沖縄に「構造的矛盾」はない

目取真 俊
「復帰」35年目の現実・・・無視される「構造的矛盾」
琉球新法2007年6月2日掲載

目取真氏は新崎清輝氏の「平和憲法の成立せしめたのは沖縄の分離がその前提としてあった。」を引用しているが、平和憲法は日本が再び軍国主義国家にならないための憲法であり、沖縄の分離は日本を警戒しているアメリカが暫くの間様子を見るために日本政府から切り離したのであり、アメリカの日本対応としては必要なことであった。
 軍国主義国家であった日本を日本国憲法を作っただけで信用できるはずはない。もし、日本が軍国主義復活の兆しがあれば日本を軍事力叩くつもりがアメリカにはあった。そのための沖縄の軍事基地化であった。新崎氏の解釈はあまりにも沖縄を中心に考えている。考えすぎである。

 戦後沖縄にアメリカ軍事基地が集中したのは戦争でアメリカ軍は日本本土を攻略する目的で沖縄を占領し、沖縄に軍事力を集中させたからである。日本国憲法と沖縄の軍事基地は関係ない。アメリカが平和憲法を作ったのは日本の軍事力を無力化する目的であったのであり、そのことは有名である。平和憲法が成立過程は沖縄の問題とは関係なく素直に認めるべきである。
 戦争が終わっても日本を見張るためにアメリカが沖縄や日本本土に軍事基地を常駐させるのは当然のことである。新崎氏は日本が真珠湾攻撃をしてアメリカと戦争を仕掛けたことを軽視している。アメリカにとって日本は天皇崇拝の軍国主義社会であり、日本を自由にさせれば再び日本は軍国主義国家なると判断していた。アメリカが予想していた通り、日本の政治家が作成した憲法草案は帝国憲法と似ていたのだ。アメリカが帝国憲法に近い憲法草案を認めないで、現在の憲法の草案を作ったのは有名な話である。

 沖縄を軍事基地化する条件で日本を民主化したというのは新崎氏の思い込みである。アメリカは民主主義国家である。植民地を持つ帝国主義国家ではない。アメリカは日本が民主主義国家になれば次第にアメリカ軍基地は縮小する方針であった。
 しかし、朝鮮戦争、キューバや中国が社会主義国家になったように、アメリカと敵対する社会主義国家との対立がアメリカの日本政策を転換させたのだ。朝鮮戦争が勃発したときにアメリカは沖縄の基地を拡張しようとして昆布の土地闘争が起こっている。朝鮮戦争が起こらなければ沖縄の基地拡大もなかっただろう。そして、ベトナム戦争である。ベトナム戦争は沖縄の軍事基地が重要な働きをした。

 憲法成立と沖縄をめぐる問題を「構造的矛盾」と感じるのは太平洋戦争の過程を無視し、戦後の社会主義国家と資本主義国家の対立を無視して沖縄に対する視点が閉鎖的であるからである。
 事実、ベトナム戦争では沖縄が重要な軍事基地となった。アメリカ側から見ればアジアの扇の要の位置にある沖縄が軍事戦略で最重要な場所だったのである。
 沖縄戦で悲惨な体験をしたことがトラウマになり、絶対平和主義である沖縄の知識人の論理は視野の狭い沖縄限定の論理になり、外の世界状況を見ようとしない。それゆえに外の世界には通用しない論理となってしまう。

 目取真氏は「憲法と沖縄の『構造的矛盾』をどれだけ『本土』に突きつけられるか、今あらためて重要になっている。」と書いているが「構造的矛盾」という考えは沖縄のトラウマから出てきた発想である。「構造的矛盾」は本土と共有できる問題にはなりえない。だから「構造的矛盾」を本土に突きつけることはできないだろう。

 目取真氏が県立博物館の初代館長に前副知事が就任することに反対しているのは賛成である。夕張市の破綻の原因は市長が経営に手を出したからである。沖縄の知識人は第三セクターに県トップが天下ることに厳しく批判するべきであるし第三セクターについて厳しい目を向けるべきである。

 モノレール事業は莫大な県税が使われている。モノレール経営には優れた人物が社長になるべきであるし、天下り人事は止めるべきである。せっかく黒字経営までこぎつけたなんとか物産を天下り人事で県の副知事が社長になってから赤字転落させている。
 ソ連が崩壊したのは官僚が政治家が企業経営したからである。中国は小平が自由主義経済を導入したから崩壊は免れた。企業経営は政治家の特権でやるべきではない。

 県は第三セクターから手を引くべきである。第三セクターへの投資は株式化して民間に売りさばき第三セクターの会社は民間会社に移行していった方がいい。
 沖縄の知識人はアメリカ軍基地の問題に傾注し過ぎている。アメリカ軍基地問題は論理的には難しい問題ではない。同時に沖縄のアメリカ軍基地は国際情勢が関係しているし、アメリカ政府と日本政府の決定で左右する要素が強い。
 第三セクター、教育、公務員問題、地方自治など沖縄の問題は多い。沖縄の知識人は沖縄の問題について広く論議を展開するべきである。

 

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