アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Robbie Dupree

2014-12-25 11:57:05 | 音楽
『Robbie Dupree』 Robbie Dupree   ☆☆☆☆

  皆様、メリークリスマス。またしても聖なる季節がやってきました。私、今年のクリスマスは本業の方が多忙をきわめ、連日一人でオフィスに残って悪戦苦闘する日々です。もうフラフラです。が、なんとかメドが立ち、今日は休むことができました。これから年末にかけて、ちょっとは骨休めできそうです。読みたい本も大量に買い込んでいます。皆様一人一人が良いクリスマスをお過ごしになられますよう、ここアメリカ合衆国ニュージャージー州から、お祈りいたします。

 というわけで、今日のお題はクリスマスの優しい空気にふさわしい、ロビー・デュプリーのファースト・アルバム。

  ~  ~  ~  ~

 AOR系の音楽にはきわめてうとい私だが、このアルバムは時々引っ張り出して聴いている。ロビー・デュプリーのファーストで、彼自身の名前がアルバム名になっている。ARO通の間では「超名盤」で通っているらしく、そんな「超名盤」を☆四つでは申し訳ない気分になるが、プログレ者の私としてはこれぐらいが妥当な評価となる。が、かなり良いという意味である。

 最初は、ドゥービー・ブラザースの『Minute By Minute』が好きならこれも好きなはずだ、とAmazonやiTuneのおススメ機能がうるさく言って来るので、そこまで言うならとアルバムを購入してみた。確かに、ドゥービーのマイケル・マクドナルドの曲に良く似ている。声や歌い方もそっくりだ。実際、このアルバム一曲目の「Steal Away」はドゥービーの曲に似すぎているというので訴訟になったらしい。

 ただ、ドゥービーのアルバムにはどこかサザン・ロックのにおいと骨っぽい芯があるが、このアルバムにはそういうところはない。ドゥービーからマイケル・マクドナルド色を抽出し、上澄みだけすくいとったような感じで、最初は「なんちゅう歯ごたえのない音楽だ」と思い、繰り返し聴こうとは思わなかった。良さが分かってきたのは最近である。

 私みたいな(普段AORを聴きつけない)リスナーのために言っておくと、このアルバムに最初から「ロックの熱さ」とか「テンションの高さ」を求めない方がいい。フュージョンっぽい、洗練された演奏のテンションはポップさの中にちゃんとあって、聴きこむと感じ取れるようになるが、少なくともプログレ者やハードロック者が期待する「テンション」はおそらく、ない。その代わりと言ってはなんだが、非常に聴きやすい。聴いていると優しい羽毛で心の表面をそっと撫でられているような、ヘヴンリーな気分になる。

 だからこのアルバムは、テンションがきつい音楽を聴く気分じゃない時、心が疲れたり、ささくれ立ったりしている時に聴くと、実に癒される。少なくとも私の場合はそうだ。

 とにかく品がいい。都会的である。洗練されている。ロビー・デュプリーの声はソウルフルで優しく、マイケル・マクドナルドよりもう少し甘い。ただし甘過ぎず、ほんのりした甘さだ。演奏はピアノと控えめなギター主体の、AOR定番のフュージョンっぽいサウンドだが、うるさ過ぎず静か過ぎないほど良い加減で、適度に隙間があり、しかもきっちりした職人芸を聴かせてくれる。ソングライティングもしっとりしたバラードから軽快なテンポの曲まで緩急あり、リスナーを心地よくさせるための細かい配慮がなされている。

 この手の音楽は、ともすれば彼女を部屋に呼んだ時のBGM、みたいに軽く見られがちだが、このアルバムには聴きこめば聴きこんだだけ味わいを増すという、懐の深さがあると思う。がっつり食べたい時の主食にはならないかも知れないが、胃がもたれている時や胸焼けがする時に口寂しさをまぎらわすにはもってこいの、ふんわりと軽く、上品な、甘い香りのするマドレーヌのような音楽だ。



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