アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

愛のポルターガイスト

2012-06-21 21:02:52 | 音楽
『愛のポルターガイスト』 小島麻由美   ☆☆☆☆

 小島麻由美の5thアルバム。以前紹介した『さよならセシル』より私はこっちの方が好きなのだが、コジマユ・ファンの中では異端的な一枚なのか、現在では廃盤になっている。

 全部聴いたわけじゃないけれども私が所有する他二枚のアルバムと比べた時の特徴は、サウンドが厚く作りこまれていて、全体の音に「重い」「濃い」といった印象があることだろう。『さよならセシル』あたりでは、雰囲気にこそ独特の密度があるものの、サウンドそのものはシンプルでパーソナルな、少女っぽさ漂うものだったが、本作にはビッグバンド的な力強さ、ゴージャスさがある。といっても小島麻由美だから、昭和っぽい湿り気と屈折があるビッグバンドだ。私が特に好きなのは力強いパーカッションと、レトロな味わいを醸し出すホーン隊である。他のアルバムのような手作り感、ヘタウマ感は薄く、むしろプロフェッショナルだ。

 小島麻由美の音楽には毒気があるので、サウンドまでぶ厚くなったら濃厚過ぎるというファンもいるのかも知れないが、私はこれぐらいの方がいい。ラーメンもしょうゆ味よりこってり系とんこつ派なのである。そもそも「萌え」要素なんてものが嫌いな私は、小島麻由美が時々やる、かわいこぶった、と言って悪ければ少女っぽさをアピールするような、舌足らずっぽい歌い方が嫌いなのである。こういうのをコケティッシュだとか萌えだとか言って珍重する人々の気持ちが分からないのだが、本作の小島麻由美にはあまりそんなところはない。むしろ不敵で、余裕綽々で、堂々としている。メロディも少女ぶったようなものは少なく、ウェルメイドかつオーセンティックだ。彼女のメロディ・メーカーとしての才能が堪能できる。

 というわけで、これはこってり系とんこつラーメンのようなアルバムであります。少女に萌えたい人は他のアルバムを当たった方がいいでしょう。


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2 コメント

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これ大好き (yayoy)
2012-10-16 12:41:36
またまたすみません。小島麻由美が大好きで、このアルバムを一番よく聴いているのでうれしくなりました。
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Unknown (ego_dance)
2012-10-18 12:32:02
その後もう一枚小島麻由美のCDを買いましたが、やっぱりこれが一番好きです。
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