崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

もう一つの人権を犯す

2013年10月09日 05時43分35秒 | エッセイ
 定期的に通っている病院の医師が先日の新聞報道の慰安婦に関する国立公文書館(東京)資料により日本軍が関与を認めた河野官房長官談話(1993年)について話をしてくれた。主な内容は戦時中の44年、ジャワ島に収容されていたオランダ人女性を、日本軍将校が命じて州内4カ所の慰安所に連行し、脅して売春させたということである。
 河野洋平官房長官談話以来軍の関与と強制性を認めたを裏付け、補強する資料は次々と明らかになった。(1)陸軍省が慰安所設置を決めた(2)第35師団司令部が軍施設として慰安所運営規則を定めた「営外施設規定」、(3)政府が慰安婦の渡航を認める閣議決定、(4)インドネシアや中国での慰安婦強制連行を示す東京裁判の尋問調書―などがあり、いずれも軍や政府の関与、強制性を示している。しかし安倍政権は「強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」と述べている。
 軍が関与したことは他国の軍を例にしても、私は十分わかる。しかし軍との関係が軍の正式的な、たとえば国民総動員のように法的に組織して動員をしたものとは異なると思う。政治的な問題とは別に脱政治的あるいは脱価値的に検討すべき主な点は、軍事工業など無数の企業が戦争に動員された点をどう見るべきか。日中戦争そのものが全体として犯罪である「侵略戦争」として裁かれるのは当然である。その点日本が被害国へ謝罪すべきであると主張したし、そうすべきだと私は思う。しかし「性セックス」を持って人権運動をすることは難しい。たとえば姦通罪などを証言、証明しようとするとそれ以上の「恥」「人権」や国家の「品格」を問われることになるからである。このような慰安婦問題は今すぐ中止すべきであると提案したい。