崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

高齢者のよいモデル

2013年10月15日 05時14分36秒 | エッセイ
中国人民大学の准教授の金炳徹氏が訪ねてきた。彼は韓国の朝鮮大学の中国語学科を卒業してイギリスに留学し、ノーティンハム大学で社会福祉専攻で博士号を取得、現在北京の人民大学で社会福祉を教えている。目下日本語の語学研修のために日本に来られている。昨日下関の満殊荘で海峡を挟んで九州を眺めながら彼と歓談した。彼が留学したUniversity of NottinghamはD.H. Lawrence(写真)の出身校であって、その研究所があることによって、より有名な大学だと言っていた。私は大学生時代にその作家について評論を大学新聞に寄稿したこともあって、親近感を感じた。
 金氏は今日本語を勉強し始め、日中韓の社会福祉、特に老人問題を比較したいという。彼は最近韓国で社会問題になっているのが高齢者の自殺であるといった。「老人」とは統計する所によって60歳、65歳としているのは日本も同様、2000年以降韓国の老人自殺は日本の2、3倍に急増しているという。韓国では中年層の人が若者に「若い時働かないとあの老人のように貧困になり税金を喰うものになるぞ」と言うそうである。引退して孤独になり自殺するということがネット上多くの事例として紹介されている。日本の「楢山節考」のような比喩とは異なる。いずれ日韓、両国では家族構造が似ていて、その激しい変化によって日韓の差が出ると仮説を話していた。それには私も同意した。そこで今私の指導を受けながら博士論文を準備している杉原氏の「日本高齢者の自殺に関する研究」を紹介した。彼はその家族制度の変化に注目して比較研究を行いたいという。
 今度の韓国文化探訪では暇つぶしの韓国の老人群に会うことはなかった。私たちのグループの最高齢者の山尾氏は一番好奇心が旺盛、カメラを持って先頭で撮影、買い物も一番多く、板門店で買った北朝鮮の酒が税関で無償没収(?)されたと残念な表情はあっても、高齢者のよいモデルであった。