書店はどこへ行く

 書店業界売上げ第4位(512億円)の文教堂が同第5位(405億円)のジュンク堂の傘下に入ったらしい。小が大を食らうまさに下克上であるが、文教堂は2期連続の赤字経営となっていたようだから止むを得ないと云うところだろう。文教堂前社長から発行済み株式の20.4%を取得したジュンク堂も今年3月に大日本印刷の子会社になっているから、文教堂は大日本印刷の孫会社と云うことになる。

 ジュンク堂と文教堂の親会社となった大日本印刷は昨年8月には同第2位(969億円)の丸善も子会社化しているから、書店業界2位、4位、5位を傘下に収めていることになる。こう書くと1位と3位が気になるところだが、業界1位は紀伊國屋(1198億円)、同3位が有隣堂(545億円)となっている。果たして大手企業の資本が入っているのかどうかは不明である。

 書店大手3社を傘下に収めた大日本印刷は書籍・雑誌を製造(印刷)する者として、販売会社である3社を傘下に収めたわけであるが、大日本印刷が書店3社をこれからどのようして行くのかにはしばらく注目していきたいところである。消費者としては、目先の利益だけを気にするのではなく、良書を紹介・販売し出版文化に寄与してくることを大いに期待したい。

 さて、文教堂。文教堂は川崎市発祥で今もJR武蔵溝ノ口駅近くに本社・本店を構えている。そのため郷秋<Gauche>の住む横浜や以前住んでいた相模原、両市に隣接する町田市辺りにはたくさん店があり、仕事帰りに利用することの多い文教堂であるが、今年3月にレンタルソフトの「ゲオ」などから資金支援を受けて以降、AV(オーディオ&ビジュアルのことである。為念)レンタルスペースが拡大され、ますます書籍の売り場が狭くなってしまった。

 書店とは云いながら実態は「雑誌・マンガ屋+レンタルAV店」に成り下がってしまった文教堂に対して、郷秋<Gauche>が利用するもう一つ書店、ブックファースト青葉台店は今でも立派な書店である。つまり、雑誌・マンガ屋ではなく、良書ではあるがまぁちょっと、すぐには売れそうにない本までも書棚にきちんと並べている書店である。勿論AVレンタルはしていない。

 書店業界にも構造変化の波は押し寄せている(のだろう)。つまり、本は本屋さんに行って買うものであったのがネットショップで買うのも当たり前になり、オンディマンド出版が始まったり、新刊と古書の併売店が登場したり、紙に文字が印刷されてるのが本であったはずなのに、ネットからその文字情報をダウンロードして読むことが出来るようになったり、先に書いたように大手書店がグループ化されたりである。今どき安穏として続けられる商売など無いのだと云ってしまえばそれ切りだが、本屋も随分と変わらねばならない時代になったものである。

 そんな中にあっても郷秋<Gauche>としては、ゆっくりと味わいたい文章、死ぬまで側において置きたい文章は、紙に印刷され、製本され、その文章に相応しく装丁された「本」に納められていて欲しいし、その本のページをゆっくりと繰りながら読みたいし、いつでも手の届くところに置いておきたいと思うのであるが、こんな細やかな願いでさえ、もはや「古い」と云われてしまうのだろうか。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、すみよしの森の土手に咲く彼岸花(ひがんばな)。彼岸花は郷秋<Gauche>が知るだけでも曼珠沙華(まんじゅしゃげ)、死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、墓花(はかばな)など多くの別名を持っておりその数、数百とも云われている。「死」にまつわる名前が多いのは、地下茎が有毒であることから野犬や鼠に墓を荒らされないように墓地に植えられることが多かったからだと思われる。同様に野鼠に田んぼの土手に穴を開けられ水が抜けないように田の畦にも植えられた。この時期の棚田を彩る彼岸花は、先人の知恵であったのである。
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