県議会事務局の米軍基地全面返還したら9155億5千万円経済効果試算の嘘

県議会事務局は米軍基地全面返還したら4兆7191億400万円の経済効果あるという試算をだした。県全体の10パーセントをしめる米軍基地が返還されたら、90パーセントを占める県GDP3兆5,721億円よりもはるかに上回る金額なのだ。それに10パーセントの土地に126万5560人が住むことになる。
こんな馬鹿げた試算を県議会事務局を発表した。ところが県内の学者や知識人は誰ひとりとして県議会事務局の試算の矛盾や間違いを指摘しない。それどころかある大学の準教授は県議会事務局の試算を無批判に受け入れた理論を新聞に発表した。

沖縄にはまともな学者はいないのか。沖縄の学者は学者である前に左系の政治屋なのかといいたくなる。

共産党の国会議員は予算委員会で県議会事務局の試算を発表し、基地経済は沖縄経済の発展を邪魔していると堂々と述べていた。閣僚たちは反論もしないで無視していた。幼稚な経済論を国会で堂々と発表しているのを見て、沖縄県民として私は恥ずかしかった。


「沖縄に内なる民主主義はあるか」

三 県議会事務局の米軍基地全面返還したら9155億5千万円経済効果試算の嘘 
  

2010年9月11日、琉球新報に「全基地返還で年9155億 経済効果2.2倍に」の記事が掲載された。

県議会(高嶺善伸議長)は10日、在沖米軍基地がすべて返還された場合の経済及効果の試算を発表した。全面返還の生産誘発額は年間9155億5千万円。一方で現状の基地が沖縄経済にもたらしている生産誘発額は軍用地料などの基地収入から基地周辺整備費などの国の財政移転、高率補助のかさ上げ分までを含め年間4206億6100万円にとどまる。全面返還されれば経済効果は2・2倍になると試算した。
 基地の経済効果について高率補助のかさ上げ分を含んだ試算は初めて。嘉手納以北の基地返還と周辺海域の漁業操業制限を解除した場合の経済波及効果の試算も初。高嶺議長は「他府県からは基地があるため国からの財政移転が相当あると思われているが、実際には基地あるがゆえの逸失利益が相当大きい。国にも振興策の中で検討するよう求める」と述べた。
 雇用面も好影響が生まれ、現状の基地関連の2・7倍となる9万4435人の雇用が生まれるとした。
 基地がもたらす効果は高率補助のかさ上げ分(2008年度実績)以外は03~07年度の5年の平均値。軍用地料や基地内工事などの直接の投下額は3255億8400万円とした。
 全面返還され跡地利用された場合の生産誘発額は総額年間4兆7191億400万円だが、県内の他地域からの需要移転(パイの奪い合い)などの影響を差し引いた割合は総額の19・4%と推計し、全面返還効果を算出した。

〈新報解説〉かさ上げ分算入が特徴 振興策の議論焦点に

 県議会がまとめた基地の経済効果試算は基地収入以外に沖縄振興特別措置法に基づく高率補助のかさ上げ分を算入したのが特徴だ。
 高率補助は本来、戦後、日本の施政権から切り離されて生じた格差の是正が目的。基地とのリンクではないとされてきた。しかし今試算であえてかさ上げ分を加えたのは「沖縄は基地のおかげで国からの予算が潤沢だという誤解が国にも他府県にもある」(高嶺善伸県議会議長)との思いからだ。
 同試算では、返還後の跡地利用のインフラ整備や建築投資などは「期間や投資額が予測困難」として含めていない。返還後、他地域からの需要移転も那覇新都心や北谷の事例から単純合計の19・4%と厳しく推計している。現状の経済効果はかさ上げ分などを盛り込んで多めに、全面返還の推計値は少なく見積もっても経済波及効果は2・2倍の格差が生じる。今後は基地あるがゆえの逸失利益を新たな振興策の議論にどう乗せていくかが焦点だ。ただし同試算は県が条件設定の難しさを理由に難色を示し、議会事務局が代わって算定した。基地が経済発展の阻害要因になっていることを内外に認識させるためにも、県の積極姿勢が望まれる。(島洋子)

県議会事務局が9155億5千万円の試算結果を発表

 県議会事務局(高嶺善伸議長)は、もし、米軍基地がすべて返還された場合の経済効果は年間4兆7191億400万円であると具体的な数値の試算を出した。試算の内訳は嘉手納基地の以南では9109億6900万円であり、嘉手納基地の以北の経済効果は3兆7350万円、100ヘクタール以下の小規模面積施設730億9400万円と試算した。合計すると4兆7191億400万円の経済効果になるという。しかし、現時点の県内経済規模で実現可能な経済効果は、全部返還した効果の19・4%にとどまるとして、年間9155億5千万円の経済効果に上るとの修正試算結果を県議会事務局は発表した。米軍基地から現在生じている経済効果の2・2倍に当たるという。

雇用効果は9万4435人
 
 県議会事務局は雇用効果も試算している。県議会事務局によれば、米軍基地があるために生じる雇用効果3万4541人に対し、全部の米軍基地が返還された場合の雇用誘発者数は48万6754人になるという。平成24年2月の県全体の就業者数は60万8千人である。10%の土地の米軍基地が返還されると雇用誘発者数が48万6754人にもなるというのは驚異的である。
県議会事務局は実現可能な雇用効果(19・4%)は米軍基地があるがゆえの効果より2・7倍に当たる9万4435人であるという。沖縄県の完全失業率は7・5%であり、完全失業者数は5万人である。基地が全部返還された時の雇用効果9万4435人は、米軍基地関連の雇用効果3万4541人と完全失業者5万人を合計した8万4541人を上回っている。基地関連雇用者と完全失業者すべて雇用しても、9894人の労働者不足になる。失業率ゼロどころか、県外から9894人の労働者を募集しなければならなくなる。ものすごい雇用効果である。

 それにしても、奄美大島、八重山、宮古島には米軍基地はないが、米軍基地のある沖縄本島に比べて経済は発展していない(嘉手納基地以南の人口密度は東京都並みである)。米軍基地がないほうが経済は発展するという法則は沖縄本島だけにあり、奄美大島、八重山、宮古島にはこの経済法則はないのだろうか。

高嶺善伸県議会長は、県議会事務局の試算で基地が全部返還した時の経済効果が年間9155億5千万円に上るとの試算結果を根拠にして、復帰後1972年~2011年の間に沖縄に投じられた国の予算(9・9兆円)の少なさを指摘し、
「振興策について政府内からは『沖縄を甘やかしてはいけない』という議論があるが、試算を見れば39年間で9・9兆円とは、支援策としてあまりにもたりないことは明白だ」と述べている。
高嶺善伸県議会長は復帰後、米軍基地が全て撤去されていた時の方が沖縄の経済は数倍も発展していたと主張し、「ポスト振興策の議論が始まる中、米軍基地による経済影響を正確に把握し、沖縄の自立経済を確保するため国の支援を求める根拠としたい」と述べている。

那覇新都心の経済効果
那覇新都心とは、沖縄県那覇市の北部に位置する再開発地区のことである。1987年(昭和62年)5月に全面返還された米軍牧港住宅地区の跡地を造成したもので、高層マンションや大型ショッピングセンターや総合運動公園などが設置されている。
那覇新都心は天久、おもろまち、銘苅、上之屋などに広がり、面積は214㏊である。返還された土地を、県と市の要請を受けて地域振興整備機構(現都市再生機構)が土地区画整理事業を施行し、総事業費約1,110億円(土地区画整理事業費約508億円)をかけて造成した。
那覇新都心は、那覇市中心部のほとんどが那覇空港の制限表面区域内にあるため超高層ビルを建てられないのに対し、那覇空港の制限表面の区域外となっている。また、同市の中心業務地区から2㎞程度で沖縄都市モノレール線のおもろまち駅および古島駅に近接していることもあっていくつか超高層ビルが建設された。2009年(平成21年)時点では沖縄県で最も高い高層ビル(高さ89.8m)が那覇新都心にある。 平成12年から平成18年にかけて、那覇新都心地区の人口が2,577人から14,873人へと大きく増加した。那覇新都心は返還された米軍基地の中で最高の経済効果を生み出している。
県議会事務局は、「那覇新都心地区の経済効果は、プラスの生産誘発額が874億円であるのに対し、マイナスの生産誘発額は55億円と約16分の1であった。こうしたことから、地域経済的観点でみると那覇新都心地区の開発は県経済に大きなプラスである」と述べている。

県議会事務局による駐留軍用地が全て返還された場合における跡地利用等の経済波及及び効果9155億5千万円経済効果の根拠

A 那覇新都心における返還跡地利用事例・駐留軍用地に伴う経済波及効果等検討調査会報告書(平成19年度3月)返還後における立地企業による販売活動等の経済波及効果

生産誘発額  660億3800万円
所得誘発額  181億9600万円
雇用誘発者数 5702人
住民数    1万4873人
雇用誘発者数1人につき住民は2・6人(著者の試算)

B 那覇新都心の経済効果を参考に米軍基地全てが返還された時の県議会事務局による試算

生産誘発額  4兆7191億400万円
所得誘発額  1兆2420億9000万円
雇用誘発者数 48万6754人
住民数    126万5560人(著者の試算)

生産誘発額については、返還予定地の全てが那覇新都心並みに整備されるという前提に立ったものであり、雇用誘発者数については周辺地域における土地利用等を勘案・試算したものであるが、実現に向けては、同額程度の県内経済の拡大、もしくは県内他地域からの需要移転が必要にとなる点に注意が必要である。

C 現時点の県内経済による「全部返還効果」の実現可能性(推計値)は19・4%であると県議会事務局は発表している。

生産誘発額  9155億5000万円
所得誘発額  2409億7700万円
雇用誘発者数 9万4436人
住民数    24万5533人(著者試算)

「全部返還効果」の実現に向けては、必要条件として同額程度の県内経済の拡大が挙げられるが、現実問題として、経済拡大で対応できるのは一定程度分に限られ、それ以外の経済波及効果分については、県内他地域からの需要移転(奪いあい)でまかなうことが想定され、結果として試算を下回るものと考えられる。そこで、現時点の県内経済力で、どの程度実現することが可能なのかを推計し、修正率として加味したと県議会事務局は発表している。

 以上が県議会事務局の試算である。

県議会事務局は米軍基地の全部が返還された場合の試算は「那覇新都心並みに整備・発展する」という前提に立って試算を出した。すると、全ての米軍基地が返還された時の経済効果は4兆7191億400万円になった。この金額は平成16年度の沖縄県のGDP3兆5,721億円よりもはるかに高い。米軍基地返還跡地の住民数は126万5560人となり、県人口140万人に近い人数になる。
米軍基地は沖縄県の面積全体の約10%を占めている。県議会事務局の試算では約10%しか占めていない米軍基地が返還されたら、返還された米軍跡地の経済効果は県の平成16年度のGDP3兆5,721億円よりもはるかに上回る4兆7191億400万円であるというのである。
土地の広さが約10%しかない米軍基地が返還されたら90%を占めている県内の土地よりも(4兆7191億400万円―3兆5,721億円)1兆1470億4000万も高い経済効果が出ると県議会事務局は試算しているのだが、そんなことはとうてい信じられないことである。まるで米軍基地には特別な宝物が埋まっているみたいである。しかし、米軍基地に特別な宝物が埋まっているはずはない。米軍基地の土地は米軍基地以外の土地と同じ普通の土地である。普通の土地でしかないのに約10%の土地が返還されて民間のものになれば4兆7191億400万円もの経済効果があり、平成16年度GDP3兆5,721億円よりもはるかに高いというのはおかしい。県議会事務局の試算のやり方には大きな矛盾があるはずである。

県議会事務局は、米軍返還跡地には雇用誘発者数48万6754人が生ずる試算を出している。那覇新都心では雇用誘発者数の2・6倍が住民数であるから、著者の試算では米軍返還跡地の住民数は126万5560人となる。県の人口の約140万人に近い人数である。信じられない試算である。
もし、126万5560人の県民が10%の米軍基地跡に移り住んだら、現在住んでいる90%の土地には14万人だけの県民が住むことになる。ありえないことである。

県議会事務局は、「県内の他地域からの需要移転(パイの奪い合い)などの影響を差し引いた割合は総額の19・4%と推計し「現時点の県内経済規模で実現可能な経済効果は、全部返還効果の19・4%にとどまる」という理由をつけて実現可能な経済効果は4兆7191億400万円の19・4%の9155億5千万円であるとしている。「現時点の県内経済規模」とはなんのことかは説明していないが、県議会事務局は、試算は4兆7191億400万円になるが現実的には約5分の1の9155億5千万円の経済効果であるという。
なぜ、パイの奪い合いだけで80%以上も経済効果が減るのか疑問であるが、それ以前に、10%を占める米軍基地が返還されれば、なぜ県のGDPをはるかに超える4兆7191億400万円という驚くべき経済効果の試算が出たのか、そして返還地の住民数は126万5560人となるのか、それが試算として正しい方法なのかを納得いく説明が必要であると思うが、県議会事務局は説明していない。

今まで返還された米軍基地は南部、中部、北部の沖縄本島全域にまたがる。全ての米軍基地が返還されたときの経済効果を試算するのならそれぞれの地域で返還された土地の経済効果を参考にして試算した方が正確である。
ところが県議会事務局は那覇新都心の経済効果をほとんどの米軍基地に当てはめたのである。今までに返還されたのは瀬名波、那覇市の小禄地区、北谷町のハンビーや美浜、読谷村の瀬名波通信所、読谷飛行場、トリイステイション南側の渡久地などがあり、恩納村にも返還された土地があるし、恩納村以北の市町村にも国頭村の安波訓練場のように返還された土地はいくつかある。それぞれの地域で返還された土地を参考にして試算を出すことはできる。それなのに県議会事務局はほとんどの米軍基地に那覇新都心の経済効果を当てはめたのである。その結果4兆7191億400万円という驚くべき試算が出た。
県議会事務局は、全ての米軍基地が返還された場合の試算に那覇新都心の経済効果を当てはめることが適切であったのかを説明していない。本当に那覇新都心が適切であったのか疑問である。

県議会事務局の最初の試算の内訳では嘉手納基地の以南では9109億6900万円であり、嘉手納基地の以北の経済効果は3兆7350万円となっている。平成16年度の沖縄県のGDPが3兆5,721億円である。県議会事務局の試算では嘉手納基地以北の経済効果が県のGDPよりも高いのである。そんなことは絶対にありえない。
読谷飛行場跡は190㏊である。那覇新都心が214㏊であるから、土地の広さに大差はない。那覇新都心は高層マンションや大型ショッピングセンターなどがあり経済発展はめざましい。しかし、読谷飛行場跡のほとんどは農地である。建物は読谷村役所、読谷中学校、JAおきなわのファーマーズマーケットがあるだけで、他の土地は総合グラウンド以外は畑である。収入は畑作より軍用地料のほうが高いから、読谷飛行場跡や渡久地の場合は軍用地だったときのほうがはるかに収入は多かったはずである。渡久地の方は一戸建て住宅と畑にツタヤやマックスバリューなどの店舗があるが那覇新都心に比べれば売り上げははるかに低い。
返還された読谷飛行場の経済効果はマイナスであり、那覇新都心の経済効果より遥かに低い。読谷村にはまだ返還されていないトリイステイションや嘉手納弾薬庫がある。読谷飛行場跡や渡久地の経済効果をみれば、トリイステーションや嘉手納弾薬庫の経済効果に那覇新都心の経済効果をあてはめるのはあまりにも無謀であることがわかる。
読谷飛行場跡は農業ができるからある程度の収入が見込める。しかし、金武町の射撃練習場の山々には無数の爆弾が打ち込まれており、返還されても使用するのは不可能である。国頭村のゲリラ訓練場は山の中にあり、返還されても元の山に戻るだけであり、収入はほとんどないだろう。

県議会事務局のキャンプハンセンの経済効果試算

県議会事務局試算結果

生産誘発額  1754億円7100万円
所得誘発額  457億3200万円
雇用誘発者数 1万8841人
住民数    4万8986人(著者試算)

実現可能な経済効果試算(19・4%)

生産誘発額  348億円1737万円
所得誘発額  88億7200万円
雇用誘発者数 3655人
住民数    9503人(著者試算)

射撃訓練場跡は不発弾が多く、返還しても使用できそうにない場所が多いのに、キャンプハンセンの経済効果の試算は1754億7100万円である。雇用誘発者数は1万8841人である。金武町の人口は1万1039人であるので、雇用誘発者数のほうが金武町の人口よりも多い。キャンプハンセン跡に那覇新都心型の街をつくるとなると住民は雇用誘発者数の2・6倍になるから4万8986人となる。1万8841人の金武町に4万8986人も増えることになる。あり得ないことである。
実現可能な住民数は試算の19・4%であるから9503人である。それでも金武町の人口に近い。一体、金武町の人口に近い人たちがどこから移転してくるというのか。隣の宜野座村の人口は5249人である。宜野座村の全住民が移転してもキャンプハンセン跡地の人口を満たすことはできない。

県議会事務局の嘉手納飛行場・弾薬庫の試算

嘉手納飛行場・弾薬庫の全面積は4698㏊であり、都市的利用面積は3190㏊である。那覇新都心214㏊のおよそ15倍の広さである。

県議会事務局試算

生産誘発額  2兆6850億1500万円
所得誘発額  7018億200万円
雇用者誘発数 28万8134人
住民数    74万4914人(著者試算)

実現可能な経済効果試算(19・4%)

生産誘発額  5208億9291万円
所得誘発額  136億1530万円
雇用者誘発数 5万5898人
住民数    14万5334人(著者試算)

読谷村の人口   4万0760人
旧具志川市の人口 6万8864人
旧石川市の人口  2万3453人 
北谷町の人口   2万7696人
嘉手納町の人口  1万3770人
沖縄市の人口   13万1597人 面積4900㏊

県議会事務局の嘉手納飛行場・弾薬庫の返還跡地の経済効果の試算は2兆6850億1500万円である。返還跡地には74万4914人が住むという試算になる。あまりにもひどい試算である。

実現可能な生産誘発額は5208億9291万円である。その金額でも大きすぎる。
沖縄市の生産誘発額は1659億9900万円である。嘉手納飛行場・弾薬庫跡地の生産誘発額は沖縄市の3倍以上である。沖縄市の面積は4900㏊あり、嘉手納飛行場・弾薬庫よりも広い。それなのに嘉手納飛行場・弾薬庫跡地の生産誘発額が3倍以上というのはありえないことである。

実現可能な住民数は14万5334人である。沖縄市の人口より多い。読谷村の人口4万0760人、旧具志川市の人口6万8864人、旧石川市の人口 2万3453人、北谷町2万7696人、嘉手納町の人口1万3770人である。嘉手納飛行場・弾薬庫跡地に沖縄市、嘉手納町、北谷町、読谷村から嘉手納飛行場・弾薬庫跡に住民が移転すると沖縄市、嘉手納町、北谷町、読谷村はゴーストタウンになる。沖縄市、嘉手納町、北谷町、読谷村の生産誘発額はがた落ちになるのは目に見えている。

嘉手納基地以北の米軍基地が変換された場合における跡地利用の経済波及効果試算
 
土地数値は、施設面積100㏊を超える北部訓練場、伊江島補助飛行場、キャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫、キャンプ・ハンセン、嘉手納飛行場、嘉手納弾薬庫地区、キャンプ・コートニー、トリイ通信施設、陸軍貯油施設、ホワイトビーチ地区、キャンプ瑞慶覧(未返還分)

県議会事務局試算結果

生産誘発額  3兆7350億4200万円
所得誘発額  9732億5000万円
雇用誘発者数 40万1017人
住民数    104万2644人

実現可能な経済効果試算(19・4%)

生産誘発額  7245億9815万円
所得誘発額  1888億1050万円
雇用誘発者数 7万7797人
住民数    20万2272人

嘉手納飛行場以北は那覇市のような人口密集地ではない。むしろ仕事がなくて過疎化が進んでいる。経済力は那覇市に比べて非常に低い。それなのに県議会事務局は嘉手納飛行場以北の経済効果の試算を出すのに那覇新都心の経済を当てはめた。経済効果は3兆7350万円という超破格な試算が出た。信じられない試算である。住民数も104万2644人である。嘉手納飛行場以南のほとんどの人が以北に移住することになる。 
あまりにも破格な金額であり住民数である。県議会事務局は「現時点の県内経済規模で実現可能な経済効果は、全部返還効果の19・4%にとどまる」という理由づけをしている。しかし、たとえ、19・4%にとどまるとしても嘉手納飛行場以北の経済効果は7245億9815万円となっている。実は、この金額でさえも兆破格なのである。
2010年の県の農業生産額は耕種554億円、畜産が370億円で合計924億円である。観光収入は約4070億円である。農業と観光収入を合計すると4994億円である。県議会事務局が試算した嘉手納飛行場以北の経済効果は7245、9億円であるが、その金額は県全体の農業と観光収入の約1・5倍である。
嘉手納飛行場以北の米軍基地が返還された場合、農業と観光収入の合計の約1・5倍の経済効果があるとは考えられない。嘉手納飛行場以北は山が多く、軍用地の多くは山間部である。返還されても高層マンションどころか畑に転用することもできない場所が多くある。県の耕種収入が554億円であるのに対し、軍用地料が932億円であるのを考慮すると北部の経済効果は大きなマイナスの試算が出ると推測できる。
過疎化が進んでいる恩納村以北は米軍基地以外にも広大な未使用の空き地がある。空き地と米軍基地は隣接していて、米軍基地だけが経済発展に最適な場所というわけではない。米軍基地と空き地は経済発展する条件は同じである。それなのに米軍基地が返還されたら農業と観光収入を合計した4994億円よりもはるかに高い7245億9815万円の経済効果があると県議会事務局は試算している。
嘉手納飛行場以北は7245億9815万円の経済効果であるとする県議会事務局の試算は信じることができない。嘉手納以北は7245億9815万円どころかマイナスの経済効果であるだろう。

県議会事務局の超破格な試算の原因

県議会事務局は米軍基地が返還した時の経済効果を4兆7191億400万円という県のGDPを遥かに超える試算を出した。なぜ、那覇新都心の経済効果をあてはめたらこのような破格な試算が出たのだろうか。
原因は、那覇新都心が県内トップクラスの人口密集地であり、那覇新都心の周囲も東京都並みの人口密集地であることである。那覇新都心は返還された米軍基地の中でも群を抜いた経済発展をしている。県内でトップの経済発展をした那覇新都心の経済効果をすべての米軍基地返還経済効果の基準にしたために4兆7191億400万円という超破格な試算が出たのである。県議会事務局が実現可能と主張する試算の19・4%でも超破格な試算であり非現実的な試算である。県議会事務局が那覇新都心を米軍基地返還地経済効果の基準にしたことは根本的に間違っている。

那覇新都心経済の本質

 基地経済と那覇新都心の経済は性質が違う。県議会事務局は那覇新都心の経済発展は県経済に大いに貢献していると述べているが、それは大きな勘違いである。基地経済は県経済に貢献するが、那覇新都心の経済は県経済にほとんど貢献しない。そう、那覇新都心の経済は県経済への貢献度はゼロに近いのである。

 那覇新都心の土地利用構成は、商業・業務地・沿道型商業地、中高層住宅地、低層住宅地、公共施設用地、道路、公園・緑地である。

那覇新都心には農業をやる畑地はないから那覇新都心では農業生産をやらない。那覇新都心には工業用地もないから那覇新都心には工場がない。だから製品を製造することはしない。那覇新都心の経済は農業生産、工業生産はゼロである。ショッピングセンター、スーパー、家電販売店、飲食店などのサービス業の売り上げが那覇新都心の経済の大半を占める。那覇新都心は生産をしない広大な消費地である。

 那覇新都心が軍用地の時は沖縄人の住人はゼロであった。軍用地が返還され、区画整理をした後にマンションやアパートが建ち住民がどんどん増えた。那覇新都心の経済を成長させたのは那覇新都心の新しい住民である。那覇新都心の高層マンションやアパートや住宅に住むようになった住民は家賃や電気料、ガス料金を払う。そして、生活のために消化する商品を那覇新都心のスーパーや電化製品店などで買う。美容院、病院、飲食店でお金を使う。
那覇新都心の近くにはモノレールも走っている。那覇新都心は国道58号線沿いにあり、交通が便利だから那覇新都心以外に住んでいる人たちも那覇新都心で買い物をしたり食事をしたりする。
住民がゼロだった那覇新都心の人口はどんどん増え、人口密集地となり経済は目覚しく発展した。
那覇新都心の経済発展の原動力となっている住民はどこからやってきたのだろうか。那覇市内から移転した人もいるだろう。那覇市内で仕事をしていながら宜野湾市に住んでいた人が会社が近い理由で那覇新都心に移転したケースもあるだろう。人それぞれの理由で那覇市内の人たちや那覇市外の人たちが那覇新都心に移転した。
那覇新都心の人口が2万人になった時、県の人口は2万人増加しただろうか。那覇新都心に移転してきた人のほとんどは県内に住んでいた人たちであるから県の人口の増加はない。那覇新都心の人口増は那覇市の人口増には影響を与えるだろうが県の人口増加にはほとんど影響がない。

経済も人口と同じように考えることができる。
西原町に住んでいたAさんは西原町で買い物をしていたが、那覇新都心に移り住むと那覇新都心で買い物をするようになる。久茂地に住んでいたBさんが那覇新都心に移転したら那覇新都心で買い物をするようになる。那覇新都心に2万人の人が移転してきたとすると、県内のどこかで買い物をしていた2万人の人たちは那覇新都心で買い物をするようになる。那覇新都心は売り上げが上昇するが、2万人が以前に住んでいたそれぞれの場所は那覇新都心の売り上げが伸びた分だけ落ちることになる。
那覇新都心以外に住んでいる人が那覇新都心で買い物をするケースもある。それも同様に那覇新都心以外で買い物をしていたのが那覇新都心で買い物をするようになっただけであり、那覇新都心の売り上げが伸びた分だけ別の場所の売り上げが落ちる。
那覇新都心の売り上げが伸びるということは同時に別の場所の売り上げが落ちるということであるから、県全体から見れば経済効果はプラスマイナスゼロである。
那覇新都心の新しい住民のほとんどは沖縄県内に住んでいた人たちである。那覇新都心の売り上げが伸びたからといって、彼らは県内に住んでいたのだから県全体の売り上げが伸びたわけではない。
県全体から見れば那覇新都心の経済効果はプラスマイナスゼロであり、那覇新都心の経済発展は県経済には全然貢献していない。

県議会事務局は那覇新都心地区の使用収益開始後15年目(平成25年)における、地区内に立地する商業・サービス業の経済活動規模は、売上高1918億円にまで拡大すると推計している。
 しかし、那覇新都心の売り上げが1918億円になるということは、県内の那覇新都心以外の場所では売り上げが1918億円減るということであり県全体の売り上げは変わらない。
沖縄県知事公室基地対策課は「駐留軍用地跡地利用に伴う経済波及効果等」で
「事例3地区のうち、那覇新都心地区の経済効果は以下のとおり。
プラスの生産誘発額が(活動+整備)の874億円であるのに対し、マイナスの生産誘発額は55億円と約16分の1であった。こうしたことから、地域経済的観点でみると那覇新都心地区の開発は県経済に大きなプラス」と発表している。県議会事務局は那覇新都心地区の経済効果をそのまま県全体の経済効果としている。しかし、説明した通り那覇新都心地区の経済効果は県経済にはプラスマイナスゼロである。とすれば、55億円は日本政府やアメリカ政府から米軍基地時代の那覇新都心の地主や働いていた人たちに流入していたお金であったのだから、本当は那覇新都心が県に与える影響は55億円のマイナスなのである。
那覇新都心の経済効果は、県全体から見ればゼロの経済効果であるから、那覇新都心の経済効果を全ての米軍基地が返還された場合の経済効果に当てはめるとすれば、本当は県経済にとっては9155億5千万円のプラスではなく、4206億6100万円のマイナスになることになる。莫大なマイナスの経済効果である。

基地経済と那覇新都心経済の違い

平成二十二年に発表した沖縄県企画部の統計によると、平成二十年度(2008年)の軍雇用員の所得は520億円である。軍雇用員が給料をもらった時、日本政府から県内に520億円のお金が入ってくることになる。軍用地料は783億である。軍用地料783億円が地主に払われた時、日本政府から県内に783億円のお金が入ったことになる。流入してきた軍雇用員の所得520億円、軍用地料783億円は県内で流通して、県のGDPを流入金額のおよそ2倍の2606億円押し上げる。
那覇新都心で県外から移入・輸入された商品が874億分売れたとすると、もし商品の原価が60%であるとするなら約524億円のお金が県外に出ていくことになる。残りの350億円は県内で再び流通する。
基地経済は日米政府から県内にお金が入ってくる経済であり、那覇新都心の経済は県外へお金が出ていく経済である。

県の移(輸)出入における経済

 私たちの家には冷蔵庫、テレビ、クーラー、パソコンなどの電化製品がある。これらの電化製品は県内で製造したものではない。県外で製造されて県内に入ってきた商品である。商品が県内に入ってきて私たちが買うということは、商品と引き換えに商品の原価と等価のお金が県外に出ていくことになる。
 電化製品だけではなく食料品や車などさまざまな商品が県外から県内に入ってくる。同時に商品の原価と等価のお金が県外に出ていく。

平成二十二年に発表した沖縄県企画部の統計によると、平成二十年度(2008年)の県の移入・輸入は、

移(輸)入      1兆4012億5200万円
商品         1兆3427億9300万円
原油          1507億1900万円

である。平成二十年は県外から1兆4012億5200万円分の商品と原油が県内に入ってきた。それらの輸入・移入商品が私たちの生活を支えている。1兆4012億5200万円分の商品と原油が入ってくるということは同時に1兆4012億5200万円のお金が県外に出て行くことになる。
お金は天から降っては来ない。地から湧いても来ない。1兆4012億5200万円のお金が県外に出て行ったということは県外からそれだけのお金が入って来なければならない。

 県外から県内にお金が入ってくるお金には基地経済以外に移出、輸出があり、観光収入があり、政府からの交付金がある。

県外から入ってくるお金

A 移(輸)出         3943億0500万円

B 観光収入          4298億8200万円
 
C 米軍基地からの要素所得  1397億4500万円
軍雇用者所得         520億3500万円
軍用地料           783億7500万円
米軍等への財・サービス提供   686億5100万円

D 交付金          2574億6100万円


沖縄のリアルな第一次・第二次産業の経済力

第一次・第二次産業の移(輸)出額は3943億0500万円である。一方県外からの移(輸)入は1兆4012億5200万円である。
移(輸)出と移(輸)入の差は、
 
1兆3427億9300万円―3933億5300万円
=計9494億4400万円

マイナス9494億4400万円ある。移(輸)出と移(輸)入の差は大きく、移(輸)入金額は移(輸)出金額の約3・4倍である。沖縄の一次二次産業は非常に弱いことを示している。
県の移(輸)出入の赤字は9494億4400万円であるから、もし、沖縄の県外からの収入が移出・輸出だけだとすると赤字額の9494億4400万円の商品を私たちは買うことができないことになる。実に70パーセントの移入・輸入製品が私たちの生活から消えることになる。それが沖縄の第一次二次産業のリアルな経済力である。私たちの生活から70パーセントの製品が消えれば私たちは戦前の生活レベルに戻ることになる。恐らく沖縄県の人口は半減し、ソテツ地獄を生きていた琉球王朝時代の農民生活のレベルになるだろう。
 沖縄の土地は農業に向いていないし、沖縄には石油や鉄鋼などの資源が埋蔵しているわけでもない。沖縄は元々豊かになれる自然環境ではない。琉球王朝時代から戦前まで沖縄の民は貧しかった。

観光収入で補填してもまだ赤字

県外からお金が入るケースには製品の移(輸)出以外に観光収入がある。観光収入は県外からお金が入るので移(輸)出入の赤字を補填することができる。観光収入は4298億8200万円である。
移(輸)出入の赤字から観光収入を引くと、

9494億4400―4298億8200万円
=5195億5800万円

観光収入で移(輸)出入の赤字を補填しても県の赤字は計5195億5800万円である。移(輸)出と観光収入が沖縄の産業であり、沖縄の産業は毎年5195億5800万円くらいの貿易赤字を出している。観光収入を合わせても移入・輸入の63%しかない。もし、県外からの収入が第一次・二次産業製品の移出・輸出、観光産業だけであるとすると、私たちの生活から37%の移入・輸入製品が消えることになる。
私たちはこの現実を直視するべきである。沖縄の産業は未熟であり、5195億5800万円という莫大な赤字を生み出しているのだ。産業を発展させて赤字を縮小させていくのが沖縄経済の重要な課題である。

 この赤字は那覇新都心の経済が補填することはできない。観光収入は県外から県内にお金が入ってくるが、那覇新都心で2000億円の売り上げがあったとしても、商品の原価が60%であれば1200億円ものお金が県外に流出するのが那覇新都心の経済である。

 やんばるでしいたけ栽培が始まった。大量生産する計画だという。県内で売られているしいたけの99パーセント以上が県外からの移(輸)入品である。やんばるのしいたけの生産が増し、県内の半分の売り上げに達したら、県外からの移(輸)入を50パーセント減らすことになる。それは移(輸)出に匹敵するものであり、県全体の経済発展に寄与することになる。大量に生産をして移(輸)出するようになればますます県経済の発展に寄与する。金額は小さくても、このようなベンチャー企業を多く輩出することが沖縄の自立経済を促進することになる。

基地経済と交付金の沖縄経済への貢献

観光収入で補填しても、まだ5195億5800万円の赤字である。県外から入ってくるお金には第一次・二次産業製品の移出・輸出、観光収入の他に米軍基地関連の収入と政府からの交付金がある。

米軍基地からの要素所得  1397億4500万円
軍雇用者所得        520億3500万円
軍用地料          783億7500万円
米軍等への財・サービス提供 686億5100万円

基地関係総収入 3388億0600万円

3388億0600万円―5195億5800万円
=マイナス1807億5200万円

基地関係総収入を補填しても1807億5200万円の赤字である。最後に県に入ってくるお金として政府からの交付金が2574億6100万円ある。

2574億6100万円―1807億5200万円
=767億0900万円

交付金を補填して、やっと767億0900万円のプラスになる。

移(輸)出    3943億0500万円

観光収入    4298億8200万円
基地関係総収入 3388億0600万円
交付金(純)   2574億6100万円

移(輸)出が3933億5300万円であるにも拘わらず移(輸)入が1兆3427億9300万円と計9494億4400万円の貿易赤字が出せるのは、観光収入、基地関係総収入、交付金(純)が1兆0261億4900万円あるからである。観光収入、基地関係総収入、交付金(純)の三大収入が沖縄経済を大きく支えている。

 (注)観光産業はホテルの内装や交通の車や燃料、観光客が買う商品などには県外から仕入れたものが多いからそれらの原価は県外に流出する。それに本土資本であれば収益が本土に流れる。観光収入の最低3割くらいのお金は県外に出ていくと考えられる。4298億8200万円は7割(3009億1740万円)程度が移(輸)入の補填になるのではないかと思われる。交付金も建設工事の多くが本土資本に入札される。利益の多くは本土企業に流れる。交付金の中から本土に流出するお金がかなりあるだろう。しかし、軍雇用員の給料は全部を軍雇用員が受け取る。軍用地料も直接軍用地主に支払われる。軍用地主は4万人以上いて軍用地料の平均は100万円以下であるから軍用地料は生活費に使う率が高い。観光収入や交付金に比べて基地関係総収入の県内に流入する率は高いと思われる。

(注)IT企業の2011年度生産額は推計3165億円である。3165億円の中には本土からの収入が多く含まれていると思われる。IT産業も県経済を大きく支えている。
 
 那覇新都心の経済は県外へお金を流出させる経済である。那覇新都心の経済はお金を県内に流入させる基地経済に代わる存在にはなれない。県議会事務局が那覇新都心の経済が基地経済の代わりになると想定したのは根本的に間違っている。
基地経済に代わることができるのは県外からお金を流入させる観光産業や生産・製造業やアジアから仕入れて本土に売る卸業やコールセンターやIT産業のような本土へのサービス業である。
県議会事務局が那覇新都心の経済効果を基地経済の代わりになるとしたのは大きな誤りであり、大きな誤りは経済政策の大きな誤りを生む可能性がある。

高嶺善伸県議会長は、県議会事務局の試算で基地が全部返還した時の経済効果が年間9155億5千万円に上るとの試算結果を根拠にして、復帰後1972年~2011年の間に沖縄に投じられた国の予算(9・9兆円)の少なさを指摘している。
「振興策について政府内からは『沖縄を甘やかしてはいけない』という議論があるが、試算を見れば39年間で9・9兆円とは、支援策としてあまりにもたりないことは明白だ」と述べている。
高嶺善伸県議会長は復帰後、米軍基地が全て撤去されていた時の方が沖縄の経済は数倍も発展していたと主張し、「ポスト振興策の議論が始まる中、米軍基地による経済影響を正確に把握し、沖縄の自立経済を確保するため国の支援を求める根拠としたい」と述べている。
しかし、「基地が全部返還した時の経済効果が年間9155億5千万円に上る」との試算の根拠は那覇新都心の経済効果である。那覇新都心の実質的な県への経済効果はゼロである。高嶺善伸県議会長が国の支援が少ないという根拠は失われる。

 もし、復帰した時に米軍基地が撤去して、政府の援助も少なかったら、沖縄はどうなっていただろうか。高嶺善伸県議会長のいう通り、沖縄は自力で今以上の経済発展をしていただろうか。基地がなくなれば軍用地料はなくなり、軍雇用員も全て解雇されて、アメリカ軍兵士や家族からの収入はゼロになる。復帰のころの沖縄の経済は基地経済以外はさとうきびやパインなどの農業が中心であった。さとうきびやパイン産業は沖縄を貧困にするだけである。沖縄だけの経済力では観光産業が発展するためのホテルや交通やビーチ開発などに投資するお金がなかっただろう。観光産業は今のように発展していなかったにちがいない。恐らく沖縄の人口は半減して沖縄全体が過疎化していた可能性が高い。
沖縄は農業に向いていないし、資源もない。産業が育つには最悪の地である。戦前までの沖縄の経済を見れば一目瞭然である。戦後の沖縄の経済発展は経済力が世界一位のアメリカ政府と世界二位の日本政府の莫大な援助があったからであり、そのお蔭で第一次、二次産業が発展しなくても、第三次産業が発展して140万人の人間が住めるようになったのである。

今までがそうであったように、これからも米軍基地は縮小し続け、いずれはゼロに近くなる。政府の高額交付金もなくなるだろう。沖縄の将来のためには県全体がプラスになる産業を開発し発展させなければならない。
沖縄の将来に責任のある県議会の政治が那覇新都心の経済論を振り回して、基地を返還するだけで県経済は発展していくというたわごとを言っているようでは沖縄の将来は危ういものだ。

沖縄の経済発展に米軍基地が足を引っ張っているというのは嘘

 高嶺善伸県議会長は、
「ポスト振興策の議論が始まる中、米軍基地による経済影響を正確に把握し、沖縄の自立経済を確保するため国の支援を求める根拠としたい。」
と述べているが、自立経済の確保は農業や工業の生産力を高めて県内への供給力を高めるとともに移出・輸出に貢献する企業の成長にある。また、観光とかコールセンターなどの県外からの収入を高める産業の成長が必要である。生産する企業、県外からの収入を高める企業が沖縄の自立経済を高めるのであり、那覇新都心のような消費経済は沖縄自立経済の発展とは関係がない。

沖縄の経済を発展させる工場や会社の立地場所は米軍基地とは関係がない。観光ホテルや観光場所は米軍基地以外の場所に確保されているし、観光客を増加させるには観光開発や観光客の誘致努力にかかっているのであって、米軍基地の存在が邪魔をしているわけではない。
沖縄の工業関係の事業所は減少状態にあり、米軍基地がなければ工場の場所を確保できないで困るという状態ではない。むしろ、すでに工場を立地する場所は確保されている。
国や県は基地経済からの脱却を目指して、埋め立て事業に1880億円を投じて特別自由貿易地域をつくった。ところが特別自由貿易地域への入居社は23%しかなく、広大な空き地が広がっているのだ。入居が少ない原因は沖縄の電気料金、物流コストが高いことである。米軍基地の存在とは関係のない問題である。それに沖縄には製造業の独自の技術がなく、製造業を発展させるには本土の企業を誘致するしか方法がないというのも、沖縄の製造業が脆弱である原因だ。

県議会事務局の米軍基地があるゆえに経済が発展していないという根拠は、米軍基地が返還された小録、ハンビータウン・美浜、那覇新都心のようなサービス業が飛躍的に発展した地域を参考にしているからである。このような消費のためのサービス業は県の実質的な経済成長には関係がない。返還された基地跡に新たな観光客を呼ぶような設備をつくるのなら経済効果があるが、那覇新都心のような街をつくるのなら経済効果はない。
那覇新都心の経済は経済を発展させるのではなく、経済が発展して人口が集中した場所につくられる消費経済である。
 
基地経済に代わる経済は生産業や観光産業のように県外からお金を流入させる企業である。那覇新都心のような販売・サービスの経済は基地経済の代わりにならない。だから県の経済発展に米軍基地があるないは関係ないし、米軍基地があるから沖縄の経済は発展しないというのは嘘である。

基地経済に代わる経済はベンチャー企業

 基地経済に代わる経済は米軍基地とは関係なく沖縄全域で新しい生産を生みだすベンチャー企業である。

農業
 さとうきびやバイン産業から脱皮して、農業の大規模化、専門化、加工技術向上が重要だ。それに本土や国外への販売網の開発ももっと積極にやるべきである。

キク栽培、かぼちゃの大量生産、久米島の冷熱農業・県産シイタケ量産栽培、植物工場レタス、月桃からの化粧水。アグーのブランド化等々。


水産業
加工品の開発。水産業の大規模化、専門化、加工技術向上が重要だ。

マグロのブランド化・日本一を誇る久米島の車エビ・シラヒゲウニ養殖企業、スヌイ、アーサの加工品等々。

工業 
多くのベンチャー企業が誕生している。県は有望なベンチャー企業を強力に援助し、成長を促進するべきである。本土企業の沖縄進出も増加しているが、まだ少ない。もっと誘致運動に力を入れるべきだ。
 
本土からの進出
昭和金型沖縄進出・東京計装県沖縄内進出・電気バス製造等々。

台湾企業とのタイアップ
蛍光灯型LED灯製造

沖縄ベンチャー企業
センダンから薬品・ガソリン車をEV車に・県産カバン全国出荷へ・県産月桃化粧品・小型潜水艦海外販売・水中可視光通信等々。

IT産業は特に有望である
沖縄のIT企業は、216社が県内進出している。2011年度生産額は推計3165億円となり、06年度調査の2252億円に比べ約40%増となった。雇用3万2985人である。10年後は1・8倍を目標としている。

 経済を発展させる第二次・三次産業は工業用地として埋め立てた造成地やすでに存在する空き地や建物で場所は確保できる。米軍基地跡である必要はない。
 問題はベンチャー企業が増えることと成長することである。うるま市の特別自由貿易地域にある金型技術センターを中心とした県内企業など約15社がマイクロEV(電気自動車)を完成させた。沖縄の製造業も発展している。
 観光産業、IT産業、製造業、農業の全体が発展することが大事だ。人間には向き不向きがある。観光業だけ発展しても沖縄の人間のそれぞれの才能を生かすことにはならない。ITに向いている人間はIT企業に就職し、製造業に向いている人間は製造業に就職できるように幅広く産業を育てることが大事だ。
 
 中国や東南アジアの経済成長が沖縄の経済発展のチャンスだ。









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