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『スカイ・クロラ』 押井守監督 ☆☆☆★
久しぶりにフォート・リーにあるブロックバスターに行ったら押井監督の『スカイ・クロラ』が一本だけあったので借りてきた。ついでに言うと松本人志の『Big Man Japan』も一本だけあって、貸し出し中だった。
この『スカイ・クロラ』、賛否両論だったのであまり期待していなかったが、思ったより良かった。退屈だという評価が多かったので、『イノセンス』みたいに能書きが延々続くアニメかと思っていたらそんなことはなかった。ちなみに原作の小説は読んだことがあるが、ほとんど印象に残っていない。すっかり忘れてしまっているので、アニメではかなり変えてあるらしいがどこがそうなのかほとんど分からなかった。ラストが違うのは分かったが。
スカイ・クロラとは戦闘機のパイロットである主人公たちのことで、CGで作りこんだ空中戦シーンもあることはあるが、全体に静かで内省的な映画である。退屈だと思った人はアクションや劇的なストーリーを期待したのかも知れないが、これは雰囲気に浸る映画だ。舞台は日本だかアメリカだかよく分からないだだっ広い田舎(後でヨーロッパだということが分かる)で、空の広さがとても印象的である。ゲームとして企業によって続けられる戦争。永遠に死なず成長もしない子供たち、キルドレ。異質な存在として口に出される言葉「おとな」。決して打ち破ることのできない敵方のパイロット「ティーチャー」。こういう独特の世界観が、静謐でメランコリックなこの作品を作り上げている。この幻想的かつ虚無的な世界観はなかなか魅力的で、この世界観そのものが本作品の主役といってもいいと思う。いってみれば登場人物たちはこの世界観の注釈として、例証として登場するのである。
例によって緻密に描きこまれた絵が美しい。動きが少なくおとなしい話だが、主人公・カンナミの前任者はどうなったのかとか、少しずつミステリを小出しにして惹きつける工夫がしてある。セリフも『イノセンス』みたいに観念的ではなくわりと自然だが、やはり妙に狙ったようなセリフもところどころにあって、押井監督のこういうところはちょっと苦手だ。たとえば「明日死ぬかも知れないのに、おとなになる必要があるんですか?」というカンナミのセリフがあるが、戦争してなくたって、人間誰しも明日死ぬかも知れないだろ。
おとなしくこじんまりしていて、ガツンと来るような作品ではないだろうが、独特の雰囲気のある耽美的な作品だ。ただし最後の謎解き部分はいただけない。ラストがいやにあっさりしているなと思ったら、エンド・クレジットのあとに真のラストシーンがやってくる。冗談かと思った。まるでコントだ。あれでショックを与えて終わろうと思ったのかも知れないが、私はむしろずっこけてしまった。狙い過ぎの悪癖が最後の最後に出てしまったなあ。あれで全体の評価が三割減になった。残念だ。
久しぶりにフォート・リーにあるブロックバスターに行ったら押井監督の『スカイ・クロラ』が一本だけあったので借りてきた。ついでに言うと松本人志の『Big Man Japan』も一本だけあって、貸し出し中だった。
この『スカイ・クロラ』、賛否両論だったのであまり期待していなかったが、思ったより良かった。退屈だという評価が多かったので、『イノセンス』みたいに能書きが延々続くアニメかと思っていたらそんなことはなかった。ちなみに原作の小説は読んだことがあるが、ほとんど印象に残っていない。すっかり忘れてしまっているので、アニメではかなり変えてあるらしいがどこがそうなのかほとんど分からなかった。ラストが違うのは分かったが。
スカイ・クロラとは戦闘機のパイロットである主人公たちのことで、CGで作りこんだ空中戦シーンもあることはあるが、全体に静かで内省的な映画である。退屈だと思った人はアクションや劇的なストーリーを期待したのかも知れないが、これは雰囲気に浸る映画だ。舞台は日本だかアメリカだかよく分からないだだっ広い田舎(後でヨーロッパだということが分かる)で、空の広さがとても印象的である。ゲームとして企業によって続けられる戦争。永遠に死なず成長もしない子供たち、キルドレ。異質な存在として口に出される言葉「おとな」。決して打ち破ることのできない敵方のパイロット「ティーチャー」。こういう独特の世界観が、静謐でメランコリックなこの作品を作り上げている。この幻想的かつ虚無的な世界観はなかなか魅力的で、この世界観そのものが本作品の主役といってもいいと思う。いってみれば登場人物たちはこの世界観の注釈として、例証として登場するのである。
例によって緻密に描きこまれた絵が美しい。動きが少なくおとなしい話だが、主人公・カンナミの前任者はどうなったのかとか、少しずつミステリを小出しにして惹きつける工夫がしてある。セリフも『イノセンス』みたいに観念的ではなくわりと自然だが、やはり妙に狙ったようなセリフもところどころにあって、押井監督のこういうところはちょっと苦手だ。たとえば「明日死ぬかも知れないのに、おとなになる必要があるんですか?」というカンナミのセリフがあるが、戦争してなくたって、人間誰しも明日死ぬかも知れないだろ。
おとなしくこじんまりしていて、ガツンと来るような作品ではないだろうが、独特の雰囲気のある耽美的な作品だ。ただし最後の謎解き部分はいただけない。ラストがいやにあっさりしているなと思ったら、エンド・クレジットのあとに真のラストシーンがやってくる。冗談かと思った。まるでコントだ。あれでショックを与えて終わろうと思ったのかも知れないが、私はむしろずっこけてしまった。狙い過ぎの悪癖が最後の最後に出てしまったなあ。あれで全体の評価が三割減になった。残念だ。
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