」との発言があった。

 ●小さな「予兆」

 集会翌日の20日。ロシア国営テレビで生中継されていたプーチン大統領の演説の映像が突然途切れた、というニュースが短く伝えられた。日本のメディアでは片隅扱いの小さなニュースを、しかし私は見逃さなかった。中継が途絶えた画面の向こう側で何が起きていたのかを、遠く離れた異国の地では知る術もない。だが、1989年、ルーマニアでチャウシェスク独裁政権が一気に倒れたとき、筋書きのないドラマは首都ブカレストで開催された政府支持の官製集会で、演説するチャウシェスク大統領を映す国営テレビの映像が突然途絶えるという小さな異変によって幕を開けた。ルーマニア語では、飢え、寒さ、恐怖を表す単語はすべてFで始まることから、チャウシェスク時代のルーマニアは「3つの“F”の国」と言われていた。その国で起きた小さな異変が、後の大きな歴史的政変につながるとまで予想できた人は当時、ほとんどいなかった。時として歴史は人々の思惑を超えて大きく動くことがある。この小さな異変は、もしかするとプーチン失脚という大きな歴史的出来事の序幕になるかもしれない。

(2022年3月20日)

2022.3.19 ウクライナ反戦集会@札幌

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ウクライナ問題をどう見るか(レイバーネットTVより)

2022-03-17 22:24:35 | 反戦・平和
ロシアのウクライナ侵略開始から3週間が過ぎた。大方の予想を覆し、ウクライナは善戦しており、ロシアは全土制圧はおろか、首都キエフ制圧も困難な情勢だ。

長期化の様相も見せ始めたウクライナ情勢をどう見たらよいのか。当ブログ管理人が運営委員を務めるレイバーネット日本のインターネットテレビ放送「レイバーネットTV」の3月特集番組がウクライナ情勢を取り上げている。

つまらないテレビのバラエティー番組を見るよりもこの問題の本質に迫れると思うので、ぜひご覧いただきたい。

レイバーネットTV第167号 : ウクライナ危機をどう見るか? 一緒に考えよう

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ロシア軍、ついにウクライナ侵攻 若干の雑感と解説

2022-02-24 23:30:10 | 反戦・平和
24日、ついにロシア軍がウクライナに侵攻した。来るべき時が来たと当ブログは感じている。自称「専門家」の一部には、ロシア軍は侵攻しないとの甘い見通しを振りまく人もいたが、当ブログは侵攻は必ず起こるし、その時期も北京五輪が終わればすぐにでもあり得ると考えていた。ここでは、その根拠を示すとともに、今後起こりうる展開も含めて述べておきたい。

なお、あらかじめ述べておくが、当ブログ管理人は昨年10月4日付記事で告白したとおり、マルクス主義者であるとともに、いわゆる「共産趣味者」でもある。旧ソ連が失敗したのはソ連の官僚指令型社会主義が「人間の顔」をしていなかったからであり、社会主義のすべてが否定されたわけではない。人間の顔に装いを改めた新しい社会主義は必ず復興するし、またそうあらねばならないと考えている。従って以下の記事は「ロシア視点」で記述しながらも、帝国主義的なプーチン政権のロシアの立場を擁護するものではないことはお断りしておきたい。野蛮な帝国主義は、マルクス主義者としての当ブログ管理人が目指す人間の顔をした社会主義とは対極のものである。

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当ブログ管理人が「侵攻は必ず起こるし、その時期も北京五輪が終わればすぐにでもあり得る」と判断した根拠は主に以下の2点である。

<根拠1>ロシアが2022年の新年早々から10万を超える兵力をウクライナ国境へ集結させていたこと

日本でもこのニュースは報道されている。軍事オタクならともかく、軍事に疎い一般の人々にとって、10万が軍事作戦上どのような意味を持つのかを判断するのは難しいかもしれない。しかし、自衛隊の兵員数が陸15万、海4.5万、空4.7万、計25万(出典:「令和2年版防衛白書」(防衛省・自衛隊ホームページ))という数字を示せばその巨大さがわかるだろう。自衛隊の兵員の約半数をウクライナ戦線に投入するのと同じことが起きているのである。ロシアのような広大な国土面積を持つ国では、兵員を移動させるだけでも莫大な経費がかかる。単なる軍事的威嚇や「こけおどし」のレベルでここまではしないであろう。新年早々、ロシアの本気度を見せつけるには十分な兵員数である。

<根拠2>ウクライナの死活的重要性

第2の根拠は、ロシアにとってのウクライナの死活的重要性である。ウクライナはロシアにとって裏庭というべき存在であり、ロシア革命によるソ連建国後、第2次大戦中の一時期、ナチス・ドイツに奪われたことがあるものの、ソ連が奪還した。以降、ウクライナはソ連内の共和国として存在し、ソ連解体後も現在のゼレンスキーが大統領に就任するまではずっと親露派政権が続いてきた。ウクライナはナチスから奪還後、ロシアにとって敵対的外国勢力には一度も割譲したことがない絶対不可侵の土地である。

ソ連・ロシアでは第2次大戦中の独ソ戦を「大祖国戦争」と呼ぶが、ウクライナ東部ハリコフは、ソ連軍とナチスドイツ軍が激突、死闘が繰り広げられ、多くの犠牲者を出した。世界地図を見ればわかるが、ウクライナ・ベラルーシ両国が親露派の手中にある限り、NATO加盟諸国は陸路で直接ロシア領内に入れない。一方でここを失うなら、ロシアにとってウクライナ領内に展開するNATO軍と国境で直接対峙しなければならない事態に陥る。これはロシアにとって悪夢そのものであり、第2次大戦後、最大の危機と言っても過言ではない。独裁者と呼ばれようが屁とも思わず君臨してきたプーチンにとって、この事態を指をくわえて傍観するなら、それは彼自身にとって「第2次大戦後のロシア史上初めて、敵対的外国勢力にウクライナを売り渡した男」の汚名を着せられることを意味する。それはプーチンにとって耐えがたい屈辱であり、政治的死と同じである。ロシアにとっての死活的利益と、彼自身にとっての名誉を守るためなら、どんなことでもするであろう。

以上の2つの根拠から、当ブログは遅かれ早かれ侵攻はあると考えてきた。ロシアに侵攻を思いとどまらせる唯一の手段は、ウクライナが望むNATO加盟を阻止することである。だがそのための外交努力が失敗した以上、侵攻は時間の問題だった。ただそれでも北京五輪閉幕までは待つだろうと当ブログは考えていた。北京五輪中に軍事行動を起こせば、開催国であり、ネット用語でいうところの「レッドチーム」仲間である準同盟国・中国の支持を失うという大きな政治的損失を伴うからである(レッドチームとは、東西冷戦時代に用いられていた「共産圏」という用語に意味としては近いと思う)。ロシアにとってウクライナはいつでも踏みつぶせる程度の小国であり、2週間やそこら待ったところで大勢に影響はないのである。

大半の日本人にとって初めて聞く話かもしれないが、ウクライナのゼレンスキ―大統領は元コメディアンである。政治経験、行政経験はなく、ポピュリズムと、旧ソ連時代、スターリンに虐げられてきたウクライナ国民の歴史的反ロシア感情をうまくくすぐり、大統領の地位をかすめ取った。

ウクライナ国民は、このようなばかげた人物を国のトップに選んだ政治的代償を、これから最も大きな形で払うことになる。コメディアンを大統領に選んだウクライナ国民の行動について、「吉本興業のお笑い芸人が大阪維新に担がれて首相を射止めるようなもの」だと例えれば日本人にもぐっと理解が容易になるであろう。面白半分に維新所属の犯罪予備軍を選挙で連戦連勝させるようなことをしていては、日本もいずれ戦争を招き寄せることになる。日本人にとっても教訓とすべきであろう。

同時に、忘れてはならないのは、ウクライナが四半世紀前、チェルノブイリ原発事故により国土の大部分を放射能で汚染された国家だということである。今回、ウクライナ軍は、チェルノブイリ事故で住民全員が強制避難させられ、無人となった原発労働者の町、プリピャチでロシア侵攻に備えた軍事訓練を行った。「高層マンションなどの建物が当時のまま残されていて、市街戦を想定した訓練に最適だ」というのがプリピャチを選んだ理由だというが、こんなばかげたことをやらかすこと自体が、コメディアン出身の大統領らしく、政治がテレビのお笑い番組レベルに退化してしまっている。放射能汚染に長期間晒され続けた人間は、この程度の思考力、判断力しか持ち得なくなるという事実を余すところなく示している。

そして、この光景はおそらく、日本でも福島原発事故で汚染された東北・関東を中心に、今後10~20年後どんなことが起こるかを示す先行事例でもある。このまま東京に首都を置いていては、日本は立ちゆかなくなるであろう。今からでも遷都、首都移転を真剣に考えるべきだと思う。

ロシアは今後、どこまで軍事作戦を続けるだろうか。親露派支配地域である「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」はおそらくロシアに併合され、チェチェン(旧ソ連時代の「チェチェン・イングーシ自治共和国」)のように自治共和国に降格されるかもしれない。ウクライナ全土を併合するには莫大なエネルギーを必要とするため、ロシアといえどもそこまでは難しいと思う。ロシアの目標はウクライナのNATO加盟を阻止することにあり、その目的が達成されれば十分であろう。

さしあたり、ゼレンスキ―大統領をモスクワに連れ去り、「NATO加盟はあきらめろ。それができないなら辞めろ」と脅す可能性はある。何しろ、旧ソ連はいわゆる「プラハの春」当時、市民とともに官僚指令型社会主義を「人間の顔をした社会主義」に改革しようとしていたチェコスロバキア共産党・ドプチェク第1書記をチェコに侵攻して連れ去り、モスクワで「改革路線を放棄」するまで脅した前科があるからだ。

ゼレンスキーを連れ去り、「NATO加盟をあきらめるか、辞めるか」迫り、受け入れるまでモスクワから帰さない。その上で、ゼレンスキーを辞任させ、ロシア国内でしているのと同じように、反ロシア派を殺すか逮捕し立候補できないようにして、親露派候補者だけの大統領「選挙」を実施、ウクライナを再び傀儡政権の下に置く--このあたりがロシアの考える「落としどころ」ではないだろうか。

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アフガニスタン情勢に思う

2021-09-10 18:36:30 | 反戦・平和
タリバンによるアフガニスタン全土制圧という事態が仮になかったとしても、今年は9.11テロ20年の「節目」として、元々、アフガニスタンに光が当たる予定の年でした。大手メディアの中には、9.11から20年の企画としてすでに番組制作を終えていた局、記事執筆を終えていた新聞社もあるかもしれません。

ソ連軍も米軍も勝てなかったアフガニスタンに、今後軍事介入をしようとする奇特な国は、(可能性ゼロとは言い切れませんが)しばらく現れないと思います。タリバンを掃討できそうな国内勢力も見当たらず、しばらくはタリバンの天下が続くと思います。

今回もし光が当たらなかったら、次に当たるのはかなり先のことになるでしょう。私たちの存命中に、もう一度光が当たるチャンスがあるかどうかというところではないでしょうか。だからこそここで私たちが頑張らなければ、との思いがありました。

米軍撤退の報道を受けて、アフガニスタンが再びタリバンの手に落ちるのでは……との予想はしていたものの、アフガニスタン政府軍は悪くても年内いっぱいくらいは保つと思っていたので、想定外だったのは「制圧の速さ」です。8月いっぱいも保たないとはよもや思ってもいませんでした。

しかし、カブール陥落から3週間経った今、改めて振り返ってみると、タリバンは「20年目の9.11」を目標に、意識的かつ周到に全土制圧準備を進めてきたのではないかと思えてなりません。

タリバン報道官は「シャリア法体制で民主主義の国はない」とアフガニスタンでの民主主義に否定的な発言をしていますが、イスラム教を国教としながら部分的にでも選挙を導入している国など、探せばいくらでも見つかるはずです。

アメリカの介入で前回、タリバン政権が崩壊して20年、不完全ながらも一定の自由や権利をアフガニスタン市民は享受してきました。籠の中から大空へ、一度羽ばたいた鳥がみずから籠に戻ってくることはありません。自由や権利の意味を知った市民が20年前と同じような状況に完全に戻ってしまうことはあり得ないと思います。そこに一縷の望みをつなぐことが、今後のアフガニスタン支援の鍵になるような気がします。

アフガニスタン情勢が、まずい方向に向かっているとはっきり自覚したのは、なんと言っても中村哲さんの死でした。地方の軍閥は、井戸を掘っている丸腰の民間外国人1人も守れないのか、と驚くとともに、アフガニスタンの今後の苦難を思いました。

多くのアフガニスタン人が、井戸を掘りに来る中村哲さんを心待ちにしていたと聞きます。現地の人に中村哲さんが愛されていたことはうれしく思いますが、アフガニスタン中の人々が心待ちにしていたら、1人しかいない中村哲さんが来るのはいつになるか分かりません。

哲さんを待つのではなく、ひとりひとりのアフガニスタン人が、自分で井戸を掘ろうと思うようになったとき、アフガニスタンは本当の意味で民主主義のスタートラインに立つのだと思います。それまでにどれだけの時間がかかるかは分かりません。しかしその日は遅かれ早かれ必ず来ると信じます。

私たち日本の市民にできることは、そのためのサポートだ……と書こうとして、ふと、一瞬手が止まりました。アフガニスタンの女性が置かれた過酷な状況は、ぜひ私たちが世界に向け発信しなければならない大切なことのひとつです。しかし、その前に日本の女性の人権状況は大丈夫なのでしょうか。

東京五輪組織委員長が「女がいると会議が長い」と放言して辞任したのはつい最近のことです。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」では、日本はここ数年来順位は右肩下がりで、「政治」部門に限って言えば、156カ国中147位。つまり下から10番目でとうとうワースト10入りしてしまいました。

日本より下の9カ国は、カタール、ナイジェリア、オマーン、イラン、ブルネイ、クウェート、イエメン、パプアニューギニア、バヌアツ。ほぼすべてがイスラム圏か、男性の部族長が「酋長」などと呼ばれ、ふんぞり返っている部族国家ばかりです。

ここにアフガニスタンの名前がないことにも驚きます。「政治」部門のジェンダーギャップ指数で言えば、アフガニスタンより日本のほうが下という衝撃的状況に置かれています。国際社会はアフガニスタンより日本の女性の地位を心配しているかもしれません。

私は、日本とアフガニスタンの女性の人権状況を、同じ問題として捉えたいと思っています。まず私たち自身が、足下で自分たちの人権のことも頑張らなければならないと思います。米軍を70年近く駐留させている日本と、米軍を追い出したアフガニスタン。頑張らなければ、アフガニスタン市民の方が日本より先に「外国軍のいない本当の民主主義」を実現させてしまう、という冗談のようなことが現実になるかもしれない。

カブール陥落のニュースを聞きながら、ふと、そんなことを考えてしまいました。

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戦没者の遺骨を埋め立てに使って新基地を作る「暴挙」が沖縄で進行中

2021-06-27 17:53:06 | 反戦・平和
沖縄県・名護市辺野古沖合で、普天間基地の「移設」として新基地建設が進められている。その実態は「移設」などではなく新基地建設そのものだが、あろう事か、その新基地建設のための沖合の埋め立てに、沖縄戦で亡くなった人の遺骨が混じった土砂を使うという、今までにない「暴挙」が行われている。そのことを取り上げたTBS「報道特集」(6/19放送)の動画がYoutubeのTBS公式チャンネルにアップされたので、ご紹介する。

番組に登場する具志堅隆松さんは、沖縄で戦没者の遺骨収集活動を続けてきた。当ブログ管理人は、その具志堅さんの話を先日、Zoomで聞く機会があったが、「世の中に、絶対に間違っていると言い切れる話というのは滅多にないが、これは人として絶対に間違っていると言い切っていい」という具志堅さんのお話が強く印象に残った。今、具志堅さんは、終戦記念日に靖国神社前に立ち、戦没者遺族の人々に向かって直接、この不当性を訴える活動をすることも検討中という。これは左右のイデオロギーの問題ではなく、人道上の問題として、いわゆる保守的な立場の人たちにも共感を得られる活動になると思う。

まもなく沖縄慰霊の日 戦没者の遺骨守る闘い【報道特集】

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今年を象徴する漢字は「核」 朝鮮半島危機と核兵器禁止条約が同時進行した2017年 来年は分水嶺に?

2017-12-25 22:04:54 | 反戦・平和
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2018年1月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 歳月の流れは速いものだ。新年早々、トランプ大統領が就任したのはついこの間のことだと思っていたのに、この号がお手元に届く頃には2018年の足音が聞こえていると思う。

 毎年この時期の恒例行事に「今年の漢字」がある。日本漢字能力検定協会が市民から募集した投票において、その年を象徴する漢字として1位となったものを京都・清水寺の森清範・貫主が揮毫するというものだ。

 その漢字に2017年は「北」が選ばれた。確かに、「北朝鮮」とその最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長の動向に世界が翻弄された1年ではあったように思う。しかし、そもそも朝鮮民主主義人民共和国の国名に「北」の文字は使われていないし、朝鮮政府もみずからを北朝鮮とは自称していない。南北「赤化統一」の野望も捨てていないし「北朝鮮」の呼称が通用するのも日本だけだ。いかにも内向きの論理で選ばれた「今年の漢字」だと思うが、そもそも日本の民間団体が国内向けのイベント兼パフォーマンスとして実施しているに過ぎないものにいちいち目くじらを立てるのも大人げないと言うべきであろう。

 朝鮮がどのような国であり、その指導者・金正恩が何をめざしているかについては、本誌先々月号(11月号)で詳しく分析しており、今号で改めて繰り返すことはしない。興味を覚えた向きは11月号を参照していただきたいが、朝鮮は、故・金日成主席の時代から一貫して核・ミサイル開発を志向しており、建国以来、天才少年少女を幼少時から選抜して特別待遇を与え、特別教育を施しては核・ミサイル開発に従事させてきた。その長年の「努力」の結実が現在のミサイル「乱射」状況につながっており、金日成主席時代から長年のウォッチャーとしてこの国を見つめ続けてきた筆者にとって驚くには値しない。要するにこの国は、指導者が「偉大な建国の父」から2代目、3代目と替わっても基本路線に変化はまったくないのだ。

 それにもかかわらず、なぜ今年になって急激に朝鮮半島危機が深刻化したのか。その理由はやはりトランプ大統領の就任をおいて考えられない。朝鮮は変わっていないのに、周辺環境が変わったために危機が引き起こされたのである。

 世界の科学者グループが発表している「世界の終末時計」。世界を1日24時間になぞらえ、「終末」の午前0時まであと何分あるかを示すこの時計は、東西冷戦時代にはしばしば話題に上ったものの、最近は忘れられかけていた。その終末時計がここに来てまた注目されるようになった。1953年、米ソ両国が相次いで水爆実験に成功した後、この時計はあと2分まで進められた。1991年のソ連崩壊による冷戦終了で時計は17分前まで巻き戻され、危機は去ったかに見えた。その後、途上国に核が拡散するにつれて再び終末時計は進められ、福島第1原発事故でも1分進んだ。トランプ氏の大統領就任前、3分だったこの時計は就任後30秒進み、終末まで2分30秒となった。1962年、世界を滅亡の淵に立たせたキューバ危機の時でさえ終末まであと7分あったこの時計が、今やその3分の1の時間しか残されていないというのだ。

 ●東京は生き残れるか

 トランプ大統領就任後、東京への核攻撃が、それまでの荒唐無稽なSF映画の中の話ではなく、現実にあり得る可能性のひとつとして取りざたされるようになった。キューバ危機当時と比べ、トランプ・金正恩の両指導者の行動がともに予測不能である点が大きく違っている。もちろん、キューバ危機当時の指導者だったケネディ米大統領、フルシチョフ・ソ連共産党第1書記の2人も理性的とは言いがたかった。ケネディは「もしどこかの社会主義国から西側諸国に核ミサイルが発射された場合、それをソ連から米国への核攻撃とみなす」と再三にわたって警告したし、フルシチョフも「もし愚か者が我が国や社会主義国を攻撃すれば、我々はその国を地上から抹殺できる。戦争は侵略者ばかりでなく資本主義をも滅ぼすだろう」と強気の姿勢を変えなかった。当時、米ソ両国の間で繰り広げられた「口撃合戦」を振り返ってみると、今、トランプ・金正恩両トップの間で行われている罵り合いと少しも変わらない。

 だが、全米の商店から買い占めのためあらゆる物資が消えたキューバ危機では結局、最後はかろうじて理性が勝った。「何の罪もない子どもたちが核のため、米国で、ソ連で、世界で次々と死んでいく幻影はケネディをひどく苦しめた」(側近ロバート・ケネディの回想)し、世界を何十回も滅亡させられるほどの核を持つ米ソ両国の首脳間に、電話のホットラインさえ整備されていない事実を知らされ、愕然としたフルシチョフは「もしあなたがお望みなら、キューバに配備した核をいつでも撤去する用意がある」との長文の電報をケネディに送った。フルシチョフが言葉だけでなく実際にキューバに配備済みの核兵器を撤去したため、ついに危機は去ったのである。

 トランプ・金正恩の2人にこのような理性ある対応が可能だろうか。「トランプはビジネスマンであり、損得に見合わないことはやらない」「さすがの金正恩も、自国が地図から消えることになる米国との全面戦争には踏み切れないだろう」との楽観論が日本社会を支配している。だがトランプは、既存のエスタブリッシュメント(支配層)に不満を抱き、失うもののないラストベルト地帯の労働者によって大統領に押し上げられた。故・金正日総書記が長男の金正男でも次男の金正哲でもなく三男・正恩を後継者に選んだのも「3人のうち一番気が強く、米国相手でも怯まない」からであり、また「朝鮮のない地球はあり得ない。我が国がもし滅びるならば、地球を道連れにすればよい」との金正日総書記の教えを最もよく理解しているからだとされる。創造より破壊を得意とする米国大統領と、兄弟のうちで一番気が強いが故に指導者の地位を射止めた金正恩のせめぎ合いは、今度こそ偶発的な米朝間の戦争に発展するかもしれないのだ。

 改めて確認しておかなければならないのは、国際法上、米韓と中朝は今なお戦争状態にあるということだ。すでに朝鮮戦争の休戦(1953年)から64年経過したが、あくまで休戦に過ぎない。米中両国はいずれも国連安保理の常任理事国であり、いざそのときが来たとしても国連や安保理が機能するとはとても思えない。先ごろ発生した朝鮮人民軍兵士の亡命事件のような偶発的事態をきっかけに南北間で戦端が開かれればどうなるだろうか。
北緯38度の軍事休戦ラインからソウル中心部まではわずか30キロメートル。日本で言えば東京~横浜間の距離とそれほど変わらない。朝鮮領内から戦車でも1時間で到達してしまう距離だ。反撃の間もなくソウルは瞬く間に占領され、韓国政府も機能しなくなってしまうだろう。こうした危険があるにもかかわらず、韓国の人口の4割がソウル首都圏に集中する状況を放置してきたのも、歴代韓国政府が本当は朝鮮戦争の再開などあるわけがないと高を括っていたからだろう。

 朝鮮対米韓で戦端が開かれた場合、初めからいきなり核ミサイルが使われることはない。朝鮮人民軍はソウルを占領し、最初の数時間は優位に戦いを進めるとみられるからだ。問題は米韓軍が体制を立て直し、反撃に転じたときだ。「朝鮮がもし滅びるときは、地球を道連れにすればいい」との父の教えを、もし金正恩が忠実に実行するならば――?

 朝鮮が開発中のミサイルは、まだ核弾頭を積んで大気圏内に再突入し、米本土を攻撃できるまでにはなっていないが、朝鮮がその能力を手に入れるのはもはや時間の問題だろう。だが、日韓を攻撃できるノドンミサイルを朝鮮はすでに手に入れている。SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)が実用化レベルにあるとの一部報道もある。その場合、大気圏内再突入の技術さえ必要ない。潜水艦で朝鮮のどこかの港を出港、潜航した潜水艦から日韓のどこかの都市に向けて核ミサイルが発射されれば、Jアラートなどの警報発動さえかなわず、多くの市民がいきなり閃光を見てそのまま終わりということさえあり得るのだ。

 いざというとき東京は果たして生き残れるのだろうか? 2020年東京五輪はこのまま無事に開催できるのだろうか? 政府や御用学者たちは「Jアラートが鳴って5分以内に地下街に逃げ込めば助かる」などと根拠のない楽観論を振りまいているが、もちろん信じてはならない。70年前の広島、長崎より核技術は格段に進歩している。朝鮮が開発しているとみられる10キロトン程度の核でも、爆心地では200メートルの巨大な火球ができるとの試算もある。あらゆるものを飲み込む火球の中心温度は最悪の場合、太陽の表面より少し低い摂氏4000~5000度にも達すると見込まれる。地下街でも数百度には達するだろう。これで生き残れるなどと考える方がどうかしている。仮にそれほどの強い威力の核でなくても同じことだ。「御用学者」たちが福島第1原発の事故当時なんと言っていたか思い出してみるといい。「プルトニウムは飲んでも安全」「100ミリシーベルト以下の被曝量で健康被害など出るはずがない」。だが6年半後の今日、194人もの子どもたちがすでに甲状腺がんを発症しているのだ。

 事態が今のまま推移すれば、筆者は、東京が朝鮮の核で滅亡する可能性が3割くらいはあると考えており、来年以降、東京へ出かける機会をできる限り減らしたいと思っている。ひょっとするとこの年末年始が、対話か戦争かの分水嶺になるかもしれないが、そんなときに朝鮮との対話を否定し「圧力強化」一辺倒の安倍首相しか持てない日本の不幸さを思わずにいられない。

 ●突破されたNPT体制

 いずれにせよ、朝鮮に核開発を思いとどまらせることはもはや不可能だ。望むと望まざるとに関わらず、朝鮮を核保有国リストに加えなければならないときが目前に迫っている。朝鮮による公然たる核武装は、もはやNPT(核不拡散防止条約)体制がまったくの虚構に過ぎないことを見せつけている。現在の核保有国以外に新たな保有国が出現しないようにするといえば聞こえはいいが、NPTは実際には「俺は核を持ってもいいがお前はダメだ」という究極の不平等条約である。それでも非核保有国は、核保有国がいつかはその愚かさに気づき、みずから核保有数を減らす努力をするものと信じて耐えてきた。だが、いつまでも核を減らさず、手放そうともしない核保有国を前に、非核保有国の中からNPTへ挑戦するものが現れた。初めはイスラエル、次いでインドやパキスタン。イランと朝鮮がそれに続こうとしている。NPT体制を崩壊させたのは核保有国の裏切りであり、挑戦者の出現はその結果に過ぎないことを、私たちは今後のためにしっかり認識しておく必要がある。

 ●核兵器禁止条約採択で巨大な前進

 一方で今年、核をめぐってきわめて大きな前進があった。核兵器禁止条約の採択だ。今年7月に国連総会で採択された条約は「核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用及び威嚇としての使用の禁止ならびにその廃絶に関する条約」が正式名称で、2007年、コスタリカ、マレーシア両国が共同提案していたもの。2017年7月7日、122か国・地域の賛成で正式に採択された。最初の段階の開発から最終段階である使用に至るまで、すべての局面で締約国に核兵器との関わりを禁じていることが大きな特徴だ。中心となって交渉を推し進めたオーストリアのハイノッチ大使は採択後の演説で「被爆者の証言が私たち(推進側)を鼓舞してきた。この惑星を核兵器のない、より安全な場所にしていきましょう」と呼びかけた。

 被爆者からも喜びの声が上がった。広島県原爆被害者団体協議会(県被団協)の坪井直理事長(92)は「『核兵器のない世界』の実現という私たち被爆者の長い間の念願がやっと具体的な形に表れた」と評価。「条約が実際に効力を持つまでには困難が横たわっている」とも指摘し「被爆者はもちろんのこと、核兵器を拒絶する世界中の市民の力によって、条約の実効を目指していかなければ」と訴えた。長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会議長、川野浩一さん(77)は「122の国々が賛成したことは意義がある。条約で明確に禁止することは重みがある」と歓迎した上で「核保有国も加えて、実効性のあるものにしていくかが重要」と指摘した。

 それにしても情けないのは、条約に賛成しなかった日本政府だ。これでは「被爆者の苦しみが最もよくわかっている国は日本のはずなのに、参加しなかったのは腹立たしい」(川野さん)と言われても仕方ない。

 坪井理事長が「発効までに困難が横たわっている」と述べているのには理由がある。すべての核保有国含め、日本やドイツ、韓国など米国の「核の傘」の下にある諸国、NATO(北大西洋条約機構)加盟国が参加していないからだ。条約は世界50か国・地域が批准して90日後に発効することになっているが、現在、批准はガイアナ、タイ、バチカンの3か国にとどまっている。だが、賛成国の半数程度の批准でよいのだから、そう遠くない将来発効にこぎ着けるだろう。人類を絶滅させられる最終兵器でだれも使用などできないとわかっているのだから、核兵器だけは全面禁止にしなくてもよいなどという愚かな理屈が成り立ちうるだろうか。様々な紆余曲折を経ながらも、人類は生物化学兵器もクラスター爆弾も最後は国際条約で禁止に追い込んできた。核兵器だけが例外ではあり得ない。

 ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のノーベル平和賞受賞もこうした流れを後押しする画期的出来事だ。これまで長年核廃絶運動に取り組んできた日本の被爆者団体が受賞できず、外国の新しい団体による新しい活動が受賞したことに対し違和感を訴える声があるが、そうしたことが起こるのも、国際社会からの日本の評価の低下が背景にあるのかもしれない。

 しかし、被爆者団体やそのリーダーは、ICANの受賞に好意的だ。坪井理事長は「同じように核兵器廃絶を訴え行動してきたICANの受賞をうれしく思う。私たち被爆者はICANはじめ幅広い皆さんと共に命ある限り核兵器のない平和な世界の実現を訴え続けていきたい」とのコメントを発表した。

 世界の終末時計を30秒も進めてしまうような危険な核開発の動きと核兵器禁止を求める市民の闘い。NPT体制に挑戦しみずからも核保有国になろうと策動する国々と、その前に立ちはだかり核兵器禁止条約を生み出した被爆者・市民たち。悪いこともあったが未来へ向けた画期的出来事もあった2017年「今年の漢字」を筆者が選ぶなら、やはり「核」以外にあり得ないように思う。世界を正反対の方向へ導こうとする2つの潮流は来年も激しく衝突するに違いないが、核廃絶を確実なものにするためには、これまで交わることのなかったこの2つの潮流に誰かが橋を架けなければならない。その役割を果たすのは、核兵器と核の「平和利用」による被害の両方を経験した日本以外にないように思われるが、核廃絶への意思も能力もなく、いたずらに朝鮮との緊張激化だけを煽り立て、福島第1原発による被害を認めるどころか、避難区域を解除、自主避難者を裁判まで起こして避難先の住宅から追い出し、カネまみれの「復興」を演出することにしか興味のない安倍政権ではダメなことだけははっきりしている。来年こそ核兵器と原発の廃絶を実現するため、市民の敵・安倍首相を政権から追い出し、平和を志向する政権に変えていく。2018年に向けた筆者の決意だ。

(黒鉄好・2017年12月16日)

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核・ミサイル開発続ける北朝鮮 やっかいな隣人は何を目指しているのか

2017-10-25 20:29:08 | 反戦・平和
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2017年11月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 今年に入り、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)をめぐる情勢が困難の度を深めている。今年だけで日本上空に2度もミサイルを通過させ、米国中心の世界秩序に挑戦する姿勢をはっきりと打ち出している北朝鮮は、核・ミサイル大国の一角を占めようという野心に満ちている。日本国内では、この年内にも東京が核ミサイル攻撃で滅亡するかのような言説に戸惑った人もいるかもしれない。

 筆者は北朝鮮ウォッチャーでもある。北朝鮮にとって建国の父である金日成主席(1994年死去)の時代から、もう四半世紀もこの国のことを観察し続けてきた。今、訳知り顔でテレビに出演し、解説をしている「自称有識者」には決して引けを取らないという自負もある。今月号では、日本にとってやっかいな隣人として台頭してきたこの国が何を目指しているのか、今後どこに向かうのかを可能な限り分析することで、読者諸氏の北朝鮮理解の一助となれれば幸いである。

 ●国家の歴史と基本原則

 朝鮮半島は、1910年以来、日本帝国主義による植民地支配にあえいだ。1945年、日本が敗戦で撤退すると、朝鮮半島は第2次世界大戦後の東西冷戦の舞台となった。日本敗戦からちょうど3年後の1948年8月15日、北緯38度線以南を領土とする大韓民国が、李承晩を「大統領」として建国宣言すると、遅れて同年9月9日、38度線以北を領土とする朝鮮民主主義人民共和国が建国を宣言、金日成が首相に就任する。

 1950年、東西冷戦を背景に、ついに朝鮮戦争の火ぶたが切って落とされる。当初は北朝鮮軍が優勢で、韓国軍を釜山周辺まで追い詰めるが、米軍を主力とする国連軍の参戦で逆に北朝鮮軍を朝鮮半島北端にまで追い詰める。しかし、1949年に成立した中華人民共和国が中国人民義勇軍を参戦させ、ソ連も武器供与で北朝鮮を援助した結果、北朝鮮軍・中国人民義勇軍が米韓軍を押し返し、戦線は38度線付近で膠着状態となる。結局、3年にわたる戦争は勝者も敗者もなく、どちらが朝鮮半島における正統な政府かの決着もつけられないまま、1953年7月27日、南北双方が板門店で休戦協定に調印した。

 この間、偶発的で小規模な軍事衝突はあったが、幸い全面戦争には至らず、休戦協定に基づく「休戦」はすでに今日まで64年間にも及んでいる。朝鮮戦争を知っている世代は若くても80歳代となり、南北ともに準戦時体制を維持しながら、国民の間から戦争の記憶が失われつつある。そんな奇妙な状態に、北朝鮮と韓国は置かれている。

 南北朝鮮は、こうした歴史的経緯から、互いに相手を「朝鮮半島の一部を不法占拠している反乱勢力」と規定し、いずれ統一することを公式の国家政策にしている。北朝鮮は韓国を「南朝鮮傀儡」「米帝追随者」と非難するなど米国の傀儡政権と見なしており、一貫して韓国との対話を拒否している。韓国との間で何かの合意に達しても、米国がノーと言えばすぐ翻してしまいかねない。そんな傀儡政権と対話などしても無駄だというのが北朝鮮の一貫した姿勢であり、北朝鮮が対話を要求する相手は一貫して米国である。

 北朝鮮は、建国以来、4つの基本原則に基づいて国家運営を行っている。「思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛」だ。このうち自主、自立、自衛は独立国家であれば目指されて当然のものだ(むしろ、低い食糧自給率を放置し、外交上も米国追随の日本のほうが独立国家としての気概を持たない恥ずべき状態といえるだろう)。だが、「思想における主体」とはいったい何を表しているのだろうか。

 北朝鮮では、中国など他の社会主義国家と同様、党が国家を指導している。指導政党である朝鮮労働党は主体(チュチェ)思想をその指導原則とすることが党規約で定められている。主体思想とは何かと問われて正確に答えることは難しいが、1988年9月、北朝鮮建国40周年に当たって招待を受けたポーランド国営ポルテル社取材班が、北朝鮮から提供された資料に基づいて制作した「金日成のパレード 東欧の見た“赤い王朝”」の中にその答えがある。この映画では、主体思想について次のように説明している。

 『朝鮮労働党の党員の考え方や、革命のための人々のあらゆる活動は、主体思想を拠り所にしている。党の指導者に忠誠を誓う核心となるのは、革命に対する考え方、つまり主体思想である。社会主義及び共産主義の道は、指導者によって切り開かれ、党や指導者の管理の下に実現する。革命運動は党の指導者の指揮によってのみ勝利をもたらす。したがって、革命の勝利を確信するためには、党や指導者に対して、限りない忠誠を誓わなければならない』。

 主体思想は、マルクス・レーニン主義を北朝鮮に適用できるようにしたものだという俗流の解釈もある。だが少しでもマルクス主義を学習した経験を持つ人なら、これがマルクス主義とは似ても似つかないことをすぐに理解されるだろう。社会の全員が労働者階級になり、経済発展の結果「各人にはその必要に応じて」供給が行われるようになれば、国家は死滅するとしたマルクス主義に対し、主体思想では絶対的指導者が人民の上に半永久的に君臨し続けることが前提条件になっている。どう見ても、最高指導者の個人独裁を権威付け、正当化するための思想体系としか思えない。


北朝鮮国旗。星は共産主義を表す


朝鮮労働党旗。左から順にハンマー(労働者)、ペン(知識人)、鎌(農民)を表す


 ●核・ミサイル開発成功は30年の「努力」の集大成

 核・ミサイル開発は、金王朝「3代目」である金正恩朝鮮労働党委員長の時代になってからのここ数年で急激に進展したとの印象を持っている人も多いだろう。実際、金日成主席は、1994年元日に行った恒例の「新年の辞」の中で「ありもしない朝鮮の核問題を声高に言い立てながら、実際に朝鮮半島に核を持ち込み、我が国を威嚇しているのは米国である」と米国を非難するとともに、核疑惑を否定している。この時代、北朝鮮が将来核・ミサイルを保有することになるとはまだ誰も思っていなかった。だが北朝鮮は、核・ミサイル開発の道を金日成主席の時代から一貫して追求してきた。そのことは、この間の北朝鮮における「公式報道」を見れば明白だ。

 政治中心のお堅い番組が多い北朝鮮の国営メディアだが、クイズやドラマなどの娯楽番組も多く放送されている。1993年11月3日、朝鮮中央テレビで放送された「小さな数学者」という番組では、中学生~高校生レベルの問題を次々に解く「天才4歳児」リ・チョルミン君が取り上げられている。天空高く打ち上がるロケットをチョルミン君が見上げるアニメーション映像からは、すでにこの時代、ミサイル開発を目指す北朝鮮政府の意向がはっきりと示されている。


1993.11.3放送 朝鮮中央テレビ番組「小さな数学者」より。天才少年がロケットを夢見る


 筆者の手元にある映像資料の中には、この他にも、全国各地から選抜された少年少女が難しい計算問題を次々に解いていくクイズ番組があるが、朝起きてから夜寝るまでの生活すべてが政治と結びついている北朝鮮では、このような番組も単なる娯楽ではない。党や政府の目に留まった天才少年少女たちは、早くから国によって科学者用宿舎を与えられ、将来の科学技術を担う研究者の卵として育てられる。チョルミン君もそうした科学者の卵のひとりなのだ。

 この番組の放送当時、4歳だったチョルミン君。政治的粛清などの嵐に遭わず、順風満帆の人生を送っていれば、今年28歳になる。科学者としてはまだ若いが、そろそろ仕事が面白くなってくる働き盛りの入口世代だ。北朝鮮における核・ミサイル開発を支えているのは彼のような人物である。北朝鮮メディアは核・ミサイル開発の相次ぐ成功を「最高尊厳」(金正恩委員長)の政治的成果として華々しく宣伝しているが、実際には、金日成主席の時代から、着々と担い手を選抜・育成しながら進められてきた遠大な計画が、ついに実を結んだものと見るべきだろう。

 ●国際的包囲の中で

 北朝鮮は、国際社会からの非難も意に介さず、今後も核・ミサイル開発を続けることを繰り返し表明している。朝鮮戦争で共に血を流して戦ったはずの中国との関係が、歴史上最悪といわれるほど冷え込む中で、逆に歴史上最高の関係といわれ、北朝鮮の事実上の「後ろ盾」となっているロシアのプーチン大統領は、「彼らはたとえ雑草を食べてでも核・ミサイルを手にするだろう」と述べている。首都の市民が、毎朝、パンを求めて国営商店に行列を作らなければならないほど疲弊した経済の一方で、世界を何十回も滅亡させられるほどの核兵器を保有するに至ったソ連を、マーガレット・サッチャー英首相(当時)は「パンより核を大切にする国」だと非難した。これに激怒したソ連国防省機関紙「クラスナヤ・ズヴェズダ(赤い星)」はサッチャーに対し、その後、彼女の象徴的キーワードとなる「鉄の女」の称号を贈った。雑草を食べなければならないほど飢えたとしても、核・ミサイル開発を続ける鉄の最高尊厳・金正恩党委員長に率いられた「不思議の国」は今後どこに向かうのだろうか。

 世界地図の中で北朝鮮を見ると、列強に包囲されている小国の姿が見えてくる。北と西に位置するロシアと中国は、軍事的にも経済的にも強国だ。南に位置する日本と韓国は経済的には強国であり、不足する軍事力を米軍駐留で埋め合わせている。主体思想で固く武装してはいても優秀といえるかどうかは保障できない労働力と劣悪な石炭くらいしか資源のない北朝鮮が、強国の包囲の中で自主・自立・自衛を掲げ、必死に生き残りをかけて戦っている。かつて国際的孤立の道を歩む日本は米国(America)、英国(British)、中国(China)、オランダ(Dutch)による「ABCD包囲陣」によって包囲され、戦争に突入していったが、今、北朝鮮指導部からは、自分たちが「ACJS包囲陣」によって包囲されているように見えているであろう。米国、中国、日本(Japan)、韓国(South Koria)による包囲網である。もし、あなたが金委員長の立場だったらどうするだろうか。2200万人といわれる北朝鮮国民、300万人の朝鮮労働党員を守るため、彼と同じように行動するのではないだろうか。

 北朝鮮の姿は、戦前の日本と一見、似ているようにも思えるが、拡張主義と侵略の野望に燃えていた戦前の「神国日本」と異なり、北朝鮮には領土拡張の野心はなく、現実的にそのようなことが可能な状況にもない。その意味で、北朝鮮問題への対処は戦前の「神国日本」への対処ほどには難しくない。核を持たなければ、我が国は米国によって滅ぼされる――金委員長が抱いているそのような強い強迫観念を捨てさせるためには「ACJS包囲陣」による包囲を解く以外に方法はない。圧力で解決できないことは「神国日本」のその後の不幸な歴史を見れば明らかだ。圧力と制裁に明け暮れる安倍政権から、包囲網を解き、対話によって危機を乗り越える英知を持った新しい政権へ、私たちも勇気を持って進まなければならない。

<読者のみなさまへ>
 朝鮮民主主義人民共和国の国名表記については、同国の公式メディアが使用している「朝鮮」を使用すべきであるが、日本の報道機関で一般的に使われている北朝鮮の表記をそのまま用いた。北朝鮮による日本人拉致問題が発覚するまで、同国と日本の報道機関との間では、北朝鮮について報道する場合、「記事の最初で『朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)』と表記すれば、2回目以降に国名が登場するときは『北朝鮮』表記を認める」との合意が成立していたが、その後、破棄された経緯がある。

<参考文献・資料>
本稿執筆に当たっては、「北朝鮮データブック」(重村智計・著、講談社現代新書、1997年)の他、映像資料については文春ノンフィクションビデオ「金賢姫 私と北朝鮮」(1994年)に収録されているものを参考とした。

(黒鉄好・2017年10月22日)

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