![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/07/a123c56aa4e8bf494d8fd1916cd5d452.jpg)
『駅路』 松本清張 ☆☆☆★
松本清張の短編集を読了。悪くないが、松本清張としては水準作だと思う。こじんまりした作品が多くて、飛び抜けて強い印象は受けなかった。その中で一番面白かったのは、最後の『陸行水行』である。これは大学助教授の主人公が九州に行った時にある素人研究家と出会い、その男から邪馬台国の所在をめぐる説を聞かされる話で、ははあ、自分の関心と研究の結果を小説にしたんだなと思って読んでいると、終盤で意外な展開になる。どういうオチになるのか見えないまま話が進み、ミステリらしくない不思議な結末に至る。読後には複雑な余韻を残す。いつもの清張とは一味違う、ユニークな作品である。『万葉翡翠』も同傾向の作品だが、これは和歌の研究とミステリ的展開がしっくり噛み合わず、うまくいっていない。
それから『ある小官僚の抹殺』は『中央流砂』の原型的な話で、汚職事件でカギを握る中間管理職が自殺してうやむやになるケースにおいて、中間管理職が上役のために自殺するという心理はいかなるものかという考察である。考察であるのでミステリ小説ではなく、物語に結末はない。しかしこういう短編は松本清張ならではという感じがして、小粒ながら悪くない。
他の作品では全体に、完全犯罪と思われたものがごく些細なことから崩壊する話が多い。ここから教訓を一つ引き出すならば、他人は他人のことなんて見ていないようで、実は意外と良く見ている、ということになるだろうか。
松本清張の短編集を読了。悪くないが、松本清張としては水準作だと思う。こじんまりした作品が多くて、飛び抜けて強い印象は受けなかった。その中で一番面白かったのは、最後の『陸行水行』である。これは大学助教授の主人公が九州に行った時にある素人研究家と出会い、その男から邪馬台国の所在をめぐる説を聞かされる話で、ははあ、自分の関心と研究の結果を小説にしたんだなと思って読んでいると、終盤で意外な展開になる。どういうオチになるのか見えないまま話が進み、ミステリらしくない不思議な結末に至る。読後には複雑な余韻を残す。いつもの清張とは一味違う、ユニークな作品である。『万葉翡翠』も同傾向の作品だが、これは和歌の研究とミステリ的展開がしっくり噛み合わず、うまくいっていない。
それから『ある小官僚の抹殺』は『中央流砂』の原型的な話で、汚職事件でカギを握る中間管理職が自殺してうやむやになるケースにおいて、中間管理職が上役のために自殺するという心理はいかなるものかという考察である。考察であるのでミステリ小説ではなく、物語に結末はない。しかしこういう短編は松本清張ならではという感じがして、小粒ながら悪くない。
他の作品では全体に、完全犯罪と思われたものがごく些細なことから崩壊する話が多い。ここから教訓を一つ引き出すならば、他人は他人のことなんて見ていないようで、実は意外と良く見ている、ということになるだろうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます