Nikon一眼レフ中級機の系譜(第六回・FM3A編)

 1959年のNikon F登場によって始まる一眼レフの時代は1980年に登場したF3によって一つの頂点に達するが、それはMF(マニュアル・フォーカス)一眼レフの終焉の始まりでもあった。1988年にはF3の後継機としてたるフラグシップモデルにAF(オート・フォーカス)機構を導入したF4が登場するが、技術的にはいささか未熟でもありMFレンズで使用されることも多いなど、プロの使用に耐え得るAF一眼レフは1996年のF5の登場まで待つことになる。

 F4、F5登場後もプロと一部の愛好家に根強く支持されたF3だったが、さすがに時代はAFへと大きく動いており、2000年に至りついにF3が引退する。ここでMF一眼レフの歴史がついに閉じられたかに思えたのだが・・・。

 2001年、ニコンから全く新しいMF一眼レフが登場する。系譜的にFM2の流れをくむNikon FM3Aである(ボディに刻印されたネームやカタログ等では「A」の文字は「FM3」の文字より小さく表記されるなど、FM2の後継機であることが主張されている)。Aの文字が示すようにFE2と同様の絞り優先AEが搭載されているが低速側には電子式、高速側には機械式のハイブリッドシャッター機構を持つ全く新しいMF一眼レフであった。


 1999年にはD1が登場し、時代はデジタルへと大きくシフトし始める中、一眼レフの雄として、持てる技術の全てを投入したモデルを世に残したいとの想いからなのか、MF一眼レフFM3Aを世に送り出したニコンの心意気を私は大いに評価する。MF一眼レフの最高傑作の座はF3に譲るとしても、MF一眼レフの技術的完成形がFM3Aであることは間違いのない事実でありカメラに歴史にその名を刻む一台であるが、わずか6年でその製造・販売が終了する。フィルムのAF一眼レフ機も完成の域に達しデジタルへと全面移行する転換期であったのだ。

 いままたフィルムで、しかもMFで写真を撮ってみようと云う若い方が、特に女性に増えているのだと云う。そんな用途には最も新しくかつ最も優れたMF一眼レフであるFM3Aは最適なカメラである。販売期間が短かったために中古市場における流通量はFM2と比べると多くはないが、手荒く使われたものは少なく全体に程度の良いものが多いようである。DSLR初級機と同程度の価格で入手可能であるし、同じく中古のMFニッコールレンズはそれこそ在庫豊富なのでますますお勧めのNikon FM3Aである。
注:MFニッコールレンズは2018年7月13日現在、広角20mmから105mmマイクロレンズまで全8本がカタログモデルとして販売されている。

 と云う訳で今日の一枚は、我が家に棲み着いている二台のFM3A。シルバーに装着されているレンズは、FM3Aと同時に新たに設計されたパンケーキタイプの45mm F2.8P。勿論MFだが CPUが内蔵されマウント部に電子接点を持つ新世代のレンズ故に最新のDSLRでも露出計が連動する優れもので、中古でも結構な値札が付けられているいまだに人気のレンズ。ブラックにはCarl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZF。電池を抜いてネックストラップ無で保管されているボディが多い中でこの二台は電池は無論、ストラップ、アイカップも装着し、常時臨戦態勢でスタンバイしている。(本シリーズ終了)

注:本稿は2017年5月13日掲載文に加筆・修正したものです。

【以下、郷秋<Gauche>が最近書いたNikon一眼レフに関する記事】
Nikon一眼レフ中級機の系譜(第一回・Nikomat編(2018/06/21)
Nikon一眼レフ中級機の系譜(第二回・FMシリーズ編(2018/06/23)
Nikon一眼レフ中級機の系譜(第三回・FEシリーズ編(2018/06/27)
Nikon一眼レフ中級機の系譜(第四回・FA)(2018/07/01)
Nikon一眼レフ中級機の系譜(第五回・小さなニコンたち編)(2018/07/08)
Nikon一眼レフ中級機の系譜(第六回・FM3A編)(2018/07/13)

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コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2020-05-04 05:01:04
 FM3Aは全速ハイブリッドシャッターです。
 マニュアルはメカニカルシャッター、オートは電子シャッターとなります。
 ですから、電池がなくてもマニュアルで1秒?~1/4000までシャッターが切れます。
 
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