二玄社がカメラ本に進出

 二玄社と云えば、書道美術愛好者では知らぬ者もいない、押しも押されもせぬその道の代表的な出版社である。二玄社と云えば、世界一等のクルマ月刊誌、Car Graphicと、クルマを文化面から捉えるユニークな月刊Naviを刊行する出版社である。とまあ、一見相反する世界で、どちらもその道の達人、専門家をして唸らせる程の質の高い月刊誌、書籍を同時に刊行する出版社である。

 その二玄社からカメラ本登場となれば買わずにはおられない郷秋<Gauche>であるが、第一作となった「PENTAX K-7 NAVI ― そのカメラ、作品を撮れますか? ―」はパスして、第二作となる「OYLMPUS PEN NAVI ―ペンのある生活を始めませんか? ―」を買ってみた。開いて最初に思ったことは「色校(色校正)しているの?」。最初の数ページ、酷い色合いなのである。でも、どこかで見たような色合い・・・。

 そう、最近流行(はやり)の「女子カメラ」雑誌に特有のちょっと寝ぼけたような色合いなのである。「なるほど」と納得したのは、p.12にある「アートフィルター:デイドリーム」と記された撮影データを見てのこと。

 E-P1の機能を、これまで「コンデジ」しか使ったことのない「女子」でも判る優しい言葉で易しく解説しているかと思えば、E-P1開発チームへのインタービュー記事「高島鎮雄さんに訊く初代ペンとその時代」など、オリジナルPENと新しいPEN、E-P1が登場する時代背景を技術と歴史・文化の両面から解説する構成はMook(本)としてその任を十二分に果たしていると云う事が出来、E-P1に興味をもたれた方にはお勧めできる内容となっている。

 さて、書道とクルマの二玄社が何故カメラ本に進出したかと云えば、実は簡単。前述の高島鎮雄氏がクラシックカーとクラシックカメラ、その両方に精通した研究家そしてコレクターであり、なおかつ二玄社の役員を務めた方なのである。その意味では身内である高島鎮雄氏に語らせる記事に、白々しく「高島鎮雄氏さんに訊く」などというタイトルはいかがなものかとは思う。

 二玄社がカメラ本を出すのは実は今回は初めてではなく、高島鎮雄責任編集の「ドイツのカメラ」と「日本のカメラ」が1993・1999年に刊行されているが、内容は一般向けではなく、今回の「PENTAX K-7 NAVI」と「OYLMPUS PEN NAVI」が実質的な意味ではカメラ本への初チャレンジと言うことが出来るだろう。ただ謎なのが、「PENTAX K-7 NAVI」と「OYLMPUS PEN NAVI」共に「別冊CG」扱いとなっているのに同時に「NAVI extra number」とも標記されている点である。

 それにしても、より一般的なニコンやキヤノンのニューモデルではなく、それらをあえてはずした戦略が当たるや否や。これから、RICOHのKマウントカメラ、NikonのAPS-Cコンパクトなど意欲的かつ面白いカメラが次々に登場する(かもしれない)中で、二玄社のカメラ本が定着するや否や、しばらくはお手並み拝見といきたい。

別冊CG『OLYMPUS PEN』NAVI extra number
二玄社
発行年月日 2009年10月5日(既に販売中)
A4変形版 130頁
1,600円(+税)
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