『燃えよ剣(上・下)』 司馬遼太郎 ☆☆☆☆
メチャメチャ面白いと定評のある、司馬遼太郎の新撰組本を読んでみた。大体司馬遼太郎という人はビジネスマンや中年男性好みの作家と言われるが、その万人受けしそうな健全さ、格調の高さ、適度な薀蓄、現代社会にも活かせる「いかに生くべきか」的人生訓、などの印象は逆に私に一歩引かせてしまう要因となっている。とはいえ、まあ面白ければ異存はない。ということで手を . . . 本文を読む
『トラフィック』 スティーヴン・ソダーバーグ監督 ☆☆☆☆☆
DVDで再見。2000年にアカデミー監督賞その他を獲ったヒット作で、個人的には『エリン・ブロコビッチ』と並ぶソダーバーグ監督の最高傑作だと思っている。題材は麻薬取締りをめぐる諸問題という社会派的なもので、娯楽色を抑え多面的なアプローチを見せる硬派な作品だが、そこにソダーバーグ監督のきびきびした演出、スタイリッシュな映像、抑制しつ . . . 本文を読む
『駅路』 松本清張 ☆☆☆★
松本清張の短編集を読了。悪くないが、松本清張としては水準作だと思う。こじんまりした作品が多くて、飛び抜けて強い印象は受けなかった。その中で一番面白かったのは、最後の『陸行水行』である。これは大学助教授の主人公が九州に行った時にある素人研究家と出会い、その男から邪馬台国の所在をめぐる説を聞かされる話で、ははあ、自分の関心と研究の結果を小説にしたんだなと思って読ん . . . 本文を読む
『鏡』 アンドレイ・タルコフスキー ☆☆☆☆☆
所有している日本版DVDで再見。タルコフスキーの名作である。ストーリーらしいストーリーはなく、母親、失踪した父親、そして自らの幼少期の記憶、といったものを題材にした断片的な映像が、スクリーン上を夢のように移ろい流れていく。真に映像詩と呼ぶにふさわしいフィルム、それが『鏡』だ。
全篇を支配するのは強烈なノスタルジー、そして神秘の感覚である。 . . . 本文を読む
『江戸川乱歩集』 江戸川乱歩 ☆☆☆★
創元文庫から出ている「日本探偵小説全集」の第二巻『江戸川乱歩集』を再読。この本、ほとんどサイコロ状である。一冊の文庫本でありながら『パノラマ島綺譚』『陰獣』『化人幻戯』の長編三つと主要な短編あれこれが収録されていて、これだけでとりあえず乱歩の全体像を知ることができる。
ただ初期の短編は「二銭銅貨」「心理試験」などが入っているが、明智小五郎のデビュ . . . 本文を読む