西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
本ブログ記事の無断転載および無断引用をお断りします。
 

8月31日(木)19:30〜平野啓一郎×小川公代 ワイルド『サロメ』を語る

2023年08月30日 | 覚え書き
ご関心がおありの方、どうぞお急ぎ下さい。

お申し込みは、「文学の森」から:
https://bungakunomori.k-hirano.com/about

「文学の森」今後のライヴ配信予定
 8月31日(木)19:30〜平野啓一郎×小川公代 ワイルド『サロメ』を語る 
9月20日(水)20:00〜平野啓一郎×金原ひとみ 
       対談プレミア視聴会「小説家が語る 私の読書遍歴」
 10月31日(火)19:30〜平野啓一郎が語る安部公房『箱男』

ーーー
速報:
作家平野啓一郎 Keiichiro HIRANO が『三島由紀夫論』で第22回小林秀雄賞 を受賞されました。
*小林秀雄賞とは、「自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示したノンフィクション作品」に与えられる賞

『三島由紀夫論』
三島由紀夫、大江健三郎、そしてその二人に多大な影響を受けた平野啓一郎。「虚無からの脱出」という共通の問題意識に対して、三人の小説家はそれぞれどのような答えを出したのか。なぜ小説家が創作に向かうのかという文学論としても、必読の内容。

平野啓一郎が語る『三島由紀夫論』
──虚無感を克服するために出した答えとは

【三島を通じて、自分の文学者としてのルーツを探る】
中学時代に『金閣寺』を読んで強い衝撃を受け、それが文学に目覚めたきっかけになりました。あれほどの衝撃を一冊の本から受けたことは、後にも先にもありません。あのときの衝撃がなければ、自分の人生は今と同じではなかったと思います。
四つの代表作(『仮面の告白』、『金閣寺』、『英霊の声』、『豊饒の海』)を精読し、三島の言わんとしてることを正確に理解して、そのような考え方に至った経緯を、時代背景と彼が影響を受けた思想を通じて分析する。自分の考えを書くのは、すべてその後にしたかったんです。
これは僕の小説のテーマでもありますが、他人とコミュニケーションを交わすとき、相手の本心は結局のところわからないが、その上でやはりわかろうとするというのが、重要です。文学作品においても作者の意図は、究極的にはわからないと言うべきですが、それでもそれをわかろうとすることに、読解の意味があると僕は思います。

【戦後、人々は「生の実感」を何に求めたのか】
三島は戦後の日本社会に対して、非常に虚無的なものを感じていました。戦争体験はあまりにも強烈で、終戦後、日常生活を普通に生きることに戸惑い、「生の実感」をつかみ損ねます。 これは僕の『「カッコいい」とは何か』という本にも書きましたが、戦後、多くの人は国のためではなく、会社のために頑張るというような、一種の出世主義に生きがいを見いだします。一方、仕事以外の享楽的な面では、生きる実感を身体的な感覚に求めていくのです。たとえば音楽だと、ビートルズへの熱狂、また体に響くジャズやロックのしびれるような音楽の陶酔感にそれを求めます。スポーツで体を動かすというのも生きる実感のひとつで、東京オリンピックは象徴的な出来事でした。 戦後は「アプレ・ゲール」と呼ばれる、無軌道になっていく若者たちが現れ、三島より十歳年下の世代の石原慎太郎や大江健三郎らは、若者たちの”性”を生きる実感の主題にしています。三島と大江健三郎は、虚無からの脱出という問題意識を持っていた点で、共通しているんです。 大江さんは、特に初期作品では「性」を通じて、日常生活に緊張感を回復し、生きている実感を取り戻し、虚無からの脱出を託そうとしています。『性的人間』や『われらの時代』がその典型です。しかし、 三島は性的指向や恋愛感情などのセクシャリティーが非常に複雑で、 ストレートに表現できない点で、大江さんとは異なります。

【虚無の上に美を打ち立てる三島の姿勢に共感した】
三島のニヒリズム(虚無主義)に僕は非常に共感しました。三島は、戦後の高度経済成長に大きな空虚感を持ち、自分の居場所はないと感じていたと思います。一方で僕は、80年代後半のバブル経済のときに十代後半を過ごしました。北九州の田舎で育ち、東京のバブルの狂乱状態をテレビで見たときに、非常に空虚なものを感じたんです。 自分は何のために生きているのか、という問いが芽生えてきたときに、三島が戦後社会に感じていた空虚感と、だからこそ、その空疎さの上に美を打ち立てていく彼の文学者としての姿勢に非常に共感したのです。三島の言語芸術は、虚無の上に打ち立てようとしていた一つの大きな実体でした。 だからこそ、最終的に、自己のアイデンティティの空虚感を、「日本」とか「天皇」といったものに結びつけることによって下支えしてもらう発想になっていくところには、どうしても違和感があります。
大江さんが戦中の実体験を元に、反天皇性民主義者となったのに対して、十歳年上の世代の三島は、同世代の多くを戦死で失くしていたため、心情的にそれを否定できなかった。そして、社会が虚無化していたら行動ができないので、天皇を中心とした世界を有意味化して、その上で三島は行動を起こそうとしました。

【他者との関係性の中に、自分の生の基盤を見る】
ニヒリズムの克服という観点では、僕の答えは「分人主義」だと思います。大江さんは、自分の故郷にある四国の森が豊かな文学的空間であり、最終的には孤独な現代人のたどり着く先だということを『万延元年のフットボール』以降、ずっと描き続けています。
 僕は北九州という都市部、労働者としていろんな人たちがたくさん流入してくる街で育ちました。だから地元の豊かな神話的空間が最後は僕を支えてくれるとは思えないんです。僕は天皇および日本の歴史にも自分を接続できないし、もっとローカルな土地に自分の位置や行きつく先があるわけでもない。 
そのような中で、孤独に日常を生きるときに、人間は主体が分化していて、それぞれ他者との関係性の中に実体があるんじゃないかという考えに至りました。
四国の森とか天皇とか、一なる大きな存在に自分を支えてもらうのではなく、具体的な複数の関係性の中に、自分の生の基盤を見るべきではないかという考えです。この分人主義という考え方は、尊敬する二人の作家を批評的に捉えて、自分なりに乗り越えようとした結論なんです。


─先日の講演で、平野さんが小説を書き始めたきっかけは自分の悩みへの処方箋だったという話が印象に残りました。 
平野:現実の世界に完全に満たされて、今の社会で矛盾なく生きてる人は、そのまま人生をエンジョイすればいいと思います。現実の中で何か悩みを抱えたり、満たされないものがある人たちが、文学を読むのだと僕は思います。ある種の苦悩があって、その苦悩と戯れることが心地よいのであればそれでいいと思うのですが、自分の抱えてる悩みが切実だと、その痛みを「治したい」と思うんですよね。 僕の場合、「自分とは何なのか」というアイデンティティの悩みがあり、苦しかったので、その状態から脱したい、自分の症状から回復したいという気持ちがとても強かったんです。小説で単に苦悩を吐露するだけではなく、どういう思想が自分を救済してくれるのかということをずっと考えていました。 ただ、僕の苦悩は僕に特殊なものではなくて、この時代の日本という社会に生きていて、その関係性の中で生じてくる苦悩なので、ということは、同じ社会に生きている読者にも一定程度共有される苦悩ではないかと思います。 その僕に効く薬であれば、他の人たちにも効くのかもしれないという期待で、小説を書いています。 

(構成・ライティング:田村純子)

平野啓一郎『三島由紀夫論』
 ●Amazonページはこちら https://www.amazon.co.jp/dp/410426010X 
●無料試し読みはこちら https://www.shinchosha.co.jp/book/426010/preview/ ■ 〈お知らせ〉
 ◎「平野啓一郎の文学の森」について https://bungakunomori.k-hirano.com/about 
◎ インタヴュー、講演録、対談などが読める平野啓一郎公式サイトはこちらから https://k-hirano.com/articles
 ◎ 「分人主義」公式サイトはこちらから https://dividualism.k-hirano.com/ ◎ 
平野啓一郎へのご質問はこちらからお寄せください https://goo.gl/forms/SSZHGOmy2QBoFK7z2 

■ 〈近年の刊行書籍〉
 『三島由紀夫論』(2023/4/26刊行) https://www.shinchosha.co.jp/book/426010/ 
『死刑について』(2022/6/17刊行) https://www.amazon.co.jp/dp/4000615408/ 
『小説の読み方』文庫(2022/5/11刊行) https://www.amazon.co.jp/dp/4569902197/ 
『ある男』文庫(2021/9/1刊行) https://www.amazon.co.jp/dp/4167917475/ 『本心』(2021/5/26刊行) https://www.amazon.co.jp/dp/4163913734 
『「カッコいい」とは何か』(2019/7/16刊行) https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B07V2MDQR5/ 
『マチネの終わりに』文庫(2019/6/6刊行) https://www.amazon.co.jp/dp/4167912902 
『本の読み方 スロー・リーディングの実践』文庫(2019/6/5刊行) https://www.amazon.co.jp/dp/4569768997 
エッセイ・論考集『考える葦』(2018/9/29刊行) https://amzn.to/2QuH2Bg 
平野啓一郎 タイアップ小説集 〔電子版限定〕 (2017/4/27刊行) https://www.amazon.co.jp/dp/B07252SYDJ ■
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セルア・リュスト=ブルビナ氏(パリ・シテ大学)の講演会が延期となりました。

2023年08月28日 | 覚え書き
皆さま

拙ブログをご訪問いただき、感謝申し上げます。
激暑だった夏も間もなく終わるのでしょうか。
まだ蒸し暑い日が続いております。
ご自愛をお祈りいたします。

前回、お知らせしましたセルア・リュスト=ブルビナ(パリ・シテ大学)の一連の講演会は、延期となったとのことですので、取り急ぎ、お知らせいたします。延期で中止となったわけではありませんので、次回のお知らせを楽しみにお待ちください。


ーーー

「境界を通過しつつ考える―哲学の脱植民地化、脱植民地化の哲学」

【講師】セルア・リュスト=ブルビナ(パリ・シテ大学)
【討論者】鵜飼 哲(一橋大学名誉教授)
【司会】 澤田 直((公財)日仏会館、立教大学)

2023-09-15(金) 18:00 - 20:00
会場 日仏会館
   一階ホール

 フランツ・ファノン(1925-1961)は、アルジェリアで精神科医として活動する一方で、独立戦争に積極的に身を投じた人物です。彼は、『黒い皮膚・白い仮面』(1952)、『地に呪われたる者』(1961)、『アフリカ革命に向けて』(1964)などを通じて植民地の精神的、文化的側面にも鋭い分析を遺し、ポストコロニアル理論の先駆者として広く知られています。アルジェリア独立後60年余を経て、人口動態、環境的正義、地政学的要因からグローバルサウスが脚光を浴びるいま、父方のルーツをアルジェリアにもつブルビナ氏がファノンの業績を問い直します。


 このほか、東京大学駒場Iキャンバス、早稲田大学戸山キャンパス、 宜野湾セミナーハウスにて、講演会、セミナーが開催されます。

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『続 ある少年H わが『失楽園』」

2023年08月25日 | 覚え書き

前回、好評だった第一弾に続き、第二弾も各方面の書評で取り上げられているそうです。
古き懐かしき時代が彷彿としてくるだけでなく、サルトル研究者の筆者が得意とする日仏の映画に関する詳しい話も、いつものように、あちこちに散りばめられていて読者を楽しませてくれます。翻訳者でもおられる石崎晴巳先生の独自の語彙の使い方にも学ぶところ多く、言葉の深みを味わえます。ぜひ、ご一読をお薦めいたします。

ーーー
目まぐるしく変化した戦後東京…特異な時代を果敢に生きた普通の男の子の姿を、ありのままに描く。
サルトルやE・トッド研究の第一人者が昭和の少年時代を振り返る。
好評第2弾!

【目次より】
一 祖父の死 あれがニコライ堂だよ/祖父は孤独の中で逝った/黒澤の『生きる』での通夜/思春期とは、楽園追放か? ほか
二 友達のいる情景 廁(便所)の小窓がガラッと開いた/「バカと鋏は使いようで切れる」/「トム・ソーヤーみたいなことは、しちゃだめよ」/クラシック事始め――『ファンタジア』  ほか
三 「ブーちゃん」 今村昌平の「豚コンプレックス」 ?/正しい美貌と邪淫の美貌/醜男サルトルのケース/前の席の女子 ほか
四 半魚人とグレース・ケリー 白の水着の危うさ/『あばれ獅子』と『肉の蝋人形』/蝋人形ファンタスム/提出日記 ほか
五 グレイトマンよりグッドマンに 教科書に墨を塗る――『瀬戸内少年野球団』/立会川と旗ヶ岡八幡神社/校舎内土足歩行制「与えられた民主主義を……」京マチコ  ほか


『ある少年H――わが「失われた時を求めて」』
石崎 晴己   2019/6/1

「ほんとうの少年Hがここにいる。詩情に満ちた戦後東京の原風景…」 福岡伸一氏(『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』著者)絶賛!
サルトルやE・トッドの研究で知られるフランス文学者が、昭和の子供時代をありのままに語る自伝的エッセイ。

【書評・紹介】
●『キネマ旬報』2019年9月下旬特別号
●読売新聞  2019年7月21日
●「ふらんす」2019年8月号評者=福田裕大氏(近畿大学准教授)
●「週刊読書人」2019年7月12日号 評者=立花英裕氏(フランス文学者)

【目次】
仁古田再訪―― わが A la Recherche du temps perdu(失われた時を求めて)
一 ある少年H
心優しき(?)GIたち/労働争議と「川上音二郎の衣装屋」……ほか

二 父親のこと
父は内地にいた!?/サルトルの映画好き「/叱らない」父親……ほか

三 「性に目覚める頃」
「健全なる男女交際」/『ヰタ・セクスアリス』……ほか

四 才能ある(?)少年
字を書くのは苦手「?/あんた、芸人だねェ」……ほか

五 テレビ少年第一世代
テレビ観せてくれない」?/「ホントは無いんじゃないの」……?ほか





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石川清子(著)『マグレブ/フランス 周縁からの文学』

2023年08月23日 | 覚え書き
石川清子(著)『マグレブ/フランス 周縁からの文学』

背反しながらも強く結ばれ、
混ざりながら描かれる新たなテリトリー
フランス植民地時代から独立を経て、豊かな文学的土壌を築き上げてきたマグレブ文学。《植民地》、《女性》、《移民》をテーマに、周縁から中心へと波及するはかり知れない衝撃を観測する出色の文学論。

《「フランス語マグレブ文学」や「フランス語圏文学」という領域その境界線を変えながら新たな地図を形成していくだろう。本書は「フランス語マグレブ文学」という枠組に視線を投じることから始めて、マグレブ/フランスという背反しながら強く結ばれ、せめぎ合いながら混ざって新たなテリトリーを描いていく文学を、三部の主要テーマに分け、緩やかな時系列に沿って追っていく。》(本書より)

   水声社 2023/3/24



『ファティマ 辻公園のアルジェリア女たち』叢書《エル・アトラス》

レイラ・セバール(著)
石川清子(訳)


水声社、2023年7月

頁数:228頁
定価:2500円+税
ISBN:978-4-8010-0247-0 C0397
装幀:宗利淳一


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セルア・リュスト=ブルビナ(パリ・シテ大学)講演会

2023年08月23日 | 覚え書き


「境界を通過しつつ考える―哲学の脱植民地化、脱植民地化の哲学」

【講師】セルア・リュスト=ブルビナ(パリ・シテ大学)
【討論者】鵜飼 哲(一橋大学名誉教授)
【司会】 澤田 直((公財)日仏会館、立教大学)

2023-09-15(金) 18:00 - 20:00
会場 日仏会館
   一階ホール

 フランツ・ファノン(1925-1961)は、アルジェリアで精神科医として活動する一方で、独立戦争に積極的に身を投じた人物です。彼は、『黒い皮膚・白い仮面』(1952)、『地に呪われたる者』(1961)、『アフリカ革命に向けて』(1964)などを通じて植民地の精神的、文化的側面にも鋭い分析を遺し、ポストコロニアル理論の先駆者として広く知られています。アルジェリア独立後60年余を経て、人口動態、環境的正義、地政学的要因からグローバルサウスが脚光を浴びるいま、父方のルーツをアルジェリアにもつブルビナ氏がファノンの業績を問い直します。


 このほか、東京大学駒場Iキャンバス、早稲田大学戸山キャンパス、 宜野湾セミナーハウスにて、講演会、セミナーが開催されます。


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詩と散文のはざまに―『サロメ』出版130周年記念講演会

2023年08月18日 | 覚え書き
2023年は、オスカー・ワイルドの『サロメ』出版130周年にあたります。
日本では世紀末の演劇やオペラにおいて人気の高い作品ですが、フランス文学の影響は意外に知られていません。アカデミー賞受賞作『サロメー詩と散文のはざまに』(ジョゼ・コルティ社、2005年)の邦訳刊行記念に、著者ベルトラン・マルシャル教授を初めて日本にお迎えし、ボードレール、マラルメ、フローベール、ユイスマンスの作品における人物像の分析を通して従来のサロメ研究を刷新したメタ・文学としてのサロメ批評を著者に紹介していただき、「サロメ」神話のヨーロッパ文芸における意味を問い直します。

2023-09-19(火) 18:00 - 20:00
会場 日仏会館ホール 定員130 参加費無料
問い合わせatogane@kanto-gakuin.ac.jp (大鐘敦子)
参加登録お申込みフォーム
言語日本語、フランス語(同時通訳あり)
主催ベルトラン・マルシャル教授招聘グループ共催(公財)日仏会館、科研費基盤研究(C)研究代表者:大鐘敦子「フローベール生成研究―初期・中期作品におけるファム・ファタルとファタリテ」(JSPS 20K00510)

【講師】ベルトラン・マルシャル(ソルボンヌ大学名誉教授)
【挨拶】中地義和((公財)日仏会館副理事長)
【司会・討論者】大鐘敦子(関東学院大学)


【プロフィール】
ベルトラン・マルシャル
ソルボンヌ大学名誉教授。旧ソルボンヌ大学教授(パリ第4大学文学研究科十九世紀比較文学研究科所長(2008-2018)。研究対象はステファヌ・マラルメ および19世紀詩学(ユゴーからラフォルグまで)から、20世紀ではルネ・シャール、イヴ・ボンヌフォワ、プルーストに及ぶ。プレイアッド版(Pléiade)『マラルメ全集』の個人編纂をはじめとして、マラルメの多くの作品集、書簡集の編纂して刷新したほか、多数の著作がある。名著『マラルメの宗教』(La Religion de Mallarmé, José Corti, 1988)は1989年に、『メリー・ロランへの手紙』(Lettres à Méry Laurent)は1996年に、『サロメー詩と散文のはざまに』は2005年にそれぞれ、アカデミー・フランセーズが優れたマラルメ研究に贈るアンリ・モンドール賞を受賞している。2018年には、フランス人文院(フランス道徳政治科学アカデミー)Académie des Sciences morales et Politiquesからこれまでの功績に対し、Pierre-Georges Castex賞が授与された。

大鐘敦子
関東学院大学法学部教授。専攻、フランス語、十九世紀フランス文学、比較文学。慶應義塾大学大学院文学研究科博士学位取得(論文博士)。パリ第四大学客員研究員。フローベール『ヘロディアス』に関する博士論文を提出したのち、フローベールのプランとシナリオの詩学と共に、世紀を超えたサロメ神話史を研究対象としている。前Oscholarsおよびフランスオスカー・ワイルド協会日本通信員。主な著書に、『サロメのダンスの起源―フローベール・モロー・マラルメ・ワイルド』(慶應義塾大学出版会、2008 巻末付録に「ヘロディアス=サロメ関連作品年表)、フローベールの『サラムボー』のプランとシナリオ、および『聖アントワーヌの誘惑』(第二版)の草稿を編纂した校訂批評版、Rêve d’Orient, Plans et scénarios de Salammbô (Droz, 2016), Cabane fantastique. Édition diplomatique de la deuxième version (1856) de La Tentation de saint Antoine (Droz, 2021)および新版サロメのダンス(『ヘロディアス』)関連草稿の分類整理と転記(2021)などがある。


https://www.mfjtokyo.or.jp/events/co-sponsored/20230919.html


『サロメー詩と散文のはざまに』
ベルトラン・マルシャル(著)
大鐘敦子・原大地(訳)

水声社 2023年3月
頁数:360頁
定価:5500円+税
ISBN:978-4-8010-0716-1 C0098
装幀:滝澤和子

サロメとは誰か。
ヨーロッパ世紀末における《宿命の女》(ファム・ファタル)の代表的存在であり、文学・絵画・オペラ・舞台、彫刻、バレエとあらゆる芸術分野で表象された《サロメ》。従来の比較文学や神話学的分析、精神分析や美術批評とは一線を画し、近代の偉大な文学者たちのテクストを対象として、間テクスト的、間生成批評的、間美学的手法を自在に用いながら、サロメ流行の根底にあった歴史的命題を浮かび上がらせる、マラルメ研究の泰斗による《サロメ》批評!

【目次】
はじめに 
ボードレール的序文として――『悪の華』からオリエントの踊り子へ 
『エロディアード』あるいは現代の美――悲劇から詩へ、詩から神秘劇へ 
『ヘロディアス』――オリエントの舞踏から完全なる詩ポエジーへ 
『さかしま』――ボードレールとフローベールを通過したサロメ
結論 

【補遺】
原注 
参考文献 
訳者あとがき 
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