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安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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●管理人の寄稿
規制緩和が生んだJR事故(国鉄闘争共闘会議パンフレット「国鉄分割民営化20年の検証」掲載)
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【訃報】小林久美子さん(元国労本部書記) タクシー暴走事故で

2021-09-20 10:39:51 | 鉄道・公共交通/交通政策
2021年9月11日、東京都内で、タクシー運転手が運転中にくも膜下出血で死亡。暴走したタクシーに歩行者がはねられ、6人が死傷する事故があった。この事故では、JR不採用問題について、長年、講談の形で告発を続けてきた講談師の神田香織さんがはねられ軽傷を負った。

福島県いわき市出身の神田さんは、2007年以降は「チェルノブイリの祈り」と題した講談活動も続けてきた。当ブログ管理人は、JR不採用問題、福島第1原発事故と原子力問題の両方で交流のある方である。JR不採用問題で続けてこられた講談を受け、2010年には著書「乱世を生き抜く語り口を持て」を出版された。

実は、この日は「経産省前テントひろば」発足10周年記念の集会が経産省前で行われることになっており、この集会に参加する予定だった。福島第1原発事故からちょうど半年後の2011年9月11日、全原発即時廃炉を目指す人たちが経産省前にテントを張り、24時間体制で寝泊まりするようになった。テントは2016年8月に警察によって強制撤去されるまで実に5年近く続き、実際、ここ宛ての郵便物は「経産省前テントひろば」と書けば届くほど認知されていた。

この事故では、小林久美子さんという女性が死亡した。以下の記事で、死亡した小林さんについて伝えられている。

5人死傷のタクシー事故、運転手が死亡 発進後に急加速か(朝日)

タクシー事故で死亡の女性「問題意識高かった」 同居する弟の無念(朝日)

小林さんが「20代から勤めていた労働組合」とは、記事にはないが国鉄労働組合(国労)である。小林さんが、長く国労本部で書記を務められた方であることは、JR不採用問題に関わった方、「根室本線の災害復旧と存続を求める会」関係者などからほとんど同時に連絡を受けて知った。

国鉄分割民営化を、一度は受け入れる方向に傾きながら、国労は、1986年10月、静岡県・修善寺で開いた臨時全国大会で、ヤジ・怒号が飛び交う中、国鉄改革法案の承認を反対多数で拒否する。山崎委員長ら執行部が責任を取って総辞職。分割民営化反対派だった六本木敏さんが国労委員長に就任する。国労は改革反対を貫いたがその代償も大きく、大半の組合員はJR新会社に採用されなかった。六本木執行部の闘いと、その後を襲った過酷な運命は「人として生きる―国鉄労働組合中央執行委員長339日の闘い」として出版されている。

就任したばかりの六本木新委員長を取材した、当ブログ管理人の知人ジャーナリストが私に宛ててきた私信がある。本人の転載許可を得ていないが、彼なら許していただけるだろう。差し障りのない範囲で紹介しておこう。

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国鉄分割・民営化反対闘争の取材にあたって小林さんには随分お世話になりました。とくに忘れらないのは、国労が1986年10月に静岡県修善寺で臨時大会を開き、労使共同宣言受け入れ路線をきっぱり拒否して闘う道を選択した際に新たに委員長に就任した六本木敏(ろっぽんぎ・さとし)さんをインタビューしたときのことです。

当時、東京駅八重洲南口にあった国労会館の委員長室をおそるおそる訪ねると、(アポはもちろんとってありましたが)どこの馬の骨とも知れない新参者のメディアを小林さんはやさしい笑顔で迎え、六本木委員長と引き合わせてくださいました。おかげで私は気持ちを落ち着け、六本木さんの決意あふれるお話をしっかりと聞きとることができました。

その後も国労本部を訪れる都度、丁寧に接していただき、あいさつ程度の会話でしたが穏やかながら芯の強さを感じさせるお人柄に触れて気持ちよく取材できたのを思い出します。

国労を退職された後も、国会前だったかでばったりお会いしたときに、地域などでさまざまな活動を続けていらっしゃると聞き、こちらも頑張らなくてはと奮起させられたものです。

なぜこんなすてきな方が突然逝ってしまわなければならないのか。不条理きわまりありません。合掌。
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小林さんは、戦後半世紀にわたって日本の労働運動を牽引してきた国労に本部書記として奉職し、文字通り、国労という大組織の栄枯盛衰すべてを内部から見てきた。その中には、日本の労働者階級人民のために秘さなければならない恥部、墓場まで持って行かざるを得ない暗部もあったことだろう。その身の処し方、矜持、労働者階級人民に奉仕し続ける気概には、当ブログ管理人も大いに学ばざるを得ないと思っている。改めて、こんな不条理な形で逝かざるを得なかった小林さんに対し、当ブログは敬意と深い哀悼の意を表する。

 ○     ○     ○

小林さんの死去を受け、急きょ、国労の運命を決めることになった1986年の臨時大会の模様を伝えるニュース音源をアップした。

1986年ニュースハイライト/国労、臨時大会で分割民営化受入を拒否


NHKラジオ第1放送では、毎年、年末に、その1年をニュースで振り返る「○○年ニュースハイライト」が放送されていた。この音源は、1986年12月31日放送の「1986年ニュースハイライト」から、1986年10月10日に国労が静岡県修善寺で開催した臨時大会の模様を伝える部分を抜き出した。わずか1分強だが、国鉄改革法(=分割民営化)を承認するかどうかをめぐって揺れる国労の内部対立の様子が伝わってくる。

この大会で、国労執行部は分割民営化を受け入れ、国鉄当局・政府との協調路線に転換する方針を提案するが、音声にあるとおり、賛成・反対両派のヤジ・怒号が飛び交うなかで採決に持ち込まれ、執行部提案は否決。山崎委員長ら執行部が総辞職。その後、分割民営化反対派の六本木敏さんが新委員長に就任することになる。

国鉄改革法案が参院本会議で可決・成立したのは86年11月28日なので、この臨時大会の時点では成立していなかったが、この番組の放送時点ではすでに成立し、JRへの移行は避けられない状態となっていた。「法案成立後も無益な抵抗を続ける国労」を聴取者に印象づけるため、国労の組織について「分裂はさらに深まる」などと報じるNHKの「政府・自民党御用放送」ぶりが昔も今もあまり変わっていないことも、この悪意ある(?)報道内容から見えてきて、興味深いものがある。

昔も今も、重大な歴史の分岐点、重要な政策変更の最前線では、常に政府・自民党に肩入れするのがNHKだという「歴史的告発」の意味も込めての音源を公開する。当ブログ管理人は「あの時代」を知る最後の世代だと思うが、当時を知る世代にとっては時代の雰囲気も懐かしく思い出されるだろう。そしてこうも思うのだ。「この国労への攻撃でさえ、ほんの“手始め”にすぎなかったのだ」と。

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浦河町で日高本線廃線跡地の活用考える会議開催

2021-09-11 11:17:11 | 鉄道・公共交通/交通政策
廃線になったJR日高線の線路跡 浦河町で活用策考える会議(NHK)

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ことし4月に廃線になったJR日高線の鵡川・様似間を活用して町の活性化につなげようと、8日夜、浦河町で地元の人たちなどが意見を交わしました。

浦河町で開かれた会議には地元の人たちが集まったほか、オンラインで札幌市や千歳市から参加した合わせておよそ20人が意見を交わしました。

JR日高線の鵡川・様似間がことし4月に廃止された中、会議では浦河町に公園が少ないことから駅を町民が集まることができるコミュニティースペースに改修する案が出されました。

また、線路跡をサイクリングロードにして町の観光の活性化につなげていく案や、スピードスケートなどスポーツ選手のトレーニングに活用する案が出ていました。

会議に参加した女性は「みなさんいろいろ考えているなと思った。今後も意見交換をしながら伝えていけたらいいと思った」と話していました。

会議を主催した樋口倫崇さんは「線路については浦河町だけの問題ではないので、隣の町の人たちとも話していきたい」と話していました。

この会議を開いたメンバーは今後も意見交換を続け、アイデアを出していきたいとしています。
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報道の通り、9月8日、廃線となった浦河町内の旧日高本線跡地利用について考える町民イベントが、浦河町内の映画館「大黒座」ホールで開催された。大黒座は、戦前から続く道内ではもっとも古い映画館である。

8月に、浦河町が日高線の跡地利用策について町民からの意見募集を行った。「町民限定」という条件だったが、町外からでも閲覧できるホームページに掲載されている以上、町民に限定することは不可能だ。実際、札幌市からも応募があったほか、当ブログ管理人も「馬車鉄道運行」提案を行った。

メディアが取材に入っているとは思っていなかったので、報道されたとの地元町民からの連絡を受け、驚いたところ。急きょ、当ブログ管理人が浦河町に提案した内容をアップロードした(PDFのみ)。ぜひご覧いただいた上、ご支援をいただきたい。

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ローカル線衰退史としての「全線完乗」

2021-09-07 20:31:53 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が長野県大鹿村のリニア建設反対住民団体「大鹿の十年先を変える会」会報「越路」に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 筆者は鉄道全線完全乗車に取り組んでいる。多くの鉄道ファンも取り組んでおり、国鉄時代には「いい旅チャレンジ20000km」という国鉄公認のファン向けキャンペーンが行われたこともあった。筆者はJRが発足した1987年に初めて全線完乗を意識したが、当時はまだ高校生で本格的活動にはならなかった。就職後の1997年11月、鉄道雑誌の付録だった完全乗車地図で乗車済路線を塗りつぶすと半分以上が埋まっていた。「よし、やるか」と決心したのはこのときである。国鉄分割民営化のあおりを受け凍結されていた整備新幹線第1号、高崎~長野間の開業を控え、鉄道ファンには有名な「碓氷峠」を超える信越本線・横川~軽井沢間が廃止されると聞き、出かけたときのことだった。

 本線を名乗る路線が廃止されるのは、特定地方交通線となった名寄本線を除けば初めてだった。鉄道はたとえ1センチでもレールが途切れればネットワークとして機能しなくなる。1区間とはいえレールを途切れさせる前例を作った横川~軽井沢間の廃止は今思い返しても日本鉄道史に残る汚点であり、愚策だったと思っている。

 全線完乗といっても統一的ルールがあるわけではなく、ルールは自分なりに決めればよいが、ポイントレールがある駅ではすべてのポイントレールを通過しなければならないという厳しいルールをみずからに課している人もいる。あまり厳しいルールでは自分の心が折れてしまう一方、8割方のファンから「それなら完乗達成と認めてもいい」と納得感をもって迎えられる程度には厳しいルールである必要がある。最低限、乗車しない区間(中抜け区間)があってはならないことは完乗を標榜する以上当然だろう。筆者が自分に課しているルールは以下のとおりである。

1.JR線のうち、旧国鉄から継承した路線の名称は「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法施行令別表第一」の例によることとし、JR化以降に開通した路線は国土交通省が認可した路線名による。ミニ新幹線区間は在来線とみなして記録し、私鉄の路線名は時刻表掲載の路線名とする。

2.独自の営業キロを持たない新幹線区間(東海道・山陽、上越、東北(盛岡以南))も完乗の対象とする。

3.二重線籍区間を乗車した場合、線籍を共有する関係路線すべてに乗車したものとする。

4.夜行列車で就寝中に通過した場合も乗車に含める。

5.ポイントレール、側線等は考慮しない。

6.貨物線など、通常旅客列車が走行しない区間を走行する列車に乗車した場合は、当該区間がJR旅客会社の第1種免許区間(旅客会社が第一種鉄道事業を行う区間)である場合に限り参考記録として整理する。

7.すでに乗車を終えた区間で、(1)路線延長があった場合は、延長開業初日をもって新たな未乗車区間が発生したため完乗の記録喪失となり、延長区間の全部に乗車した場合に再度完乗達成とする。(2)JR→第三セクター、JR→私鉄のように経営形態が変わった場合、乗り直しはしなくてよいが、「過去○○線時代に乗車済み」のように記録の補正を行う。(3)大規模な線路付け替えが行われた場合は、通常、乗り直ししないが、営業キロが変更となった場合、または建築限界測定車による建築限界の再測定が行われた場合に限り、新たな未乗車区間が発生したものとみなして、該当区間の乗り直しを行う。

 2011年の東日本大震災以降、今日まで10年以上にわたって、JRグループ全線に不通区間がなく、全線で列車が通常運行されたのは1日もない。常にどこかの路線が災害運休中であり、日本の「災害列島化」にますます拍車がかかっている。ここ数年は、被災路線が復旧する前に次の災害で新たな不通路線が生まれてしまう状況で、災害不通と復旧のいたちごっこは今日まで果てしなく続いている。大規模災害が経営基盤の弱いローカル鉄道を襲うケースも増え、災害になったら道路は復旧するのに鉄道はむしろ廃線になるのが当然というムードさえ出てきている。どちらも公共交通なのにこの差は一体何なのだろう。『各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと』とした国鉄改革法成立時の国会における附帯決議が守られなかったことが根底にある。鉄道が民間企業の経営で、鉄道自身を守るという名目で政府が自由に使える予算もないに等しい。鉄道事業法では事業収支見積書を提出し、黒字化の見通しが立たなければ新規路線開設を認めないと定めている。こんなばかげた法律はあり得ないと、この8月、ついに全国23道県知事が鉄道事業法改正を求めて国土交通省に直訴した。鉄道会社が廃止届を出したら1年後に勝手に路線廃止できる法律はおかしいという当たり前すぎる問題提起だ。

 毎年、少しずつ形を変えて襲いかかる大規模災害で、当初、40歳までに達成する予定でいた私の全線完乗計画は、今年50歳になっても達成できなかった。災害不通区間の中に未乗車区間が多く含まれており、存命中に達成できるかも怪しくなっている。その上、自分で自分に課した7の(2)のルール(線路付け替えで営業キロが変更されたら乗り直し)のせいで、東北には乗り直しが必要な区間が多く生まれている。それでも災害原因ならまだ諦めもつくが、群馬県・吾妻線に至っては、税金垂れ流し公共事業の典型として反対し続けてきた八ッ場ダム工事が強行された上、ダムのせいで線路が付け替えられ、営業キロが変わったため乗り直しまで必要になったのだから踏んだり蹴ったりだ。

 国土が細長い日本は本来なら最も鉄道に向いているはずだが、道路偏重の自民党的利権政治が鉄道をダメにしてしまった。グレタ・トゥンベリさんから「炭素を減らせ」といわれているのに、排気ガスを吐きながら走る車を国民1人に1台「配車」し、炭素を吸収する森林を壊してまで、誰も通らない道路を作る工事でまた炭素を出す。炭素も血税も垂れ流しの無駄遣いニッポンに、いつになったら終止符が打てるのだろうか。

 全線完乗に取り組み初めて20年。ゴールはまだはるか彼方にあるように感じる。地方では駅前にコンビニもなく、食事のできる店も大手チェーン系列の居酒屋だけという個性のない町だらけになった。見せつけられたのは地方衰退史そのものだ。声高に叫ばれ続けた「地方創生」とは何だったのか、そろそろ検証すべき時だろう。

(2021年9月1日)

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長引く水問題、熱海での盛り土流出、陥没事故・・リニアよ、お前はすでに死んでいる

2021-08-22 16:41:24 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2021年9月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。なお、筆者の判断により「鉄道・公共交通/交通政策」カテゴリでの掲載としました。)

 ●吹き始めた「強烈な逆風」

 7月19日、東京都大田区・世田谷区の住民24人が、JR東海を相手取り、リニア中央新幹線事業の差し止めを求める訴えを東京地裁に起こした。昨年10月、東京都調布市の住宅街の道路上で起きた陥没事故と同じような事故がリニア新幹線工事によっても起きるのではないかと考え、提訴に踏み切ったのだ(注1)。

 東京外かく環状道路(外環道)の事業主体である東日本高速道路(NEXCO東日本)は、陥没現場の直下で同社が進めている外環道工事に伴い、地下トンネルを掘り進むために使用されているシールドマシンの振動が陥没原因であることを認めながらも、「特殊な地盤条件下での特別な工事が要因」であるとして、壁の亀裂や扉が閉まらなくなるなどの建物被害を受けた住民に対して、転居するよう一方的に通告したため、住民との間で紛争に発展している。

 そもそも「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」(民法207条)と定められており、土地所有者には「上空や地下を勝手に使用されない権利」がある。にもかかわらず、このような工事が住宅地の真下で進んでいるのは、2000年制定の「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(大深度法)による。3大都市圏に限定してはいるものの、鉄道、道路、電線など公共性の高い施設・設備を建設しようとする事業者に対し、通常は使用されることのない地下40メートル以下の「大深度地下」の利用を、土地所有者の許可を受けないまま認める特例法だ。

 3大都市圏では極度の過密化により、道路・鉄道・電線などのインフラを建設しようにも、すでにあらゆる場所が使用し尽くされ、建設場所もなくなりつつあった。それでも日本のゼネコン業界は公共事業による飽くなき利潤追求のため、空中や地下の利用解禁に向けた新たな法整備を政府に対して求めるようになった。1988年6月28日に閣議決定された「総合土地対策要網」の中で『土地の有効、高度利用の促進-市街化区域内農地、工場跡地等の低・未利用地の利用促進および空中・地下の利用の促進をはかること』とする基本方針の下、『有効な土地利用を実現していくためには、土地利用、土地活用を前提とした土地所有という考え方、いわば所有権と利用権(使用権)との思想的分離が必要』と提起された。大深度法の制定はこうした「要求」に応えたものだ。

 外環道建設工事現場の真上の住宅地を襲った陥没事故は、利潤追求のための都市空間利用が限界を超えたことを示すものといえる。今回、リニア差し止め訴訟を起こした住民らの危惧にはそれなりの根拠がある。原告団長の三木一彦さんは「外環道で陥没事故が起き、誰の目にも大深度地下のトンネル工事の危険性が明らかになった。取り返しのつかない事故が起きる前に、なんとしてもリニア工事を止めたい」と提訴の理由を説明する。

 リニアをめぐっては、6月の静岡県知事選で水問題の解決を訴える現職・川勝平太知事が4選(前号既報)。7月、静岡県熱海市を襲った集中豪雨では大規模な土石流が発生。開発業者が行っていた盛り土が流出した可能性が指摘されている。全区間の7割が地下を通るリニア事業では、熱海市の現場とは比較にならない膨大な建設残土が発生するとされており、その量は「諏訪湖が埋まってしまうほど」だといわれる。これだけの量の残土をどこに持って行くのかは元々決まっておらず疑念を持たれていたが、さらに盛り土流出の懸念が加わった。

 新型コロナウィルス感染拡大が始まり、公共交通機関の利用客が激減した2020年以降は事業の必要性そのものに疑問が出される状況になっている。ここ数年、リニアに関して出版される本はどれも事業に批判的なもの、疑問を呈するものばかりだ。リニア推進の本も出版されているのに筆者が知らないだけではないかと思い、インターネットを検索してみたが、推進の立場の出版物は事業認可前後の時期に出たものが大半でここ数年のものはまったくといっていいほど見られなかった。リニアは八方ふさがり状態になっており、大逆風が吹き始めている。

 筆者は国鉄分割民営化によるJR不採用問題以来30年以上にわたって、あらゆる問題でJRと闘い続けているが、これほど強い追い風を感じるのはJR福知山線脱線事故以来といえる。リニア事業を阻止に追い込む展望はかつてないほど開かれている。

 ●鉄道政策変更の方向性を議論

 7月24~25日に開催された「平和と民主主義をめざす全国交歓会」(ZENKO)では、毎年設けられているJR・リニア問題分科会が今年も例年通り行われた。「NO!リニア・新幹線 生活路線と安全守るため今すぐ鉄道再国有化を」と銘打った分科会には、会場13人、ZOOMで4人の計17人が参加した。

 新型コロナ感染拡大で「密」回避の動きが強まる中で、満員電車は「密」の象徴となり、多くの鉄道会社は利用者が半減、経営が急速に悪化している。再国有化を明確にしたのはそうした情勢変化の反映だ。

 基調提案では、2023年に鉄道再国有化の実施を決め、1960年代に廃線にした一部路線の復活を決めた英国の例も紹介。「新自由主義と闘い、企業の都合で切り捨てられる医療・教育・福祉・公共交通を市民の要求に応じて拡充・強化が可能な共有財産に変える」という分科会の基本方針を明らかにした。

 今春「リニアの通る町」長野県大鹿村に大阪市から移住した北川誠康さんが現地で撮影した写真を元に報告。膨大な残土投棄や樹木伐採など、巨大な自然破壊につながるリニア新幹線建設の阻止を訴えた。リニア建設阻止の闘いを進めるリニア・市民ネット大阪は事業認可(14年)直後の15年に発足。リニアに関する勉強会を15回実施した他、自治体への要望書提出や国政選での各候補者への公開質問状提出などの取り組みを報告した。春日直樹さんは「地方の役人は上から言われ、内容もよく知らないまま実施しているだけ。ダメなものには黙っていないでダメといわなければいけない」。闘う意思表明だ。

 また、JR東海への要請も行ったが門前払いだったこと、金沢まで開業し敦賀延伸に向け工事中の北陸新幹線も、強権的な進め方が共通していることも報告された。北陸新幹線工事はトンネル事故が発覚し中断しているが、ずさんで強権的な事業の手法がこのような事故を生んだといえる。

●ローカル線をめぐって、全国23知事が鉄道事業法見直しを要求

 新型コロナ感染拡大に伴い、全国的に公共交通期間、特に地方路線は苦境の中にある。こうした中、三江線が廃止となり、その後も北海道と同様、ローカル線が根こそぎ廃線の危機に直面している中国地方では、丸山達也・島根県知事が昨年10月29日の記者会見で「国交相の許可も要らず、鉄道会社の届出1つでローカル線が廃止できる鉄道事業法はおかしく、見直しが必要」と発言した(注2)。

 さらに、今年8月に入り、芸備線(注3)が廃線危機にさらされている広島県の湯崎英彦知事が共同発起人代表となり、届出だけで鉄道路線の廃止ができる現行鉄道事業法の見直しを求める「地方の鉄道ネットワークを守る緊急提言」をとりまとめた。この提言には全国23道県知事が賛同し、8月2日、赤羽一嘉国交相に対し、オンラインで湯崎知事が要望を直接伝えた。1999年の鉄道事業法改悪で鉄道路線の廃止が許可制から届出制に変わって以降、地方路線廃止阻止へこれだけ大規模な動きが出たのは初めてであり注目される。北海道ローカル線の廃線阻止に向けても大きな追い風である。

 鉄道事業法には、23知事が問題とした届出だけで路線が廃止できる規定のほか、鉄道事業開設予定者に事業収支見積書の提出を求める規定もある。このような鉄道事業法の規定について「新自由主義的」だとして見直しの必要を指摘したのは安全問題研究会だ。ZENKO分科会で、同会は今年早々とりまとめたJR再国有化法案(日本鉄道公団法案)の概要説明も行った。コロナで急速に経営が悪化した全国の鉄道網維持のため、早急な再国有化が不可欠だ。同時に、不要不急どころか有害無益の代表事例であるリニア事業は直ちに中止しなければならない。

<参考>「地方の鉄道ネットワークを守る緊急提言」に賛同した知事(注4)

●国交省との要望交渉に参加した共同発起人
広島県知事 湯﨑 英彦(共同発起人代表)、鳥取県知事 平井 伸治、島根県知事 丸山 達也、徳島県知事 飯泉 嘉門、香川県知事 浜田 恵造

●提言への賛同者
北海道知事 鈴木 直道、青森県知事 三村 申吾、岩手県知事 達増 拓也、宮城県知事 村井 嘉浩、秋田県知事 佐竹 敬久、山形県知事 吉村 美栄子、福島県知事 内堀 雅雄、新潟県知事 花角 英世、富山県知事 新田 八朗、石川県知事 谷本 正憲、福井県知事 杉本 達治、山梨県知事 長崎 幸太郎、長野県知事 阿部 守一、滋賀県知事 三日月 大造(元JR西日本、JR連合出身)、鳥取県知事 平井 伸治(共同発起人)、島根県知事 丸山 達也(共同発起人)、岡山県知事 伊原木 隆太(共同発起人)、広島県知事 湯﨑 英彦(共同発起人代表)、山口県知事 村岡 嗣政(共同発起人)、徳島県知事 飯泉 嘉門、香川県知事 浜田 恵造、愛媛県知事 中村 時広、高知県知事 濵田 省司

注1)リニア工事差し止めを トンネル予定地の上の住民ら24人がJRを提訴 東京地裁(2021.7.19「東京新聞」

注2)2020年10月29日 丸山達也・島根県知事記者会見「鉄道事業法について」

注3)中国山地を走る三江線(廃止)、木次線、芸備線、福塩線、姫新線の5線は、国鉄再建法制定当時、基準となる1977年度の輸送密度が2000人未満であったことからいったん第2次特定地方交通線へ選定されたが、国鉄再建法施行令に規定する除外条項(芸備線、福塩線、姫新線→ピーク時の輸送密度が1000人を超えるため、三江線、木次線→並行道路未整備のため)に該当するとして特定地方交通線から除外された経緯がある。

注4)香川県ホームページ

(2021年8月21日)

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<管理人よりお知らせ>JR新幹線、リニア問題など、JRをめぐる問題に関するイベントを連続開催します!

2021-07-18 11:20:10 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

1.【2021.7.22(木・祝)】ZOOM学習会「これでいいのか新幹線 有害残土問題から見える鉄道政策の問題点」開催

→終了しました。安全問題研究会専用コーナーに使用したスライド資料及び講演動画をアップロードしています。全画面表示に拡大して動画をご覧になりたい場合は、動画に直接、飛んでください。

2.【2021.7.25(日)】「2021ZENKO in 大阪」(ZOOM配信あり)で、JR問題を扱う分科会「NO! リニア 守れ!路線と安全 民主的再国有化で公共交通再建を」

→終了しました。詳細はZENKOホームページ内の専用コーナーをご覧ください。

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静岡県知事選、現職・川勝氏4選 今こそリニアを粉砕せよ

2021-06-22 20:10:24 | 鉄道・公共交通/交通政策
静岡知事選、川勝氏が4選 リニア着工は引き続き困難に(朝日)

20日投開票された静岡県知事選で、現職・川勝平太氏が4選を決めた。2014年10月に事業認可を受けて以来、早くも6年半。大井川からの水問題をめぐって事実上膠着状態にある中央リニア新幹線事業の先行きはますます不透明になった。

大きな貯水用ダムのない静岡県にとって、大井川から流れる水は生命線だ。リニア新幹線「南アルプストンネル」が現状の実施計画のまま着工された場合、静岡県民の水がめである大井川からの流量は毎秒2tも減少するとしたデータがある。1分間当たり120t、1時間に7200t。1日にすると17万2800t。一昨年夏の大水害の際に話題を呼んだ群馬県・八ッ場ダムの貯水量が1億750万m3(=1億750万t)だから、満水状態の八ッ場ダムの水が1年9か月で涸れてしまうほどの水量減少に当たる。「たかが2t、されど2t」であり、静岡県民の怒りももっともだ。

JR東海の静岡県に対する姿勢は不誠実で、静岡県民のみならず、当ブログ・安全問題研究会の我慢の限度をも超えている。当初、JR東海は水は涸れないと主張した。水涸れの恐れが明らかになってくると、今度は工事を実施して減った分の水を全量戻すと主張を変える。それも難しいとわかると、やっぱり全量は戻せないと言い出した。約束が違うと静岡県が指摘すると、今度は山梨県側に水は戻っているので約束違反ではないと言い繕う。東京電力、原子力ムラも真っ青の虚言集団、それがJR東海だ。こんなウソにウソを重ねておいて、今さら信じてくれなどとは馬鹿にするのもいい加減にしろと言いたい。JR東海は、寝ぼけているなら工事予定地の冷たい湧き水で顔でも洗って出直すべきだろう。

リニアをめぐって、先日、当ブログ管理人はJR東海の内部関係者から重大情報を入手した。取材源は明かせないが、きわめて信頼できる消息筋である。まだ工事に着手してもいない名古屋~大阪間について、その人物がJR東海のある経営幹部に「どうするつもりですか」と尋ねたところ、「会社としては、まだ白紙」との回答があったというのだ。

葛西敬之・JR東海名誉会長の個人的野望に過ぎないリニアに付き合わされるのは御免だ、というムードがJR東海の現役経営陣の間にも出てきているように感じられる。昨年末に出版された「超電導リニアの不都合な真実」(川辺謙一・著、草思社)では、リニアが試験走行中に突然、電磁石の磁気が抜ける「クエンチ」という現象が起き、これに対する抜本的な対策方法もないままJR東海が隠しているのではないか、という疑惑が指摘されている。本来ならその程度の技術的課題は事業認可前に解決しておくべきことだ。事業認可から6年半過ぎ、一部区間では工事も始まっているこの段階になって、リニアが「技術的に実現可能なのか」などという「そもそも論」が提起されること自体がおかしい。JR東海は事業の実施主体としてこの疑問に答える義務があるし、ましてや、こんな状況で3兆円もの巨額資金を、法律改正までして国がJR東海に貸し付けるのは、誤解を恐れず言えば官民合作の詐欺に等しい。

財務省のホームページには、一般市民が財務省の政策について自由に質問できるメールフォームがある。今年1月3日、当ブログ管理人は、JR東海に対する3兆円の財政投融資について、以下の通り質した。

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※ ご意見・ご要望の分野
 財政投融資

※ 件名
 リニア新幹線事業における財政投融資資金の使い方について

※ ご意見・ご要望
 JR東海が進めているリニア中央新幹線事業において、鉄道・運輸機構を財政投融資資金の受入可能団体にできるよう法改正が行われ、鉄道・運輸機構を通じて3兆円の資金がJR東海に貸し付けられています。

 JR東海は、もともと自己資金で東京~名古屋間を建設し、自己資金が回復してから名古屋~大阪間を建設する計画でしたが、名古屋~新大阪間の建設を前倒ししてほしいとの要望が関西地方から出たために、今回の財投貸付になったと報道されています。

 こうした経緯から、財投資金は名古屋~大阪間の工事のために使われるものと理解していたのですが、2018(平成30)年版のJR東海のアナリスト向け決算説明資料によれば、「中央新幹線の建設に係る費用は財投資金から先に充当」と説明されています(このリンク先資料のPDF14ページ中、13ページにそのことが記載されています)。

 このような財投資金の使い方ができるのであれば、JRのような公共性の強い会社は、自己資金=内部留保を温存しておくことで、財投資金の貸し付けを受けなかった場合に比べて、株主に高い配当を実施することができるようになります。このような財投資金の使い方が、貸付目的に照らして正当といえるのかどうかについて、見解をお聞かせください。
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これに対する財務省からのメール回答(今年1月14日付)は、以下の通りだ。

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 財務省ホームページへのアクセスありがとうございます。

 1月3日にお寄せいただきましたご質問にお答えいたします。

 リニア中央新幹線に対して、財政投融資を用いて行った貸付は、品川—名古屋間の工事について必要となる金額(3兆円)を融資するものであり、品川—名古屋間開業後、名古屋—大阪間の工事にJR東海が速やかに着手することが可能となることで、全線開業の前倒しを図るものです。

 今後とも、財務行政につきまして、ご理解とご協力を賜りますよう宜しくお願いいたします。
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要するに、「名古屋~大阪間の工事を前倒しするには、品川~名古屋間の工事を早めることが必要であり、そのために貸すのだから目的違反ではない」というもので、典型的官僚答弁だと思っている。こんな屁理屈がまかり通るなら、誰にでも、どんな目的でも財投資金を貸し出せることになる。

リニアをめぐっては、無理が通れば道理引っ込むのことわざ通り、もはやでたらめしか存在していないと言ってよい。長年、ウソ、ごまかし、はぐらかし、隠蔽、改ざんの見本市のような電力会社と原発問題をめぐって対峙してきた当ブログにとって、JRグループ各社はそれに匹敵するウルトラペテン師集団である。こんなでたらめが大手を振ってまかり通るのも、葛西「不名誉会長」が安倍前首相とズブズブのオトモダチだからである。葛西名誉会長をめぐる人間関係については、月刊誌「ZAITEN」2020年2月号が詳しく報じているので、期間限定でアップする。この実態を多くの人に知っていただきたいと思う(「ZAITEN」は以前、「財界展望」と呼ばれていた。古い読者にはこの名前のほうが通りがいいかもしれない)。驚くことに、今回4選を果たした川勝知事もかつては葛西名誉会長の取り巻きの1人だったのである。

葛西名誉会長といえば、当ブログ・安全問題研究会を古くから知る人にとっては改めて説明するまでもなかろう。東大生時代、葛西氏は、自分が落とした定期券が届けられていた国鉄の駅で「東大生なら、国鉄は出世が早いですよ」と言われて就職先を国鉄に決める。そんなエピソードがあるほど志の低い出世主義者だ。国鉄分割民営化の暴風が吹き荒れる中で、職員局長として国鉄職員10万人の「人員整理」(=首切り)と「労務対策」(=国労潰し)に直接関わった。その「功績」を認められ、全国の警察をコントロールする国家公安委員会の委員在任中、2010年9月2日に開催された定例会では、ヘイト集団「在特会」を「このグループについては、『極右』と呼ぶべきものではないと思う。事前に、よく実態を知り、適正に評価することが大事なのではないかと思う」として持ち上げる発言までしている。

これで、葛西名誉会長がどんな人物か、ほとんどの読者のみなさんにもご理解いただけたと思う。志の低いブルジョア的出世主義者にして、国鉄労働者の大量解雇と労働運動潰しを行った労働者階級人民の敵。ヘイト集団を天まで持ち上げ賞賛する右翼ファシスト。静岡県民に多大な犠牲を強いてまでリニアを強行しているのは、つまるところこういう人物である。このことだけでも、リニアは直ちに中止されるべきである。

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大阪メトロ「2020経営計画」に意見を求められたので、返信しました

2021-06-01 20:33:28 | 鉄道・公共交通/交通政策
当ブログ管理人は、先日、「大阪市の大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄・バス)は、要員全体の1/5を削減するという大合理化計画を発表しています。ホーム要員(駅勤務)、乗務員の大幅削減を計画しています。アドバイス等いただければ幸いです」と大阪在住の知人から意見を求められた。昨年末に大阪メトログループが公表した「2018-2025年度 中期経営計画(2020年12月改訂版)」のことである。

その人は、大合理化を何とかして止めたいという思いはあるものの、鉄道・公共交通にはまったく詳しくないので、以下の通り返信を送った。ここを読んでいる方にとっては参考になることもあるかもしれないので、私信とはいえ、転載しておきたい。

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大阪メトロの経営計画を読んで、いくつか気づいた点など……

1.経営計画全般について

まず、今後成長の見込めない鉄道(地下鉄)事業の赤字を駅ナカ事業で埋める、としていますが、これはコロナ前までは有効なモデルではあっても、今回のコロナで完全に破たんしました。

「密」がダメというのに、駅ナカでどうやって稼ぐつもりなんでしょうか。

人を密集させてボロ儲けしていく、という経営形態自体が「遅れた新自由主義鉄道経営モデル」です。極度の過密を前提とした、コロナ前でも日本でしか成立し得ない歪な経営モデルでした。

その過密前提、「三密」前提、日本でしか成立していなかった新自由主義経営モデルがコロナで最終的に破たんしているのに、今からそこに突っ込んでいこうというのですから、大阪メトロ当局の時代変化への鈍感さには呆れ返ります。

2.駅のバリアフリー問題について

東京メトロにも同じことが言えるのですが、大阪メトロも駅のバリアフリー化はまったく進んでいません。比較的利用客数の多い駅でも階段だけしかない駅が多く、エレベーターはあってもどこにあるのかわからないケースも少なくありません。

先日、私が東三国駅から地下鉄に乗ったときも「駅がこんな状態では、もし自分が車椅子生活になったらどこへも行けないな」と思ったものです。今でさえそんな状況なのに、駅員も車掌も減らす? むしろ両方とも増やすべきです。

(東京メトロに関しても同じ状況です。こんな状況でオリンピックはともかく、パラリンピックを開こうなんて……たとえコロナがなかったとしても、恥ずかしくて普通なら考えられません。)

3.MaaS(マース)について

MaaSについては、これさえ導入すれば公共交通を覆っている暗雲はすべて消え、バラ色の未来が待っているかのような極端な推進論が横行していますが、これ自体は「鉄道、バス、飛行機などバラバラだった公共交通機関の予約や発券、接近・到着案内などのシステムを一元化して、たとえばスマホアプリ等で手軽に利用できるようにしよう」というだけのものです。

推進派が唱える過大な期待はもちろん、一般市民が抱くわずかばかりの期待すら、おそらく裏切られると思います。

MaaSのような施策は、単純に「安上がりでやってる感だけは出せる」というシロモノに近く、最近の政治・行政の空洞化を象徴しています。たとえ鉄道・バス・飛行機の予約がスマホアプリ1つで簡単にできるようになったとしても、駅に行っても車椅子を抱えてくれる駅員もいない、エレベーターもない、ローカル線はどんどん廃止・減便されるという状況でそれが何の意味を持つでしょうか。

行政が出してくる(いかにも新自由主義者お好みの)安っぽいデジタル化の裏に利用者、安全切り捨てがある、ということを指摘しておきたいと思います。

今、大阪メトロがやるべきことは、エレベーターひとつ満足に整備されていない駅を改修し、交通弱者が弱者にならないですむような「中身の伴った公共交通」にすることです。

MaaSは今、一部学者や自称「交通評論家」「交通ライター」等を巻き込んで推進の動きですが、本質が伴わず無内容であることはいずれ一般市民にも発覚するでしょう。維新としては、それまでに何とかごまかし、逃げ切れればいい、ということなのかもしれません。

4.オンデマンドバスについて

経営計画24ページに大阪シティバスのオンデマンドバス化を示唆するような記述があります。オンデマンドバスもMaaSと並んで新自由主義者が大好きな公共交通形態で、彼らは「呼べばいつでも来てくれるので待ち時間がなくなります」などと吹聴します。しかし、彼らのその宣伝を信じると、とんでもない目に遭います。デマンドバスは「一番来てほしいときには呼んでも来ないバス」なのです。

公共交通は文字通り公共財なので、最大需要に合わせて供給体制を整えなければなりません。たとえば、始発から終点まで1時間かかる路線で、バスの最大定員が50人であるときに、朝夕のラッシュアワーに最大500人の需要が発生するとなると、バスは最低でも1時間に10台必要です。

しかし、ラッシュが終わった昼間に50人の需要しかない場合、10台のうち9台は車庫で遊んでいることになりますが、新自由主義者はこれに「無駄」だと難癖を付けます。「大半の時間、遊んでいるバスの維持費がもったいない」と言い出します。

バス会社はこれに抗しきれず、バスの所有台数を減らします。そのうち「乗客がいないのに空気だけ乗せて走らせるのは無駄。乗客がいるときだけ運行すればいい」と言い出します。そこで「呼べばいつでも来るバス」としてデマンドバス化が始まります。

察しの良い方はここで気づくと思いますが、「乗客がいるときだけ運行するバス」にするためには、いつどこに乗客がいるかを事業者側に知らせるシステムが必要になります。これがMaaSの正体です。つまりMaaSは「スマホアプリ1つで公共交通の予約が全部できます」という宣伝とは裏腹に、事業者が乗客のいる場所を把握するために絶対必要なシステムであり、これが導入されることは公共交通切り捨てへの入口なのです。

呼べばいつでも来てくれるバスなどという夢のようなものは存在しません。無駄を省き、乗客がいるときだけ運行して経費を節減するため、特に過疎化が進む地方や都市周辺部では、減っていく乗客数に合わせて車両所有台数を減らす施策とほとんどの場合、一体になっています。車両台数を減らすと、突発的な需要に合わせた増発は次第に不可能になっていきます。

特に、雨の予報だったのが外れ、出かける予定がなかった人が「天気も良いし、ちょっとバスで出かけようか」となったような場合、「呼べば来てくれる」はずだったデマンドバスは、必要最小限まで車両所有台数を減らしているため増発できず「予約はしてありますか」「いいえ」「では○時までお待ちいただけますか」となるのが容易に想像できます。この段階になってから「呼べばいつでも来ると言っていたくせに騙された!」と言っても手遅れであり、そうなる前に反対すべきです。

デマンドバスとMaaSという「魔法」はいずれ解けるときが来ます。新自由主義者のペテンを信じていると、公共交通はなくなり、地域が丸ごと死にます。今、医療をめぐって大阪で起きているのと同じことが、明日は公共交通でも起きるでしょう。使いたいときにいつでも誰でも使えるのでなければ、それは「公共」の名に値しません。

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【管理人よりお知らせ】浦河町で行われた「日高線の今とこれからを考える」トークイベントの資料をホームページに掲載しました

2021-05-23 21:37:43 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

少し前になりますが、5月8日、北海道浦河町で「日高線の今とこれからを考える」トークイベントが行われました。北海道内に緊急事態宣言が出される直前のギリギリのタイミングで、町内からを中心に、ソーシャルディスタンスを確保しつつ60人ほどが集まりました。このイベントで、当ブログ管理人もパネラーとして、廃線跡の今後の活用法について意見を述べました。

今回のイベントでは、2021年3月31日限りで廃止となった日高線を、観光鉄道(特定目的鉄道)または遊覧鉄道として残す道を探るためのヒントを提供する方針でトークをしました。特に、2020年10月に提案した馬車鉄道運行案について、馬車運行実績のある北海道開拓の村への聴き取りなどを行い、具体的な費用などの見通しを示したことが大きな特徴です。

当日使用したレジュメを安全問題研究会ホームページに掲載しました。馬車鉄道運行には、初期費用として客車製造費100万円の他、運行経費には自前で馬を持たずにレンタルで済ませられれば年間70万円(馬のレンタル費除く)で可能です。これなら持続的に運行できると思います。

静岡県御殿場市で、大正期まで運行されていた馬車鉄道を復元させるためのクラウドファンディングが実施され、目標額の集金に成功しました(参考ページ:「御殿場馬車鉄道の車両復元プロジェクト」御殿場馬車鉄道研究会、参考記事:「馬車鉄道、車両復元へ 御殿場の研究会、観光資源化を模索」(2021年3月2日付静岡新聞))。当研究会は、鉄道事業開設を計画している事業者に事業収支見積書を提出させ、採算見通しが立たなければ鉄道免許を与えない、と規定している「鉄道事業法」を形骸化させるため、全国のローカル鉄道はすべて廃止届を出し、新たに特定目的鉄道(観光専用鉄道)として事業免許を取り直すよう呼びかけることも今後、検討したいと考えています。

特定目的鉄道には事業収支見積書の提出が不要で、採算性は求められていません。「観光鉄道など遊ぶ目的のものは、ある日突然運行不能になっても、公共交通でないため問題が大きくない」としてこのような仕組みになっていると考えられますが、公共交通機関としての鉄道が採算を求められ、遊ぶための観光鉄道が採算性を要求されないというのは、本来は逆であるべきで、日本の鉄道政策が抱える最大の矛盾です。この矛盾を突く形で、当研究会は、日本のローカル鉄道はすべて鉄道事業を「廃止」して特定目的鉄道に切り替えた上で、名目上観光鉄道の形を取りながら、定期運行を行って「事実上の公共交通」にしていったらどうかと考えています。

浦河町でも、日高線の線路さえ残しておけば、いずれ特定目的鉄道として観光鉄道事業を設立後、定期運行して「事実上の公共交通」として復活させるという遠大な計画を練っています。馬車鉄道はそのための第一歩となるものであり、安全問題研究会としては必ず実現させたいと考えています。

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【北海道2区補選】松木謙公候補の事務所に「日本鉄道公団法案」を手交、公約化を依頼しました

2021-04-18 18:47:08 | 鉄道・公共交通/交通政策
アキタフーズからの献金で吉川貴盛元農相が議員辞職したことを受けて、北海道2区の補選が13日に告示された。これに先立つ4月10日、安全問題研究会は札幌市北区にある松木けんこう候補(立憲)の事務所を訪れ、日本鉄道公団法案及び関連資料を直接、事務所関係者に手交。当選したらこの法案の国会提出~成立を松木候補の公約としてほしい、と伝えた。

松木事務所は告示前、事務所開きの準備中とあって本人、秘書はもちろん、関係者も数人だけという状況だったが、コロナで密を避ける上ではかえってよかったと思っている。応対していただいたのは、勝部賢志参院議員の秘書の方。「政治家は選挙が忙しく、政策を勉強する時間がなかなか取れない状況にある」と日本の政治家を取り巻く現状を嘆きつつも「本人に渡し、勉強してもらうようにしたいと思います」との力強い言葉をいただいた。

実は、この秘書は、昨日の記事で報じた「北の鉄路守ろう! 根室本線は北海道の幹線! 災害復旧と存続を求める札幌集会」に参加しており、当研究会の発言も聞いていた方なので、話が早かった。「支援者の方からいろいろなアイデアをいただきますが、政策を実際に法案の形にしてご提案いただくというのは今まで聞いたことがありません。ここまで立派な形の法案に仕上げるのは、議員でもなかなかできないことです」とお墨付きをいただいた。

松木けんこう候補は、衆院議員だった2017年2月9日の衆院予算委員会で、麻生太郎副総理兼財務相から「例の答弁」を引き出したことで知られる。当日の国会会議録から改めて質疑内容を確認してみよう。

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松木議員 先ほど、局長さんからJRの安定基金のお話をお聞きいたしました。具体的に、宮沢喜一元総理が大蔵大臣を務めておられるときの答弁で、繰り返しになるんですけれども、今のマイナス金利時代というのは、多分、宮沢先生というのはすごく頭のいい方だったんですけれども、そうですよね、麻生先生。そうでもなかったですかね。まあまあ、そんなことはないと思う。非常に聡明な方だったと思うんですけれども、その方でもやはり予想できなかったということだと思うんです。

 麻生副総理、この宮沢大蔵大臣の答弁を振り返って、どのような感じに御感想を持たれるか、もしよかったらちょっと。御薫陶を受けられていると思いますので、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 薫陶を受けたことは全くないんですけれども、この話は、国鉄という商売のわかっていない方で、やはり学校秀才が考えるとこういうことになるんだという典型ですよ。

 ちなみに、松木先生、僕は北海道のことを詳しいわけではありませんが、JR九州の全売上高がJR東日本品川駅の一日の売上高と同じ。はい、知っていた人は。ほとんど知りませんよね。JR四国は幾らですかといったら、田町駅と同じなんですよ、売上高が。一日の売り上げだよ。それは勝負になりませんがな、そんなもの。だから、あとのところは大体、推して知るべし、もっと低いと思ってください。

 そこで、商売が成り立って、七分割をして、七分割というのは、貨物も入れて七分割して、これが黒字になるか。なるのは三つで、ほかのところはならないと当時からみんな言っていたんです。鉄道関係者なら例外なく思っていましたよ。分割も反対、みんな突っ込みでやるべきと。分割、分割と言った人は自民党の中にもいたし、野党にもいっぱいいたんですよ、あのころ。経営がわかっていない人がやるとこういうことになるんだなと思って、僕は当時力がなかったので、今だったらとめられたかもしれぬなと。つくづくそう思って当時聞いていた記憶が私はあるんです。
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議員在職中、麻生副総理兼財務相から国鉄の民営化はともかく、7分割は誤りだったと認める答弁を引き出した。これは大きな功績である。安全問題研究会は、この経緯を知っているからこそ、他の誰でもなく松木候補に日本鉄道公団法案を手渡そうと考え、それを実行したのである。このような問題意識を持っている議員なら現在のJRのあり方を変えてくれるかもしれないし、そうあってもらわなければ困るのである。

松木候補は、新型コロナウィルスの感染拡大に右往左往するだけで、何もできず、目先の利権の維持に汲々とするばかりの腐りきった自公政権からの根本的転換を願う人々の期待を背負い、野党共闘候補として立候補している。自民党が失った議席を使って松木さんを国会の場に戻すことが、日本社会を変えるために必要だ。

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「北の鉄路守ろう! 根室本線は北海道の幹線! 災害復旧と存続を求める3.23札幌集会」開催

2021-04-17 19:01:01 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2021年5月号に発表した原稿の一部を掲載しています。)

 「北の鉄路守ろう! 根室本線は北海道の幹線! 災害復旧と存続を求める札幌集会」が3月23日、札幌市内で開催。ソーシャルディスタンスを確保しつつ、81人が全道から集まった。本来であれば昨年3月に開催予定だったがコロナ感染の急拡大で11月に延期、11月も直前に再延期された。この間、路線廃止反対の市民がコロナで動きを取れないでいるうちに、日高本線の廃線が決定(4/1付廃止)するなど、待ったなしの情勢だった。

 ●国の責任認めさせる

 主催団体「根室本線の災害復旧と存続を求める会」(根室本線の会)の平(ひら)良則代表が「2016年の台風災害に便乗した鉄路廃止・バス転換は、国鉄民営化当時の国会決議無視であり許されない」と開会あいさつ。1986年11月、国鉄分割民営化関連8法案の可決成立の際の付帯決議では、JR各社の「輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保」を求めている。

 池本柳次北海道議会議員(民主党・道民連合、元国労中央本部青年部長)は「青函トンネルを介して、本州、四国、九州へと人と物が安全にして大量に正確に運ばれた。日本の経済発展の原動力としての役割を鉄道は果たしてきた。その鉄道を分割民営後は、赤字路線という表現で片っ端から廃止をする。そんな事態を招いた分割民営化は失敗だったと国に認めさせよう」と、国の責任を追及し、国の責任で路線を維持させる地元からの決意を表明した。

 武田泉北海道教育大学札幌校准教授は、「改正」のたびに減便、廃駅、終電繰り上げが繰り返され、不便になっていく北海道内のJRダイヤを告発。わざと列車を不便にして乗客が減るように仕向け、廃線への布石にしようとしていると指摘。公共交通事業者としての責任を放棄するJR北海道を批判した。

 根室本線の会の佐野周二事務局長(元国労帯広闘争団長)は「冬こそ鉄道というイメージがあった。国鉄時代は少々の雪は何とか対応できた。今は安全のためといえば聞こえはいいが、ちょっとの雪ですぐ列車を止めてしまう。除雪要員を確保できていないからだ」と自身の国鉄時代の体験を踏まえ指摘。「根室本線がなくなるのは自分の身体が切られるのと同じ。何としてもオール北海道で鉄路を守りたい」と述べた。

 道内の各政党からは、畠山和也前衆院議員(共産)、浅野隆雄社民党道連幹事長、木山誠二新社会党札幌総支部書記長が連帯のあいさつをした(余談だが、立憲、社民両党の合流に当たって、社民党北海道連は立憲への合流はせず社民として残ることを決めている)。

 ●自治体騙し廃線狙う

 各界からのアピールでは、筆者も安全問題研究会代表として登壇した。「政治家も官僚も国民のための立法作業をしないなら、市民自ら対案を示すことも必要と考え、JRを全国一社に統合し再国有化するための法案を作成、公表した」と再国有化に向けたプランを披露。「日本より一足早く新自由主義時代に入った英国では1970年代に廃線にしたローカル線を復活する動きが出ている。新型コロナで失業した人の雇用の受け皿として廃線を復活させる計画だ」。労働集約型産業である鉄道で新たな雇用を作っていく英国の注目すべき動向を紹介しながら民営化見直しを訴えた。

 夕方の通学時間帯の列車をわざわざ減便にするJR北海道の姿勢に疑問と憤りを抱いた高教組組合員の教師らが調査したところ、廃線が狙われている留萌本線を通学に利用する多くの生徒がいることがわかった。高教組が沿線自治体首長に行った要請で「JRからは鉄道で通学する生徒はいないと聞かされていたので驚いた」と打ち明けられたことを高教組組合員は報告した。道民の生活の足である留萌本線を、沿線自治体にウソをついてまで廃線にしようとしているJR北海道の実態が暴かれた。

 集会は、路線維持を求めるアピールを採択。団結ガンバローで閉じた。

 ●JR支援延長決定

 経営危機のJR北海道、四国、貨物3社に対しては、民主党政権下の2010年に10年限りの経営支援策が決められた。菅政権は、この3月で期限切れの予定だった支援策をさらに10年延長するため国鉄清算事業団債務等処理法の延長法案を今国会に提出。3月26日、全会一致で可決成立した。

 延長法には、従来からの安全投資や観光振興などに加え、北海道・四国両社にとって重荷になっていた青函トンネルや瀬戸大橋の事実上の上下分離(維持管理の国への移管)、債務の株式化による追加出資と債務削減などが盛り込まれた。だが問題の根本原因である分割民営化体制には全く手を触れず、赤字のつど税金を投入するだけの問題先送りに過ぎない。

 集会で発言があったように、鉄道危機は歴代自民党政権が新自由主義政策によってみずから作り出したものだ。危機克服には抜本的な政策見直しが必要だ。


あいさつする畠山和也・前衆院議員


団結ガンバローで廃線阻止の決意を示す参加者

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