西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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『作家の聖別』

2016年06月11日 | 翻訳 traduction
『作家の聖別――フランス・ロマン主義 Ⅰ』
ポール・ベニシュー著
片岡大右+原大地+辻川慶子+古城毅訳
水声社 2015年
A5判上製/688頁/定価=8000円+税
ISBN978-4-8010-0028-5 C0098 

驚くべきこと、ほとんど奇跡とも思えることであるが、最初
の羽ばたきのときには時代遅れのものに映ったこの偉大な
業績は、時の流れを受けて今、永遠の空を飛翔している。
――フランソワ・フュレ(革命史家)

19世紀前半、宗教的権力に代わり、世俗的な聖職者たらん
とした詩人、文学者たちの「聖別」の過程を克明に追いなが
ら、いかにして文学が高い精神的職務を担うよう求められる
に至ったのかを論じる。フランス・ロマン主義を徹底的に
解明する長大評論の第一巻。

〈ベニシューのロマン主義研究は、文学的なものの社会的
身分規定を探求する歩みそれ自体を通して、非宗教化された
社会生活を律しうる新たな正当化原理の形成という、フラン
ス的近代の全体を貫く―そして私たちの生きる近代それ自体
の根本的性格とも関わっているはずの―広範な問題系へと道
を開く。〉「ポール・ベニシューとその時代(1)」より

【目次】
作家の行程―ポール・ベニシューへのインタビュー

作家の聖別
序論

第一章 世俗的聖職を求めて
1 「文人」と新しい信仰
2 〈啓蒙の世紀〉における詩人
3 革命の危機

第二章 神聖詩人

第三章 イリュミニスムと詩―
    ルイ・クロード・ド・サン=マルタン

第四章 反革命と文学
1 文人の失墜
2 対哲学
3 神聖詩人とキリスト教詩人
4 感性と宗教
5 「キリスト教精髄」あるいは感性的人間の回心
6 反革命の両義性
7 ピエール=シモン・バランシュ
8 詩人の出現―ラマルチーヌの登場

第五章 自由主義派の貢献
1 セナンクール
2 初期ノディエと「瞑想者たち」
3 世俗的スピリチュアリスム―美学
4 ジェルメーヌ・ド・スタールとバンジャマン・コンスタン
5 折衷主義―クザン、ジュフロワ

第六章 神智論者の詩学

第七章 ロマン主義革命
1 王党派ロマン主義
2 『フランス詩神』
3 自由主義的ロマン主義―スタンダール
4 自由主義者と
5 統一ロマン主義、ノディエ、第二セナークル
6 ロマン主義とフランス社会

第八章 偉大な世代の登場
1 アルフレッド・ド・ヴィニー
2 ヴィクトル・ユゴー
3 サント=ブーヴ

第九章 一八三〇年と〈若きフランス〉
1 若きロマン主義とブルジョワジー
2 〈若きフランス〉またはプチ・セナークル
3 ペトリュス・ボレル
4 フィロテ・オネディ
5 ジェラール・ド・ネルヴァル
6 テオフィル・ゴーチエ

巻末の省察


人名索引

ポール・ベニシューとその時代(一) 片岡大右
訳者あとがき

【著者/訳者について】
ポール・ベニシュー(Paul Bénichou)  
1908年、トレムセン(アルジェリア)生まれ。2001年パリ
に没した。ユルム街の高等師範学校(フランス、パリ)に学
ぶ。第二次大戦中のアルゼンチン亡命を挟み、戦前・戦後に
かけて長くフランスで中等教育に携わった後、1958年にハー
ヴァード大学(アメリカ合衆国)に招かれて、以後79年まで
フランス文学およびスペイン口承文学を講じた。1948年の
『偉大な世紀のモラル』(朝倉剛・羽賀賢二訳、法政大学出
版局、1993)に始まり、1973年の『作家の聖別』(本書)
以降、『預言者の時代』(1977)、『ロマン主義の祭司』
(1988)、『幻滅の流派』(1992)と書き継がれた四冊の
「フランス・ロマン主義の哲学的歴史」を経て1995年の
『マラルメに従って』に至る一連の著作は、17世紀以降の
フランス文学・思想史を刷新する壮大なパノラマを描き出
している。


片岡大右(かたおかだいすけ) 1974年北海道生まれ。
東京大学大学院人文社会系研究科にて博士号取得。現在、
同研究科研究員。フランス文学・思想史。著書に『隠遁者、
野生人、蛮人―反文明的形象の系譜と近代』(知泉書館、
2012)、最近の論文に« Chateaubriand disciple infidèle
de Pascal »(RHLF, à paraître en 2015)、共訳書に
F・ドゥノール&A・シュワルツ『欧州統合と新自由主義―
社会的ヨーロッパの行方』(論創社、2012)などがある。

原大地(はらたいち)  1973年東京都生まれ。東京大学
大学院人文社会系研究科単位取得退学。パリ第四大学にて博
士号取得。現在、慶應義塾大学商学部准教授。フランス語・
フランス文学。
著書にLautréamont : vers l’autre (L’Harmattan,
2006)、『牧神の午後―マラルメを読もう』
(慶應義塾大学教養研究センター選書、2011)、『マラルメ 
不在の懐胎』(慶應義塾大学出版会、2014)などがある。

辻川慶子(つじかわけいこ)1973年大阪府生まれ。京都大学
大学院文学研究科単位取得退学。パリ第八大学にて博士号取
得。現在、白百合女子大学准教授。19世紀フランス文学。
著書にNerval et les limbes de l’histoire. Lecture des
Illuminés (Genève, Droz, 2008)、共訳書にブリュノ・
ヴィアール『100語でわかるロマン主義』(白水社、2012)
などがある。


古城毅(こじょうたけし)1975年東京都生まれ。東京大学
大学院法学政治学研究科にて博士号取得。現在、学習院大学
法学部教授。政治学史。主な論文に「商業社会と代表制、
多神教とデモクラシー(1)‐(5)」(『国家学会雑誌』
第127巻、3・4号‐11・12号、2014)、「フランス革命期
の共和政論―コンスタンと、メストル、ネッケル、スタール
―」(『国家学会雑誌』第117巻、5・6号、2004)、訳書
にブリュノ・ベルナルディ『ジャン=ジャック・ルソーの
政治哲学―一般意志・人民主権・共和国』(共訳、勁草書房、
2014)などがある。

ーーー
<覚え書き>
ベニシューのフュマロリによる説明には、「フランス的
例外」を特権的色彩のもとに論じる「精神の外交」や
「ヨーロッパがフランス語を話していた頃」の著者自身
の傾向が色濃く反映している。しかし、十八世紀フラン
スにおける著作家の状況をめぐるトクヴィルとサルトル
の分析の共通性を指摘し(・・・)

本書ではベニシューはサンドについて言及していない
ようですが、巻末の「ベニシューとその時代(一)」に
次のような記載がありました。

文学者たちのこの共同体は、二月革命によって実現した
「ロマン派の共和国」(・・・)ーラマルチーヌが政府
首班を努め、ジョルジュ・サンドが公報を執筆し、ユゴ
ーが憲法制定議会議員であったーにおいて体制それ自体
とひと時一体化した後、直ちに経験された幻滅を経て、
信者も神も欠いた「対象なき祭司職」(本書22頁)の
うちに沈潜していく。(p660)

翻訳者のお一人の辻川慶子氏(白百合女子大学)は、
ブリュノー・ヴィアール著『100語でわかるロマン主義』
(白水社 2012)の訳者でもおられます。
5月末に開催された「バルザック・サンド合同研究会」
にもご多用の中をご参加下さいました。
氏の様々なご厚情に深く感謝申し上げます。

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