『ひかりのまち』 マイケル・ウィンターボトム監督 ☆☆☆
マイケル・ナイマンの切なく甘美な音楽に全編を彩られたイギリス映画。ナイマンの音楽を鑑賞するための映画という評すらあるようだが、ナイマンの音楽は私も大好きなので、英語版DVDを買って鑑賞した。
ブルーレイがなかったのでDVDを買ったが、観てみるとわざと粒子が粗い手ブレ映像で撮られている。これならDVDで充分だ。ホームビデオで撮ったドキュメンタリー風日常断片の積み重ねといった感じで、最初はどんな話なのかさっぱり分からない。場面ごとに登場人物がどんどん入れ替わっていくが、説明が全然ないので人間関係もよく分からない。が、見ているうちにだんだん三姉妹の話ということが分かる。出会いを求めてブラインド・デートを重ねるナディア、エディーという伴侶とともに暮らす妊婦モリー、離婚したシングルマザーで享楽的な美容師のデビー。舞台はロンドン。
基本的に痛々しい話だ。ナディアは男を好きになるがいいように遊ばれ、幸せそうだったモリーはエディーが失業を隠していたことにショックを受け、またそれを責められたエディーが失踪している間に出産で病院に担ぎ込まれる。デビーはモリーの面倒を見ているうちに息子が強盗に遭い、警察に呼び出される。みんな普通の人々であり、それゆえに普通に人生の苦労を舐めながら生きている。不満や鬱屈、あるいはやるせなさを抱え、孤独に耐えながら、時に刹那的に何かを求めながら生きている。三姉妹の両親も出てくるが、二人はどうやら不仲で、おまけに隣家の犬がいつも吠えるせいで騒音に悩まされている。しまいには母親が隣家の犬を毒殺する。
やりきれなさ満点の映画だが、最後はモリーの赤ん坊が生まれ、エディーは戻り、ナディアに片思いしていた内向的な黒人青年がナディアと友人になり、家出していた三姉妹の弟ダレンは留守電で両親に「ぼくは元気です」とメッセージを残す、とまあ、多少の希望を取り戻して終わる。原題の「Wonderland(不思議の国)」は、生まれてきたモリーの赤ん坊が「不思議の国のアリス」にちなんでアリスと名づけられたことを踏まえている。私たちが生きているこの世界こそ、不思議に満ちたワンダーランドなのだ、ということだろうか。
そんな感じなので物語の内容は、人生って色々だよね、というため息をつきたくなるような現実的なエピソードの羅列であり、それほど独創的なものではない。この映画の命はやはり、そうした日常的な断片を細々と積み重ねていくセミ・ドキュメンタリー的な手法にある。まったく説明的でなく、断片的にパッパッと呈示して残りは観客に想像させるスタイルであり、もちろんこれはエディットのセンスに非常に左右される。センスが全てだといっても過言ではない。で、そういう意味でのセンスは決して悪くないが、それだけで映画が傑作となるほどでもない。物語のインパクトが弱いので尚更だ。
もう一つ、きれいに撮られたよそいきのロンドンではなく、まさにそこに住む人の目に映るような生々しいロンドンの表情が見られるのも悪くない。ところどころに流れるマイケル・ナイマンの音楽でニ割増し。が、やはり個人的には、雰囲気勝負だけでなくエピソードにももっと工夫が欲しかった。「人生色々大変だ、ヤなことも多いし」だけなら、特に映画を観るまでもないのである。
マイケル・ナイマンの切なく甘美な音楽に全編を彩られたイギリス映画。ナイマンの音楽を鑑賞するための映画という評すらあるようだが、ナイマンの音楽は私も大好きなので、英語版DVDを買って鑑賞した。
ブルーレイがなかったのでDVDを買ったが、観てみるとわざと粒子が粗い手ブレ映像で撮られている。これならDVDで充分だ。ホームビデオで撮ったドキュメンタリー風日常断片の積み重ねといった感じで、最初はどんな話なのかさっぱり分からない。場面ごとに登場人物がどんどん入れ替わっていくが、説明が全然ないので人間関係もよく分からない。が、見ているうちにだんだん三姉妹の話ということが分かる。出会いを求めてブラインド・デートを重ねるナディア、エディーという伴侶とともに暮らす妊婦モリー、離婚したシングルマザーで享楽的な美容師のデビー。舞台はロンドン。
基本的に痛々しい話だ。ナディアは男を好きになるがいいように遊ばれ、幸せそうだったモリーはエディーが失業を隠していたことにショックを受け、またそれを責められたエディーが失踪している間に出産で病院に担ぎ込まれる。デビーはモリーの面倒を見ているうちに息子が強盗に遭い、警察に呼び出される。みんな普通の人々であり、それゆえに普通に人生の苦労を舐めながら生きている。不満や鬱屈、あるいはやるせなさを抱え、孤独に耐えながら、時に刹那的に何かを求めながら生きている。三姉妹の両親も出てくるが、二人はどうやら不仲で、おまけに隣家の犬がいつも吠えるせいで騒音に悩まされている。しまいには母親が隣家の犬を毒殺する。
やりきれなさ満点の映画だが、最後はモリーの赤ん坊が生まれ、エディーは戻り、ナディアに片思いしていた内向的な黒人青年がナディアと友人になり、家出していた三姉妹の弟ダレンは留守電で両親に「ぼくは元気です」とメッセージを残す、とまあ、多少の希望を取り戻して終わる。原題の「Wonderland(不思議の国)」は、生まれてきたモリーの赤ん坊が「不思議の国のアリス」にちなんでアリスと名づけられたことを踏まえている。私たちが生きているこの世界こそ、不思議に満ちたワンダーランドなのだ、ということだろうか。
そんな感じなので物語の内容は、人生って色々だよね、というため息をつきたくなるような現実的なエピソードの羅列であり、それほど独創的なものではない。この映画の命はやはり、そうした日常的な断片を細々と積み重ねていくセミ・ドキュメンタリー的な手法にある。まったく説明的でなく、断片的にパッパッと呈示して残りは観客に想像させるスタイルであり、もちろんこれはエディットのセンスに非常に左右される。センスが全てだといっても過言ではない。で、そういう意味でのセンスは決して悪くないが、それだけで映画が傑作となるほどでもない。物語のインパクトが弱いので尚更だ。
もう一つ、きれいに撮られたよそいきのロンドンではなく、まさにそこに住む人の目に映るような生々しいロンドンの表情が見られるのも悪くない。ところどころに流れるマイケル・ナイマンの音楽でニ割増し。が、やはり個人的には、雰囲気勝負だけでなくエピソードにももっと工夫が欲しかった。「人生色々大変だ、ヤなことも多いし」だけなら、特に映画を観るまでもないのである。
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