厚さ1センチのカーシート

 快適性は度外視し、専らホールド性能だけを追求したレース用のシートは別だけれど、一般的な乗用車用の坐り心地の良いシートを作ろうとすればどうしてもクッションは厚くなるものだと思っていたが、こう云う固定概念はどうやら過去のものになりつつあるようである。

 ホンダが東京モーターショー2009用に製作したコンセプトカー、SKYDECK(スカイデッキ)のシートの厚みは僅か数センチ。この数センチと云うのはアルミ製のシートフレームの厚みであり、実質的なシート部分の厚みはホンの1ミリ。つまり表皮しかないのである。つまり、SKYDECKのシートにはスプリングも「あんこ」もない。

 確かに最近、オフィスチェアの分野では座面・背面共にクッションを持たず、樹脂製のネット一枚というものが出回って来ている。郷秋<Gauche>も会議などの時にお世話になることもあるけれど、坐り心地は特に違和感がないどころか、腰痛持ちの郷秋<Gauche>にはレカロのスポーツシート並みのサポートで、その上通気性もよいので実に快適なのである。

 そんなネット一枚で座面・背面を構成したシートを、ホンダはクルマに持ち込んだのである。これを画期的と云わずして何と云おう。つまりだ、これまで15センチあったシート背面の厚みが2センチになったとすると、前後2席分で26センチを節約できることになるのだ。同じ車内空間を確保しながら全長が26センチ短いクルマを作ることが出来る、あるいはこれまでと同じ全長でリムジンのような車内空間を持ったクルマを作ることが出来るようになると云うことである。

 全長が26センチ短いクルマと云うことは、まずはボディシェルが軽くなる。勿論シート自体も軽量化されるから、エンジンも小さいものでよいことになる。ボディやエンジンが軽くなると云うことはサスペンションやブレーキも小型軽量の物で良くなる。結果として車両重量を大幅に軽量化することが出来る。つまり燃費も良くなる。

 シートフレームをアルミではなく、例えば「天童木工」が得意とするような合成合板を使えば、それ自体の「しなり」によってより快適なシートになるかも知れないし、原材料を国内に求めることが出来るようになるかも知れない。まったくもっていいこと尽くめではないか。

 エンジンをガソリンエンジンやディーゼルエンジンとのハブリッドにする、電気モーターだけにする、バッテリーじゃなくて燃料電池を使うなど、僕たちはエンジン部分での近未来化に目を奪われがちだが、こういう地味な部分の変化についても見逃すべきではないし、こう云うところにまでドラスティックな変化を求めるホンダは、やはりホンダ、さすがだなぁと、郷秋<Gauche>は思う。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、昨日に続いて北鎌倉、東慶寺の秋明菊(しゅうめいぎく)。
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一眼レフの家電化進行中

 ソニーからα550が発表になった(10月22日発売)。ソニーが入門用一眼レフ(SLR)と位置づけるα230、α330、α380に対してα550は「写真表現に対する興味が強い」、「様々な機能を手軽に使いたい」という買替層をターゲットとするのだと云う。つまり中級向けだ。

 価格面でもα230~380の45,000円~75,000円(ボディのみ)に対して、Nikon(ニコン)のD90と同等の95,000円程度が見込まれていると云う。まさに中級クラスであるが、そのα550に人物の顔を検出すると顔にフォーカスポイントが現れ、シャッターボタンを半押しすると合焦する「顔認識」、更には笑顔を検出すると自動的にシャッターが切れる「スマイルシャッター」も備えたと云うから郷秋<Gauche>はびっくり驚いた。

 「顔認識」や「スマイルシャッター」ってのは入門機にこそ相応しいギミックであり、中級機であれば「これで撮れるかな?」くらいの敷居の高さが欲しいものだと郷秋<Gauche>は思うのだ。これではボタンを押しさえすれば程よい具合に解凍しますという電子レンジや、ボタンさえ押せば油汚れも綺麗さっぱいピッカピカに洗い上げますという食洗器と同じではないか。まさにSLRの家電化である。パナソニックしかり、ソニーしかり。家電メーカは作ると一眼レフまで家電化しちゃうものなんだなぁ。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、地味だけれどこの季節には外せない花、萩。北鎌倉、東慶寺にて。
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アロンソに巨額賄賂要求の疑惑

 来季の所属チームについての情報提供を迫ったフランス人記者に対して、フェルナンド・アロンソは記者が提示した金額では納得せず、何とその倍の賄賂(わいろ)を要求したと云う驚愕情報がF1情報通の間を駆け巡っている。詳しくはこちらを参照されたい。
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バトンの逃げ切りか

 2009年F1もシンガポールGPが終わりいよいよ終盤、3年振りに鈴鹿にF1のエグゾーストノートが戻ってくる。

 さて、今年のドライバーズチャンピョンシップはいよいよその候補者が絞られてきた。シンガポールでは調子を取り戻し予選2番手を得たベッテルが上位フィニッシュしていれば望みをつなげたのだが、決勝では4位5ポイントと今ひとつ冴えない結果。一方、シーズン前半の貯金で食いつなぎ、何とか後続を振り切りたいバトンは予選12位から渾身の走りで5位フィニッシュし4ポイントをゲット。

 シンガポールで一番割りを食ったのはバトンとの16ポイントの差を何とか詰めたかったバリチェロチェロだろう。折角ものにした予選5位のポジションもトランスミッション交換による5グリッド降格、更には最後のピットインのタイミングでバトンに先行され万事休す。数ポイントは差を詰めたかったバリチェロの思惑とは裏腹に、僅か1ポイントとは云えその差は逆に広がり残りレースは3レースとなってしまった。

 残り3戦でバトン84ポイント、バリチェロ69ポイント、ベッテル59ポイントということは、ベッテルにも僅かながら可能性が残っているが余り現実的ではないからやはりブラウンGPの二人にしぼられる。残り3戦で15ポイントの差を覆すためには、バリチェロは毎レース、バトンに5ポイント以上の差をつけてフィニッシュしなければならないことになるがバレンシア、スパ、モンツッアの3戦で12ポイント詰め寄った実績はあるが、悲しいかな、あと3ポイント足りないのである。果たしてF1ドライバー最長老の苦労人、バリチェロに女神が微笑むことはあるのか。残りは3戦である。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、今どき日本中で見られるありきたりの景色、稲刈り時の田んぼ。でも、この景色が横浜市内のものだとしたらどうでしょうか。
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F60はナーバス?

 本当に良いマシンはどんなコースでも速い。低速の市街地コースでもモンツッアのような超高速コースでも、セッティング次第で最高のパフォーマンスを発揮することが出来る。まずまず良いマシンは得意なサーキットではセッティング次第で、あるいはドライビング次第で良いパフォーマンスを発揮することが出来る。それ以外のマシンは、まれに良いセッティングが見つかり上手くドライブすることが出来ればまずまずのパフォーマンスを発揮することもある。

 近年では2004年のフェラーリF2004は「本当に良いマシン」の良い例と云えるだろう。全18戦中ミヒャエルが13勝、バリチェロ2勝と圧倒的な強さを誇り、勿論高速コースでも低速コースでも圧倒的に速かった。勿論ドライバーも素晴らしかったし、ロス・ブラウン率いるチームの作戦も素晴らしかったが、F2004が素晴らしいマシンであったことが何よりの勝因であることに間違いはない。

 翻ってF60。シーズンを折り返した第10戦に突然戦闘力を増しその後は運にも助けられたとは云え確実に表彰台をものにしてきたが、シンガポールでは予選13位と云う体たらく。もともとのポテンシャルが低いところに持ってきて、コース毎に異なるセッティングの許容幅が狭いんだろうな。だからコースによる当たり外れが出る。ナーバスなマシンでここ数戦、表彰台圏内を走っているライッコネンを褒めるべきだろう。

 今年前半を圧倒しながらまさかの失速、そしてヨーロッパGPで突如復活したかに見えたブラウンGPも、ここシンガポールではバリチェロが何とか予選5位につけたものの、バトンは中嶋の後ろの12位。モンツッアで大化けしたフォース・インディアも予選16-20位とまったく良いところなし。逆にモンツッアでは苦しんだレッドブルが上位進出するなどまさに「F1戦国時代」の様相であるが、そんな中、超高速モンツッアでもシンガポールの市街地でも速く、いま一番安定した速さを持っているのはマクラーレンのMP4-24ということになるだろうか。

 2009年シーズンの結末は半ば見えそうなところまで来ていながら乱戦が予想されるシンガポールGPは3時間後にスタートである。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、昨日もご覧頂いた「現の証拠」(げんのしょうこ)。昨日は白い花でしたが今日は赤紫の花です。調べてみると赤紫色の花は西日本に多く見られ、白花は東日本に多いとされていますが、恩田の森ではどちらの色も見ることが出来ます。

☆☆☆

 今日、恩田の森で撮影した写真をこちらに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
恩田Now 
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混沌

 F1の話だ。政治も経済も社会も混沌としているが、今日はF1の話だ

混沌(その1):ルノーからINGが去る
 ルノーF1チームのタイトルスポンサーであるINGが、ルノーとの契約を即時終了することを24日に発表した。勿論、2008年シンガポールGPでルノーが故意に事故を起こし、2年間の執行猶予付きではあるが、資格剥奪処分という重い有罪判決を下されたことを受けての決定である。INGを失ったルノーは金曜日に始まったシンガポールGPにおいてING に代えて「Renault」と大書された R29を走らせている。親会社の業績不振にF1での成績低迷が重なり、以前から2009年限りでの撤退がささやかれていたルノーだ。FIAに対しては今後も活動を継続することを伝えたと云われているが、果たしてどうなることやら。混沌。

混沌(その2):Ferrari or McLaren
 フェラーリのエースドライバー、キミ・ライッコネンが逡巡している。らしい。ライッコネンは2010年までフェラーリをドライブする契約を持っているが、2010年、そのシートにはアロンソが坐るとの憶測が飛んでいる。そのシナリオによれば、ライッコネンは2010年の契約に対する保証金40億円をフェラーリから受け取り、自身の歴史の中では最も長い6年間を過ごした古巣マクラーレン移籍するという。契約書は本来、守られるべきことの為に作られるものだが、F1の世界においてはそこに書かれた金額により、そのドライバーがどの程度の速さを持っているのかの証明書にしかならないようである。混沌

混沌(その3):ドライバーズチャンピョンシップの行方
 ブラウンGPは、前戦モンツッアで1-2フィニッシュを決めコンストラクターズポイント146。追うレッドブルは、4戦を残して40.5ポイント差の105.5ポイント。レッドブルに可能性がないわけではないが、コンストラクターズはブラウンGPで決まりだろう。問題はドライバーズチャンピョンシップだ。こちらも前戦の1-2でブラウンGPの二人、バンとバリチェロが圧倒的有利となったかと思ったが、フリープラクティス2までの結果を見る限り、シンガポールではブラウンGPよりもレッドブルの方が優勢な様子が伺える。ああ、混沌。

混沌(その他):中嶋一貴、ピケJr、BMWザウバーの来期は?
 何故かチームは「カズキは成長している」とかばってきたが、日曜日を入れても残り4戦のこの時期になってもいまだ0ポイント。中嶋は来期のウィリアムズ残留を望んでいるようだが、トヨタエンジンと共にさようならか。ピケJr、自身のチーム内でのポジションを考えると断れなかったと弁解しているが、ならば黙り通すべきだったろう。何を云いだすか判らないドライバーを雇おうというチームはない。パパピケにF1チームを作ってもらうんだな。2010年ザウバー・フェラーリとしての参戦を目指すもいまだFIAからのエントリ承認はされていない。多くのドライバーを見つけ育ててきたザウバーには是非F1にとどまってもらいたいものだが・・・。混沌。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、今どきに花を咲かせる「現の証拠」(げんのしょうこ)。昔から下痢止め、胃薬として使われている生薬です。名前の由来は、即効性があり、飲んだその場で効いて来るからとか。「水戸黄門」で、介さんだか角さんだかが、「急なさし込み」で苦しんでいる旅人に飲ませるとすぐに良くなるのがこの「現の証拠」だと、郷秋<Gauche>は信じております。
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ホワイトバランスの話

 Nikon(ニコン)のウェブサイトでこんなページを見つけました

 COOLPIX S640の「製品特徴」を紹介しているページで、オートホワイトバランス機能に「デジタル一眼レフカメラのオートホワイトバランスを応用し、その場の雰囲気まで再現した美しい写真を撮影できます。」として、お洒落なホテル(っぽい)寝室を撮ったもの、落ち着いたオレンジ色がかった写真と白いであろうシーツが白く写っているもの、二枚の写真が並べられていまし。そして二枚目の写真の下に「見た目に近い自然な色再現を実現します。」と書かれています。

 つまり、COOLPIX S640は白いシーツが白く写るようにホワイトバランスを自動的にきちんと調整できる優秀なカメラだと云う事を訴えているわけです。確かに白いものが白く見えるように撮影するのが写真の基本ですが、上で紹介した二枚の写真では、少なくても郷秋<Gauche>は、ニコンが「不適切な色」だと主張するオレンジ色がかった写真の方が雰囲気があって好きだなぁ。欲を云えば、もう少しオレンジの色味を押さえた方がいいとは思うけれど。

 郷秋<Gauche>は頼まれてステージの写真を撮ることがありますが、ホールのステージの照明はタングステン電球を使っていますから、オートホワイトバランスの性能が悪いと上の例で上げた写真と同じようにオレンジ色がかった写真になります。一般的にはこれを避けるために白いものが白く写るように手動でホワイトバランスの調整をすることになりますが、郷秋<Gauche>はあえて少しオレンジの色味が残るように調整します。その方が演奏会の雰囲気を優しく伝えてくれるからです。

 白磁の皿に美しく盛られた料理の写真なら、皿が真っ白に写るようにホワイトバランスを調整することで皿も料理も美しい色で見ていただけるようになりますが、そのテーブルの、あるいはその店全体の雰囲気を見せたいとなると、やはり工夫が必要になってきます。つまり、白いものはあくまでも白くなければならない場合と、その時の雰囲気を大切にした記憶色を表現したい場合とではホワイトバランスの設定が違ってくるということです。

もう少しだけ詳しく:写真を撮るためには必ず光が必要です。その光は晴天の太陽光や夕暮れ時の太陽光であったり、電球の光であったり蛍光灯の光であったりしますが、その光の種類ごとに赤みを帯びていたり青みを帯びていたりします。その光の色味を絶対温度と云う客観的な数字で表したのが色温度(いろおんど)で、K(ケルビン)と云う単位を使います。

 電球の光は3000K程度で赤味を帯びていますが、6000K程度と色温度の高い蛍光灯は青味を帯びてきます。同じ白い紙を見ても、電球の下では赤味(オレンジ色)を帯びて見え、蛍光灯の下では青味を帯びて見えますが、人間の目(脳)は「白いはずの物は白く」見えるようにある程度調整してしまいます。デジタルカメラはこれを正確に記録しようとしますが、人間の目や脳の機能と同じように「白い物を白く」記録できるように調整するのがオートホワイトバランス機能です。

 最近のカメラのオートホワイトバランス機能は強力ですから通常は設定を「オート」にしておけばおいのですが、それでは雰囲気にかける写真になってしまうことが時としてあります。その時にはオートから、電球、蛍光灯、晴天日陰などに手動で切り替えて撮影してみてください。特に夕焼けを美しく撮ろうとした場合などには必須のテクニックとなりますね。撮った写真をモニターですぐに確認できるのが、フィルムのカメラでは絶対に真似のできないデジタルカメラの機能ですから、ホワイトバランスを手動で変えてどんどん撮ってみることをお勧めします。


 今日の一枚は、秋の空と揺れるコスモス。因みにホワイトバランスは「晴天」。郷秋<Gauche>は「オート」はあまり使わず、風景であればほとんどの「晴天」で撮影します。雨の日や太陽の光が直接差し込まない森の中で撮ると多少青味を帯びますが、その方が「それらしい」と思うからです。
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ありの実

 「あり」を漢字で書くとすれば「有り」つまり「有りの実」と云う事になるだろうか。何のことはない、梨のことである。梨は「無し」、「客が無し」に通じることから客商売の家では「有りの実」と呼ぶのだとは、大昔に父から教わったことである。父の実家は小さな田舎旅館であったが、「客が無し」では困ったことになるからだ。

 「有りの実」と同様の縁起担きだが、夜、家の中で見つけた「蜘蛛」は紙の上に乗せて庭に逃がしてやるように云われたものだ。「夜(よ)蜘蛛来た」、「よくも来てくださった」。客が来ないのでは商売上がったりである。「よくも来てくださった」お客様、蜘蛛さんは間違っても叩きつぶしたりせずに庭に放してあげるのである。

 虫の声が大きくなりだすこの時期になると決まって思い出す、父から聞かされた話である。


 今日の一枚は、以前にもご覧頂いた写真の再掲で恐縮だが、梨の花。郷秋<Gauche>のふるさと、福島は果実王国。ミカン以外の果物は何でもござれで、梨は全国第4位の生産量を誇る。ちょうど5月の連休の頃に純白の可憐な花を咲かせる。

 郷秋<Gauche>の父の実家の田舎宿屋(那須屋)についてお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

那須屋
遠い記憶(その一)
遠い記憶(その二)
遠い記憶(その三)
遠い記憶(その四)
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VWがスズキに出資?

 ドイツの自動車業界紙が、VW(フォルクスワーゲン)がスズキに出資すると伝えているようだ。GMの経営破綻(はたん)の影響から自動車業界では世界的な再編が進みつつあるが、その影響がスズキにも及んでいると云う事か。もっともこの報道に対してVWのウィンターコルン社長は「話をしていない」と言明したようだが、「自分はしていない」と云うことなのかも知れない。

 GMは既にスズキから資本を引き上げているが、スズキとGMとの間で進めてられていたハイブリット技術に関する研究は継続しているはず。そのスズキにVWが資本参加となるとGMとの関係は技術分野の提携も白紙に戻ることになるだろうか。

 VWも世界的に見れば小型車中心のメーカーだが、スズキは更に小さなクルマとその生産技術を持っている。僅か660ccのエンジンでほとんど完璧な超小型車(日本独自の規格に基づいた軽自動車のことだ)を成立させ利益を上げているスズキからは得るものが多いとVWが判断をしたと云うことだ。

 郷秋<Gauche>としては、ホンダが大メーカーに成り上がってしまって以降、「俺は、中小企業のおやじ」と公言して憚らない鈴木修社長が率いるスズキを心憎からず思っていただのが、案の定、スイフト、SX4、スプラッシュなど、ヨーロピアンテイストの小型車を次々に登場さており、ますます期待を大きくしていたところである。そのスズキにVWが食指を伸ばすとは、VWも良く見ているものぞ。って、実はインドの市場が欲しいだけだったりして。

 VWがスズキに出資するとの噂が事実であり、更には実現した時にはと云うことだが、スズキには今後も良い意味で世界の中の中小企業であって欲しいし、VWには是非ともそのスズキの良さ、強みを存分に引き出して欲しいと願わずにはいられない。(ポロ+ワゴンR)÷2なクルマが登場したら素敵じゃないか。そうそう、ドイツでも通用する「新カプチーノ」の登場にも大いに期待したいぞ。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、稲刈りの始まった恩田の森、白山谷戸の稲田。見渡す限りに金色に稲穂がなびく壮大な景色など望みようもない恩田の森ですが、その森で毎週撮っていると実に鍛えられます。恩田の森は郷秋<Gauche>の「写真道場」です。

☆☆☆

 昨日、恩田の森で撮影した写真をこちらに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
恩田Now 
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ペーパー辞書って何?

 親愛なるなる神奈川新聞の投書欄、今日の「読者のページ」に「ペーパー辞書の楽しみ」と題する投書が掲載されていた。「ペーパー辞書って何?」と一瞬思ったが、さすがにすぐに判った。電子辞書に対する「ペーパー辞書」であり、つまり、紙に印刷され製本され分厚い本の形をしている、昔ながらの辞書のことなのである。

 自宅の玄関先や居間にあって、設置場所を動かすことができないのが電話であったが、自由に持ち歩くことの出来る電話、携帯電話が登場したことから、携帯電話と区別するために固定電話、家電(いえでん、家にある電話、あるいは家から動かない電話の意味)と云う言葉が生まれた。

 フィルムを入れて撮影するのが当たり前であったカメラ(写真)に、フィルムを使わないカメラ、つまりデジタルカメラ(写真)が登場したことから、デジタルカメラ(通称デジカメ)やデジタル写真と区別するためにフィルムカメラとか銀塩写真(塩化銀の化学反応を利用して画像を固定したことから作られた)という言葉が生まれた。

 古くは(例としても古過ぎるかも知れないが)電灯に対する懐中電灯、ラジオに対する携帯ラジオ、氷を入れて冷やす冷蔵庫に対する電気冷蔵庫など、それまで単に「電灯」「ラジオ」「冷蔵庫」と呼ばれていたものが、持ち歩けるようになったり、電気によって機能を果たすようになるなどその機能が大きく変わった時に、それまでのものと区別するために新しい言葉が生まれてきた。

 そして、ついに、ここに来て、いよいよ、「ペーパー辞書」の登場である。9月17日に掲載した書店はどこへ行くにも書いたけど、いまや辞書だけではなく小説さえも携帯電話やPCで読む時代に突入しており、ホントに、冗談ではなく「ペーパー本(ぼん)」なんて言葉が登場しそうで怖いわけですね。17日に書いたから今日は繰り返さないけれど、なんか、ほんとに、まったく寂しい時代になったものだと、郷秋<Gauche>はつくずく思うわけですよ。
 
P.S. 件の記事の要旨を書くのをすっかり忘れていました。「ペーパー辞書」にはアナログならではの、電子辞書よりも優れた点が沢山ある。電子辞書の良さも認めるが、時間に余裕があるときにはもっとペーパー辞書に親しみ、多くの言葉と思わぬ出会いを重ね、知識を広めて欲しいと云う内容でございました。郷秋<Gauche>に云わせれば、実に真っ当なご意見でございました。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、横浜市指定名木、藪椿の大樹の足元で群れる彼岸花。満開には数日早かったようですが、それでも恩田の森有数の彼岸花群生地の片鱗はお判りいただけるでしょうか。
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ストーブリーグには早すぎるけれど

 ストーブリーグとは、プロスポーツ選手の移籍や契約更新の動きがオフシーズンの冬の間に話題になることから、いつの頃からか本来のリーグ戦(シーズン中)に対比させてストーブリーグと呼ばれるようになったようである。勿論郷秋<Gauche>がストーブリーグと云えばF1についてのことだが、そのF1のドライバー移籍話はどんどん早くなり、ついにはシーズン真っ盛りの夏に行われるようになってしまったことからプールサイドリーグなどと揶揄されるようになた。

 さて、そのストーブリーグには早す過ぎるし、プールサイドリーグには涼しくなり過ぎてしまったシーズン終盤に来てのF1ドライバーの移籍話は、キミ・ライッコネンのフェラーリ離脱の情報で大きく動き出したようである。

 ライッコネンとフェラーリとは2010年まで契約があるはずだが、ライッコネンがマクラーレンに移籍するのだと云う。フェラーリ側は2010年の契約が有効であることを踏まえライッコネンに対して45億円とも云われる保証金を支払との情報からすると、マクラーレンに移籍と云うより、フェラーリからの「放出」に近い状況と思われる。

 ライッコネンが抜けた後のシートには、噂によればフェルナンド・アロンソが坐るのだと云う。フェラーリはそこまでしてアロンソが欲しいということになるわけだが、情熱の赤い跳ね馬に、北国出身の沈着冷静なドライバーは合わなかったと云うことなのだろうか。果たしてフェラーリのこの判断が正しいのか間違っているのかは神のみぞ知ることであるが、少なくともチーム消滅の可能性もあるアロンソにとっては間違いなく最良の選択と云えるだろう。

 ライッコネンがマクラーレンに移籍となると、押し出されるのはライッコネンとは同国人のヘイッキ・コバライネンということになる。コバライネンは2010年のドライバー市場での「イス取りゲーム」を繰り広げることになる訳だ。

 今年のチャンピョンシップにおいてドライバーズ、コンストラクターズ共に最もその頂点に近い位置にいるのがブラウンGP。そのブラウンGPは、給与の大幅カットを受け入れながらドライバーズチャンピョンシップのトップにいるバトンと給与額の面でもめているとの話が聞こえてきている。同時にニコ・ロズベルグがブラウンGP入りとも云われているから、もしロズベルグがブラウンGPのシートに坐ることになった場合にチームから押し出されるのはバトンなのかバリチェロなのか。

 ここしばらくF1パイロットのシートは20席だったが、2010年には13チーム26席に増えることになっている。GP2やF2から進級する者、F3から飛び級しようとする者、ここ1、2年でシートを失った「浪人」たちも6席の争奪戦に加わることだろ。いずれにしてもトップチームのトップドライバーが動くことで玉突き連鎖が始まる。本人たちは大問題だが、ファンにとってはコース上で行われるレースそのものと同様に楽しめる「リーグ」でもある。郷秋<Gauche>も存分に楽しませてもらうことにしょう。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、すみよしの森の柿。木が植えられた頃には、勿論その実を食べるつもりだったのだと思うけれどその後の嗜好の変化、と云うより消費行動の大幅な変化によって食べる人も無いまま冬場の鳥の餌となってしまうのが常となって久しい柿。そうは云っても今でも秋を演出する樹木そして果実であることに変わりはない。
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二玄社がカメラ本に進出

 二玄社と云えば、書道美術愛好者では知らぬ者もいない、押しも押されもせぬその道の代表的な出版社である。二玄社と云えば、世界一等のクルマ月刊誌、Car Graphicと、クルマを文化面から捉えるユニークな月刊Naviを刊行する出版社である。とまあ、一見相反する世界で、どちらもその道の達人、専門家をして唸らせる程の質の高い月刊誌、書籍を同時に刊行する出版社である。

 その二玄社からカメラ本登場となれば買わずにはおられない郷秋<Gauche>であるが、第一作となった「PENTAX K-7 NAVI ― そのカメラ、作品を撮れますか? ―」はパスして、第二作となる「OYLMPUS PEN NAVI ―ペンのある生活を始めませんか? ―」を買ってみた。開いて最初に思ったことは「色校(色校正)しているの?」。最初の数ページ、酷い色合いなのである。でも、どこかで見たような色合い・・・。

 そう、最近流行(はやり)の「女子カメラ」雑誌に特有のちょっと寝ぼけたような色合いなのである。「なるほど」と納得したのは、p.12にある「アートフィルター:デイドリーム」と記された撮影データを見てのこと。

 E-P1の機能を、これまで「コンデジ」しか使ったことのない「女子」でも判る優しい言葉で易しく解説しているかと思えば、E-P1開発チームへのインタービュー記事「高島鎮雄さんに訊く初代ペンとその時代」など、オリジナルPENと新しいPEN、E-P1が登場する時代背景を技術と歴史・文化の両面から解説する構成はMook(本)としてその任を十二分に果たしていると云う事が出来、E-P1に興味をもたれた方にはお勧めできる内容となっている。

 さて、書道とクルマの二玄社が何故カメラ本に進出したかと云えば、実は簡単。前述の高島鎮雄氏がクラシックカーとクラシックカメラ、その両方に精通した研究家そしてコレクターであり、なおかつ二玄社の役員を務めた方なのである。その意味では身内である高島鎮雄氏に語らせる記事に、白々しく「高島鎮雄氏さんに訊く」などというタイトルはいかがなものかとは思う。

 二玄社がカメラ本を出すのは実は今回は初めてではなく、高島鎮雄責任編集の「ドイツのカメラ」と「日本のカメラ」が1993・1999年に刊行されているが、内容は一般向けではなく、今回の「PENTAX K-7 NAVI」と「OYLMPUS PEN NAVI」が実質的な意味ではカメラ本への初チャレンジと言うことが出来るだろう。ただ謎なのが、「PENTAX K-7 NAVI」と「OYLMPUS PEN NAVI」共に「別冊CG」扱いとなっているのに同時に「NAVI extra number」とも標記されている点である。

 それにしても、より一般的なニコンやキヤノンのニューモデルではなく、それらをあえてはずした戦略が当たるや否や。これから、RICOHのKマウントカメラ、NikonのAPS-Cコンパクトなど意欲的かつ面白いカメラが次々に登場する(かもしれない)中で、二玄社のカメラ本が定着するや否や、しばらくはお手並み拝見といきたい。

別冊CG『OLYMPUS PEN』NAVI extra number
二玄社
発行年月日 2009年10月5日(既に販売中)
A4変形版 130頁
1,600円(+税)
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デジタルカメラの原価は3,680円

 またしてもカメラネタです。興味のない方は下の方にある写真だけご覧くださって、どうぞパスしてくださいな。なんだかこの頃すっかり「カメラblog」化した“郷秋<Gauche>の独り言”です(^^;。

 さて、昨日、郷秋<Gauche>の手元に届いた日経ビジネスによれば、デジタルカメラ、具体的に云えば富士フイルムのコンパクトカメラA170(注1)の原価は僅か40ドル(1ドル92円計算で3,680円。以下同様)なのだとさ。

注1:富士フイルムが製造販売するコンパクトカメラはすべてFinePixを名乗っているのかと思っていたが、FinePixを名乗らないカメラがあることに気付いた。国内ではA220(1200万画素、3倍ズーム、15,000円程度)がそれ。A170はA220の廉価版で1000万画素、3倍ズームの輸出専用機のようである。日経ビジネスの記事には「89ドル(8,200円)で販売すれば」の記載があるが、逆輸入物と思われるA170に2GBのSD、保護フィルムをセットにして12,000円で販売しているサイトがあった。

 原価40ドル(3,680円)の内訳だが、件の記事によればメイン基板(画像処理エンジンなどの電子部品部分)が一番高くて8.5ドル(782円)、次いでレンズユニット、液晶パネル、CCDが同価格で各8ドル(736円)、外装2ドル(184円)、その他(組み立てコスト含む)5.5ドル(506円)だそうな。

 製造原価が40ドの物を89ドルで売るのだから、流通・販売コストを差し引いても十分に利益がでるわけだが、開発費はと云えば、どうやら「0円」のようである。この開発費0円こそが低価格カメラを可能にしているわけだ。

 からくりは簡単。富士フイルムは「89ドルで販売できる1000万画素、3倍ズーム、単三乾電池仕様(注2)のカメラ」を企画する。あとはすべて電子機器の設計と製造を専門に行なう「EMSメーカー」と呼ばれる企業に丸投げする。それらの部品を組み立て専門の工場に納品させ、その工場に組み立てを委託するのだろう。こうすることで、89ドルで販売できる富士フイルムブランドのカメラが完成するのである。

注2:単三乾電池仕様と云うのが低価格のポイントの一つになる。専用のリチウムイオンバッテリーは高価で、単品で4000円(販売価格)もするからからカメラ価格のかなりの割合を占めることになるが、動作確認用のマンガン電池なら数十円で済む。

 「富士フイルムブランドのカメラ」と書いたが、これはあくまでも富士フイルムブランドのカメラであって富士フイルムのカメラではないと云う意味である。まったく酷い話だが、廉売されるカメラの多くは例に上げたA170と同様の成り立ちなのだろ。そんなこんなを考えると、その内にUNIQLOブランドやTOPVALUブランドのカメラが登場しそうで怖いぞ。

 しかしだなぁ、委託されるEMSメーカーが日本国内にあるのならばいいけれど、多くは台湾、韓国、シンガポールといって国々の企業だろう。そんなことを続けていると技術も仕事も海外に流出してしまい産業の空洞化がますます加速してしまうんじゃないかと郷秋<Gauche>は心配になってくるけれど、既に完成された技術による生産は海外メーカーに任せ、国内では最新かつ更に高度な製品の設計・製造に注力するということなのだろうか。いずれにせよ、カメラメーカーがカメラの企画会社に変質しないことを願うばかりだ。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、白い彼岸花。正確には、同じ種で白い花を咲かせるのではなく、白花曼珠沙華(シロバナマンジュシャゲ)と云う別種です。赤い花を咲かせる彼岸花と黄色い花を咲かせる鐘馗水仙 (ショウキズイセン)の自然交配種だと云われています。よく見ると彼岸花よりも花弁の幅が広いように思えますがいかがでしょうか。
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ニコンからAPS-Cコンパクト誕生か

 一週間前に、ライカ(Leica)からAPS-Cサイズのイメージセンサー(撮像素子)を使ったコンパクトカメラ、X1が発表になった事を書いた(ライカという選択9/11 )。そのライカのアジア・太平洋地区担当ディレクターのSunil Kaul氏が、新しいニコン(Nikon)のコンパクトカメラにX1と同じソニー製の1200万画素のイメージセンサーが使われるだろうと発言したことが報じられていた。(元ネタはこちら

 ライカのアジア・太平洋地区担当ディレクターがニコンの新製品開発に関する情報を果たしてどの程度知っているのかわからないが、話としては実に興味深いものである。と云うか、郷秋<Gauche>としては大いに期待したい噂であるぞ。

 書かれている事を鵜呑みにすれば、それは「コンパクト・カメラ」だと云うことだから、それはキットレンズ交換ができないタイプだということである。P6000の後継機がAPS-Cだという可能性もなくは無いけれど、Sunil Kaul氏が語ったニコンは、まさしくX1の対抗機種であろうと考えたい。そう考えると、果たしてライカの人間がX1の購入を思い留まらせるような発言をするかと云えば、しないと考えるのが妥当だろう。

 ライカX1の価格は20万円程度と予想されているが、ニコンのAPS-Cコンパクトが現実のものとなったと仮定すれば、いかにイメージセンサーがAPS-Cとは云ってもレンズ交換のできないカメラがD5000レンズキットより高いわけにはいかないだろうから、その価格は10万円以下。つまりライカX1の半分だ。似たようなスペックのカメラ2台、果たして消費者はニコンとライカ、どちらのブランドを選ぶだろうか。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、恩田の森の刈取り目前の稲田と秋の空。首都圏など大都市圏以外にお住まいの方には見慣れた景色かも知れませんが、郷秋<Gauche>の住む横浜でこんな景色を見ることの出来る場所は本当に少なくなっているのです。ホントに貴重な景色なのです。
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書店はどこへ行く

 書店業界売上げ第4位(512億円)の文教堂が同第5位(405億円)のジュンク堂の傘下に入ったらしい。小が大を食らうまさに下克上であるが、文教堂は2期連続の赤字経営となっていたようだから止むを得ないと云うところだろう。文教堂前社長から発行済み株式の20.4%を取得したジュンク堂も今年3月に大日本印刷の子会社になっているから、文教堂は大日本印刷の孫会社と云うことになる。

 ジュンク堂と文教堂の親会社となった大日本印刷は昨年8月には同第2位(969億円)の丸善も子会社化しているから、書店業界2位、4位、5位を傘下に収めていることになる。こう書くと1位と3位が気になるところだが、業界1位は紀伊國屋(1198億円)、同3位が有隣堂(545億円)となっている。果たして大手企業の資本が入っているのかどうかは不明である。

 書店大手3社を傘下に収めた大日本印刷は書籍・雑誌を製造(印刷)する者として、販売会社である3社を傘下に収めたわけであるが、大日本印刷が書店3社をこれからどのようして行くのかにはしばらく注目していきたいところである。消費者としては、目先の利益だけを気にするのではなく、良書を紹介・販売し出版文化に寄与してくることを大いに期待したい。

 さて、文教堂。文教堂は川崎市発祥で今もJR武蔵溝ノ口駅近くに本社・本店を構えている。そのため郷秋<Gauche>の住む横浜や以前住んでいた相模原、両市に隣接する町田市辺りにはたくさん店があり、仕事帰りに利用することの多い文教堂であるが、今年3月にレンタルソフトの「ゲオ」などから資金支援を受けて以降、AV(オーディオ&ビジュアルのことである。為念)レンタルスペースが拡大され、ますます書籍の売り場が狭くなってしまった。

 書店とは云いながら実態は「雑誌・マンガ屋+レンタルAV店」に成り下がってしまった文教堂に対して、郷秋<Gauche>が利用するもう一つ書店、ブックファースト青葉台店は今でも立派な書店である。つまり、雑誌・マンガ屋ではなく、良書ではあるがまぁちょっと、すぐには売れそうにない本までも書棚にきちんと並べている書店である。勿論AVレンタルはしていない。

 書店業界にも構造変化の波は押し寄せている(のだろう)。つまり、本は本屋さんに行って買うものであったのがネットショップで買うのも当たり前になり、オンディマンド出版が始まったり、新刊と古書の併売店が登場したり、紙に文字が印刷されてるのが本であったはずなのに、ネットからその文字情報をダウンロードして読むことが出来るようになったり、先に書いたように大手書店がグループ化されたりである。今どき安穏として続けられる商売など無いのだと云ってしまえばそれ切りだが、本屋も随分と変わらねばならない時代になったものである。

 そんな中にあっても郷秋<Gauche>としては、ゆっくりと味わいたい文章、死ぬまで側において置きたい文章は、紙に印刷され、製本され、その文章に相応しく装丁された「本」に納められていて欲しいし、その本のページをゆっくりと繰りながら読みたいし、いつでも手の届くところに置いておきたいと思うのであるが、こんな細やかな願いでさえ、もはや「古い」と云われてしまうのだろうか。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、すみよしの森の土手に咲く彼岸花(ひがんばな)。彼岸花は郷秋<Gauche>が知るだけでも曼珠沙華(まんじゅしゃげ)、死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、墓花(はかばな)など多くの別名を持っておりその数、数百とも云われている。「死」にまつわる名前が多いのは、地下茎が有毒であることから野犬や鼠に墓を荒らされないように墓地に植えられることが多かったからだと思われる。同様に野鼠に田んぼの土手に穴を開けられ水が抜けないように田の畦にも植えられた。この時期の棚田を彩る彼岸花は、先人の知恵であったのである。
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