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『JUNKTION』 オフコース ☆☆☆☆
オフコース5枚目のスタジオ・アルバム。アコースティック時代最後の頃のアルバムで、この後オフコースは急速にエレクトリック化が進んでいく。
しかしこのアルバムはオフコースのアルバムの中でもかなり特色がある一枚で、異色作といっていいんじゃないか。まず何と言っても、鈴木康博色が前面に出ていること。他のアルバムはどれも小田和正色が勝っているが、これだけは鈴木カラーが強いのである。曲数だけ見てもそれは明らかで、鈴木作が5曲、小田作が3曲、共作が1曲となっている。また曲のアレンジや雰囲気について言うと、いつもはキーボード主体の小田曲もなぜかアコースティック・ギターによるアレンジが多い。この頃小田といえばピアノの響きがトレードマークだったのに、このアルバムではピアノがほとんど弾かれていない。
それからまた、アルバム全体の雰囲気がたそがれている。露骨に秋っぽい。「秋の気配」「潮の香り」といった秋の曲が多いだけでなく、サウンドそのものが秋の黄昏をイメージさせる。前作の『Song Is Love』では小田の清冽なロマンティシズムが大きくフィーチャーされていたことを思うと、本作のたそがれ感、薄曇りの感じは実に対照的だ。これは意図的な演出なのだろうか。ちょうどこの頃鈴木の「ロンド」がドラマの主題歌か何かになって初めてシングルA面になったことを考えると、レコード会社が意図的に鈴木を売り出そうとしたのかも知れない。オフコースの長い歴史の中で、鈴木が小田を抑えて前面に躍り出たのはこの時だけである。
が、裏の事情がどうだったにせよ、鈴木康博がんばっている。なかなかいい曲が多い。私は「INVITATION」「潮の香り」が気に入っている。シングルになった「ロンド」もとてもいい曲で、あれをこのアルバムに入れておけばますます鈴木の株が上がったところだが、なぜそうしなかったのだろう。もったいない。
曲数こそ少ないものの、小田の曲も粒ぞろいである。「思い出を盗んで」「愛のきざし」「秋の気配」とどれも名曲だ。「思い出を盗んで」のキャッチーなメロディとあふれるロマンティズムは絶品の域だし、「愛のきざし」は壮大な多重録音のコーラスが美しい。そして「秋の気配」の繊細なたそがれ感。この「秋の気配」は誰もが知っている小田の代表曲の一つだが、「眠れぬ夜」「ワインの匂い」「愛の唄」「あなたのすべて」など洋楽っぽい小田楽曲の中にあって、和風フォークっぽいムードの小田らしからぬ曲である。ヴォーカルもいつもの透明感が影をひそめ、くぐもった感じになっている。
そして最後の「HERO」。これがまたポイント高い。7分以上の長い曲で、小田と鈴木の共作になっている。が、これはかなり鈴木の趣味が強く出た曲だと思う。メロディも鈴木っぽい部分が多いし、アレンジもけだるいアダルトな雰囲気だ。前作『SONG IS LOVE』のハイライトだった長尺曲「冬が来る前に」は小田カラー全開のロマンティックかつドラマティックな曲だったが、「HERO」はまた全然違うオフコースの音楽性を見せてくれる。曲調だけでなく、こまぎれのヴォーカル・パートの間にけだるいインスト・パートが挟まるという緩い断章形式もまるで違う。
というわけで、かなり異色ずくめの『JUNKTION』、子供の頃最初に聴いた時はあまり好きじゃなかった。小田色が強い他のアルバムに比べて地味だと思ったのである。が、最近は妙に気に入っている。実のところ、アコースティック時代のオフコースのアルバムではこの『JUNKTION』を聴く事が一番多い。この渋さ、薄曇りのたそがれ感がたまらないのである。小田の甘さと鈴木のビターさがミックスされ、実にいい感じだ。というわけで、オフコース初心者は『ワインの匂い』から入った方がいいと思うが、ディープに掘り下げたい上級者には『JUNKTION』をお薦めする。
オフコース5枚目のスタジオ・アルバム。アコースティック時代最後の頃のアルバムで、この後オフコースは急速にエレクトリック化が進んでいく。
しかしこのアルバムはオフコースのアルバムの中でもかなり特色がある一枚で、異色作といっていいんじゃないか。まず何と言っても、鈴木康博色が前面に出ていること。他のアルバムはどれも小田和正色が勝っているが、これだけは鈴木カラーが強いのである。曲数だけ見てもそれは明らかで、鈴木作が5曲、小田作が3曲、共作が1曲となっている。また曲のアレンジや雰囲気について言うと、いつもはキーボード主体の小田曲もなぜかアコースティック・ギターによるアレンジが多い。この頃小田といえばピアノの響きがトレードマークだったのに、このアルバムではピアノがほとんど弾かれていない。
それからまた、アルバム全体の雰囲気がたそがれている。露骨に秋っぽい。「秋の気配」「潮の香り」といった秋の曲が多いだけでなく、サウンドそのものが秋の黄昏をイメージさせる。前作の『Song Is Love』では小田の清冽なロマンティシズムが大きくフィーチャーされていたことを思うと、本作のたそがれ感、薄曇りの感じは実に対照的だ。これは意図的な演出なのだろうか。ちょうどこの頃鈴木の「ロンド」がドラマの主題歌か何かになって初めてシングルA面になったことを考えると、レコード会社が意図的に鈴木を売り出そうとしたのかも知れない。オフコースの長い歴史の中で、鈴木が小田を抑えて前面に躍り出たのはこの時だけである。
が、裏の事情がどうだったにせよ、鈴木康博がんばっている。なかなかいい曲が多い。私は「INVITATION」「潮の香り」が気に入っている。シングルになった「ロンド」もとてもいい曲で、あれをこのアルバムに入れておけばますます鈴木の株が上がったところだが、なぜそうしなかったのだろう。もったいない。
曲数こそ少ないものの、小田の曲も粒ぞろいである。「思い出を盗んで」「愛のきざし」「秋の気配」とどれも名曲だ。「思い出を盗んで」のキャッチーなメロディとあふれるロマンティズムは絶品の域だし、「愛のきざし」は壮大な多重録音のコーラスが美しい。そして「秋の気配」の繊細なたそがれ感。この「秋の気配」は誰もが知っている小田の代表曲の一つだが、「眠れぬ夜」「ワインの匂い」「愛の唄」「あなたのすべて」など洋楽っぽい小田楽曲の中にあって、和風フォークっぽいムードの小田らしからぬ曲である。ヴォーカルもいつもの透明感が影をひそめ、くぐもった感じになっている。
そして最後の「HERO」。これがまたポイント高い。7分以上の長い曲で、小田と鈴木の共作になっている。が、これはかなり鈴木の趣味が強く出た曲だと思う。メロディも鈴木っぽい部分が多いし、アレンジもけだるいアダルトな雰囲気だ。前作『SONG IS LOVE』のハイライトだった長尺曲「冬が来る前に」は小田カラー全開のロマンティックかつドラマティックな曲だったが、「HERO」はまた全然違うオフコースの音楽性を見せてくれる。曲調だけでなく、こまぎれのヴォーカル・パートの間にけだるいインスト・パートが挟まるという緩い断章形式もまるで違う。
というわけで、かなり異色ずくめの『JUNKTION』、子供の頃最初に聴いた時はあまり好きじゃなかった。小田色が強い他のアルバムに比べて地味だと思ったのである。が、最近は妙に気に入っている。実のところ、アコースティック時代のオフコースのアルバムではこの『JUNKTION』を聴く事が一番多い。この渋さ、薄曇りのたそがれ感がたまらないのである。小田の甘さと鈴木のビターさがミックスされ、実にいい感じだ。というわけで、オフコース初心者は『ワインの匂い』から入った方がいいと思うが、ディープに掘り下げたい上級者には『JUNKTION』をお薦めする。
「JUNCTION」、あらためて聴きたくなりました。
オフコースは大昔から好きですが、いつになっても飽きませんねー。小田和正の歌詞作法も確かに不思議です。非常に抽象的というか、曖昧な状況を曖昧なまま書いているというか。
時々、コメント書かせていただきます。