クリスマス童話を書きました。この童話は、日本クリスチャン・ペンクラブで発行しているニュースレター38号(11/15発行)に掲載された作品を書き直したものです。
ニュースレターでは枚数が限られているので書ききれなかった部分を入れました。2回に分けてアップします。
ザクロのほっぺ
土筆文香
むかしイスラエルにホッサイという名のどろぼうがいました。両ほおに半分に割ったザクロのようなあざがあるので、首にまいた布でかくしていました。
ぬすみがばれてつかまりそうになると、布を取ってニヤリと笑います。あざは真っ赤で、血がはりついているようにみえました。
「わー、化け物だ!」
みた人は、おどろいて腰をぬかします
「わっはっはっはー。オレはいま、人を食って来たたんだぞう」
ホッサイが大声で言うと、たいていの人は逃げ出してしまいます。
夕暮れ時、ホッサイは荷車を引いて荒野を歩いていました。ぬすんだものを売って帰るところです。
やぶの中からひつじの鳴き声がしました。みると一匹のひつじがやぶにひっかかっていました。ホッサイは荷車の中にひつじを投げこみました。
「オレはなんてついているんだ。今夜はひつじなべだ」
ニンマリしながら歩いていると、向こうから女の子がかけてきました。
(また、えものがやってきた。あの子をだまして、人買いに売ろう)
「ひつじのペペ見かけなかった? わたしの大切なひつじなの」
女の子がたずねました。
「さあ、知らないね」
ホッサイはとっさにほおをおおっていた布を取り、車の中のひつじにかぶせましたが、すぐに『しまった』と思いました。あわてて手でほおをかくすと、女の子がいいました。
「かわいいほっぺ!」
「これをみて、こわいとか気持ち悪いとか思わないのか?」
ホッサイがたずねると、女の子は首を横にふってにっこりと笑いました。女の子は8歳でエリサという名前です。
荷車の中からひつじの鳴き声が聞こえました。エリサが荷車をのぞくと、布の下からひつじが顔を出しました。
「あっ、ペペ! おじさんがペペをみつけてくれたのね」
エリサの顔がぱっとかがやきました。
「ま、まあな。この車に乗るといい。家まで送ろう」
ホッサイはできるだけやさしい声を出しました。
「わーい。ありがとう。こんな車に乗ってみたいって前から思ってたの」
エリサは何のうたがいもなく荷車に乗りこむと、ペペをだきしめました。
「お家はどのへんにあるのかい」
「ずっと遠いところ」
「遠いところって?」
「わたしたちはひつじかいなの。ひつじさんの食べる草がいっぱい生えているところをさがしながら旅をしてるの。夜はテントで寝るのよ」
「そうか……」
「ペペがいなくなってさがしているうちに、わたし、まいごになっちゃったんだ。でも、おじさんに会えてよかった」
「丘にのぼれば、家族のいるところがわかるだろう」
夕焼け色の空がだんだん深いあい色に変わってきました。
「暗くなってもわかるの?」
エリサはちょっと不安そうです。
「わかるさ。ひつじかいたちは、夜は火をたくんだろう。目印になる」
ホッサイは荷車を引いて坂道をのぼります。
カタコト カタコト
木でできた車輪が回ります。でこぼこな場所に来ると、とび出してしまいそうにゆれますが、それが楽しくて、エリサはゆれるたびにキャッキャッと声を上げました。
「おじさんって、親切でいい人ね」
(いい人だって! そんなこといわれたの、はじめてだ。オレみたいな者がいい人になれるんだろうか……)
エリサはペペといっしょにねむってしまいました。
つづく
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ザクロのほっぺ
土筆文香
むかしイスラエルにホッサイという名のどろぼうがいました。両ほおに半分に割ったザクロのようなあざがあるので、首にまいた布でかくしていました。
ぬすみがばれてつかまりそうになると、布を取ってニヤリと笑います。あざは真っ赤で、血がはりついているようにみえました。
「わー、化け物だ!」
みた人は、おどろいて腰をぬかします
「わっはっはっはー。オレはいま、人を食って来たたんだぞう」
ホッサイが大声で言うと、たいていの人は逃げ出してしまいます。
夕暮れ時、ホッサイは荷車を引いて荒野を歩いていました。ぬすんだものを売って帰るところです。
やぶの中からひつじの鳴き声がしました。みると一匹のひつじがやぶにひっかかっていました。ホッサイは荷車の中にひつじを投げこみました。
「オレはなんてついているんだ。今夜はひつじなべだ」
ニンマリしながら歩いていると、向こうから女の子がかけてきました。
(また、えものがやってきた。あの子をだまして、人買いに売ろう)
「ひつじのペペ見かけなかった? わたしの大切なひつじなの」
女の子がたずねました。
「さあ、知らないね」
ホッサイはとっさにほおをおおっていた布を取り、車の中のひつじにかぶせましたが、すぐに『しまった』と思いました。あわてて手でほおをかくすと、女の子がいいました。
「かわいいほっぺ!」
「これをみて、こわいとか気持ち悪いとか思わないのか?」
ホッサイがたずねると、女の子は首を横にふってにっこりと笑いました。女の子は8歳でエリサという名前です。
荷車の中からひつじの鳴き声が聞こえました。エリサが荷車をのぞくと、布の下からひつじが顔を出しました。
「あっ、ペペ! おじさんがペペをみつけてくれたのね」
エリサの顔がぱっとかがやきました。
「ま、まあな。この車に乗るといい。家まで送ろう」
ホッサイはできるだけやさしい声を出しました。
「わーい。ありがとう。こんな車に乗ってみたいって前から思ってたの」
エリサは何のうたがいもなく荷車に乗りこむと、ペペをだきしめました。
「お家はどのへんにあるのかい」
「ずっと遠いところ」
「遠いところって?」
「わたしたちはひつじかいなの。ひつじさんの食べる草がいっぱい生えているところをさがしながら旅をしてるの。夜はテントで寝るのよ」
「そうか……」
「ペペがいなくなってさがしているうちに、わたし、まいごになっちゃったんだ。でも、おじさんに会えてよかった」
「丘にのぼれば、家族のいるところがわかるだろう」
夕焼け色の空がだんだん深いあい色に変わってきました。
「暗くなってもわかるの?」
エリサはちょっと不安そうです。
「わかるさ。ひつじかいたちは、夜は火をたくんだろう。目印になる」
ホッサイは荷車を引いて坂道をのぼります。
カタコト カタコト
木でできた車輪が回ります。でこぼこな場所に来ると、とび出してしまいそうにゆれますが、それが楽しくて、エリサはゆれるたびにキャッキャッと声を上げました。
「おじさんって、親切でいい人ね」
(いい人だって! そんなこといわれたの、はじめてだ。オレみたいな者がいい人になれるんだろうか……)
エリサはペペといっしょにねむってしまいました。
つづく
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