上野の森は郷秋<Gauche>の芸術事始めの地

  あれは小学校5年生の時だっただろうか、家族旅行で東京!に来たことがあった。新幹線の無い時代の東北本線の発着は上野駅だったから、上京して最初に訪れたのが上野の国立西洋美術館と動物園であった。父が美術好きだったからなのだろう、次の日にはブリヂストン美術館にも行ったような気がするが何を見たのかほとんど記憶がないがない。唯一覚えているのが動物園のモノレールと西洋美術館の前庭にあったオーギュスト・ロダン作の「地獄の門」。どうしてこんなおどろおどろしい物を作るのだろうかと思ったものである。

 大学入学直後にその西洋美術館を見学することになるのだが、そそくさと建物の中に入る同級生を尻目に若かりし郷秋<Gauche>はまずは「地獄の門」の前に進み出る。最初の対面から7、8年を経ての再会となったこの時には、西洋文化、つまりキリスト教的に罪深き人間が抱える悩みや困難、そして死後に待っているものが散りばめられているのだろうかと感じたように記憶している

 「地獄の門」の次にはこれまた前提にある「カレーの市民」を見た。どうしてこのような苦渋に満ちた表情、重い足取りなのか訝ったが、その謎は館内のミュージアムショップで買った図録の解説を読んで納得したのだが、「地獄の門」を前に感じたと記憶していたことの大部分は、この図録の解説を読んで知ったことと混同している可能性はある。

 一昨日訪れた東京文化会館大ホールには西洋美術館と前後して足を運んでいる。アムステルダム・コンセルトヘボウかレニングラード・フィル(いずれも当時)のどちらかだったと思うが、何を聴いたのかは判然としない。いずれにしても、大学進学を機に福島から上京した郷秋<Gauche>が芸術としての音楽そして美術に最初に出会ったのが上野の森にある東京文化会館と西洋美術館であったことは間違いがない。だから上野の森は、郷秋<Gauche>の「芸術事始め」の地なのである。


 と云う訳で今日の一枚は、西洋美術館前庭に屹立する「地獄の門」。ちなみに奇を衒っての斜め撮りではない。日曜日唯一のレンズ、35mmで全容を収めようと試みた結果の斜め撮りである。

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