教科書訴訟・原告は訴える相手を間違っている





石垣市内の小学生2人と保護者の4人が石垣市と県を相手に、「東京書籍版教科書の無償給付の確認」を求めて行政訴訟を起こした。原告の主張は9月8日の全員協議で東京書籍の教科書が採択されたことを根拠にしている。全員協議で採択されたことを「正しく採択された」という見解を保護者の二人は述べ、全員協議は有効であるから八重山地区には東京書籍の教科書を無償配布するように主張した。

訴えるのは自由であるが、原告は訴える相手を間違っている。全員協議が有効ではないと判断したのは石垣市教育委員会でもなければ県でもない。文科省が9月8日の全員協議は整っていないといい、全員協議は無効であるという決断を下したのだ。育鵬社の教科書を無償配布しないと決断したのも、東京書籍は無償配布しないと決断したのも文科省である。

全員協議が有効であると主張するのなら、全員協議は無効であると判断した文科省を訴えるべきである。玉津教育長は全員協議に賛成しなかったことを文科省に報告したのであって、全員協議が無効であると決断を下したのではない。そもそも全員協議の有効無効を判断する権限を持っているのは文科省であって玉津教育長ではない。
全員協議が有効か否かを決断する権利は石垣市教育委員会にはないのだから原告が石垣市の教育委員会と争うことはできない。教科書を無償給付するのは石垣市教育委員会ではない。文科省だ。東京書籍の教科書を無償給付するようにと石垣市教育委員会に要求することはできるはずがない。東京書籍の教科書を無償給付するように要求する相手は文科省以外にはない。どうして文科省を訴えないのだ。

原告側は「裁判で教育行政の真実を明らかにし、民主主義を問いたい」と述べているが、原告が9月8日の全員協議が正しいと主張するなら、全員協議が正しいか正しくないかが争われるだけであり、8月23日の八重山採択協議会が正しいかどうかを争うことはできないし、玉津教育長を参考人にするのも無理がある。
玉津教育長が全員協議は無効だと主張してもまたは有効だと主張しても文科省の決断には関係がないからだ。

新たに県を被告に加えた理由について「県は東京書籍を採択した竹富町だけに教科書を無償配布しないとする文科省に対し、意義を唱えていない」からと代理人の井口弁護人は説明しているが、呆れた理由である。やっかみで裁判を利用するなんて考えられない。東京書籍を採択した竹富町だけに教科書を無償配布しないと決定したのは文科省であり、文科省を訴えるべきである。文科相を訴えないのは法律をよく知っている文科省に一蹴されるのを恐れているからだろう。

9月8日の全員協議が無効である理由はいくつもある。そのひとつをここで述べたい。政治の世界では軽く流される問題であるが、裁判のように法律を重視する世界では無視できない問題である。

県から指導のためにやってきた狩俣課長は全員協議の中で「ここで話したことは拘束力がありますよ。先ほどの段階で、全体で協議することを確認したので、それを踏まえて、無償措置法13条4項で、そこで決めたことに拘束力がある。答申は拘束力はない。もう一度確認する。この違いは大事だ」と発言している。つまり、全員協議は拘束力があり、全員協議で採択した教科書を三市町は採択しなければならないと念を押したのだ。拘束力が゛ある根拠にしたのが無償措置法13条4項である。
13条4項
 第1項の場合において、採択地区が2以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科用図書については、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない。

実は八重山採択地区協議会は13条4項に従ってつくられた機関である。八重山採択地区協議会と同じ協議会は全国にあり、共通な規約によって運営されている。
13条4項に従って設立した採択協議会で地区の無償給付する教科書を決めた上で、各市町村でそれぞれの教育委員会が地区採択協議会で採択した教科書を採択するようになっている。全国の採択地区協議会では採択地区協議会内で激しいバトルが繰り広げられても最後に採択地区協議会で採択された教科書を各市町村の教育委員会は採択している。それは無償措置法を理解しているからである。
「教育委員会は」と書いてあるのは教育委員会が主導するということであり、全員協議のように全教育委員が集まって協議をするという意味ではない。

無償措置法は国が無償給与する教科書を採択する法律であって、無償措置法そのものに拘束力はない。無償措置法に拘束力を持たすと地方教育行政法で保証している市町村が自由に教科書を選ぶ権利を奪ってしまうからだ。無償措置法に拘束力を持たせば自治権を無償措置法が犯してしまうことになる。憲法の選択の自由に違反してしまうのだ。

だから文科省は竹富町が東京書籍の教科書採択したのを認め、その代わり無償給与する教科書は育鵬社版だから、東京書籍を有償になると説明したのだ。市町村の教育委員会が教科書を選ぶのは自由だ。無償措置法は束縛しない。その代わり無償措置法によって採択した教科書以外は有償になる。

ところが狩俣課長は全員協議には拘束力あると言った。全員協議に拘束力があるのならそれは無償措置法とは違う内容の法律になってしまう。つまり、新しい法率を県の行政がつくったことになる。狩俣課長はその時の思いつきで言ったのではない。全員協議に拘束力があると言ったのは県教育庁の総意だったのだ。だから、狩俣課長の発言はその場限りではなかった。
11月29日に、県教育委員会は9月8の全員協議で東京書籍が採択されたことを根拠にして石垣市、竹富町、与那国町の各教育委員会に東京書籍の冊数を報告するように求める文書を送っている。
狩俣課長が9月8の全員協議「拘束力がある」と発言したのは単なる思い付きではなく計画的だったのだ。東京書籍の教科書の冊数を報告するように要求された石垣市と与那国町は東京書籍版でなく育鵬社の教科書の冊数を報告した。用心のために県だけではなく文科省にも同じ報告をした。県は東京書籍の教科書の冊数を報告しなかった石垣市と与那国町を責めることはしなかった。違法行為であることを自覚していたからだろう。

県が東京書籍の教科書の冊数を報告するように要求したことは県が市町の教科書を決めたことになる。このことは地方教育行政法に違反する行為である。

県の行政機関である教育庁が拘束力のない無償措置法を拘束力があるようにしたのは、法をつくる資格のない行政が法をつくったことになる。無償措置法も教育行政法も国会で成立させたものである。それを地方の行政組織が改変するなんてできるはずがない。
9月8日の全員協議は無償措置法を勝手に改変したことでも成り立たない協議である。屁理屈と思うかも知れないが、これは三権分立の法治国家ではあってはならないことである。

こんなめちゃくちゃな行為ができるとはあきれるばかりである。
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