西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
本ブログ記事の無断転載および無断引用をお断りします。
 

ジョルジュ・サンドを読む

2008年10月18日 | 女性文学・女性



山々が紅葉に彩られ、秋の深まりが感じられる候となりました。
秋はシンポジウム、研究発表会をはじめとする様々な催し物が目白押しの季節でもあります。
サンドに関しては、下記のような研究会が開催されます。

「女性作家を読む研究会」(第六回研究会)
日時 : 11月1日(土)13時半~16時半
場所 : 慶應義塾大学日吉キャンパス・来往舎2階中会議室
テーマ: 「ジョルジュ・サンドを読むー変装するヒロインたちー」
発表担当者: 西尾治子
発表要旨 :
サンドは数多くの変装する女性を描いている。シェークスピアの作品に代表される「変装」という主題は、19世紀ロマン主義文学が好んだテーマでもあった。『ガブリエル』『ジャンヌ』『コンスエロ』『私設秘書』『ナノン』においては、女性登場人物の「性の変装」「階層の変装」「名前の変装」が作品構築の上で大きな役割を果たしている。変装を媒体として理想の高みへと螺旋的に上昇する主要登場人物。彼女たちが直面する相克と懊悩の軌跡に言及しつつ、『コランベ』に象徴されるサンドの理想的汎神論がいかなる点において性的二元論を超越しているかを明らかにすることにより、サンド独自のジェンダー論の生成過程と特質について帰納的検証を試みたい。
                
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ロンサール

2008年10月08日 | 旅と文学


Prieure Saint Cosme 僧院には、ロンサールの詩のほか、コレット、ヴェルレーヌ等の言葉が庭園のところどころに提示されていました。ロンサールの詩には、Marieという名の女性に宛てた「Marie、あなたは僕を愛している。だって、あなたの名前は、"愛するaimer"という言葉から構成されているのだから。」という一種のcalligrammeに言及する一篇があるそうですが、残念ながら、この詩にはお目文字叶いませんでした。
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ツール国際コロック2008 - 続続編

2008年10月07日 | シンポジウム

日本を発った時は、気温30度。ツールの9月中旬は暑くも寒くもなく心地よい気候でしたが、コロックは石造りの中世の僧院で行われたため、ひとつのシークエンスが20分から30分の三つの発表で構成されている最後の発表の質疑応答の頃になると、足下から寒気が襲ってくるので、各シークエンスが終わるたびに参加者の皆さんは日だまりを求めて急いで屋外に出るのでした。

食事は主に同じ僧院内のケータリングによる冷製ビーフやポーク、サラダ、パテ、チーズなどのほか、デザートのケーキも色とりどり、量も十二分で大変美味しかったのですが、コーヒーや紅茶のほかは冷たいものばかりで、毎回となると、これには少し閉口しました。ツールの郷土料理だというトリップとレンズ豆の煮込み料理、それに羊のチーズがシノンのワインと共にとりわけ私には絶品に思えました。主催者の会長さんのお話では、毎食、数十万円の費用がかかっているとのことでした。食事代は主催者側の負担なので、二年に一度しかコロックを開催できないという理由もわかるような気がしたものです。


画像は僧院の庭園ですが、さかさまの世界となってしまいました。
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ツール国際コロック2008

2008年10月05日 | シンポジウム

ツール大学主催のコロックは、国際文芸批評家学会という学会の主催によるものでした。サンドの26巻の書簡集およびプレイヤッド版二巻を刊行されたGeorges Lubinの友人であり、日本のサンド研究に大きな歴史的第一歩を築かれた大先輩先生のお薦めにより会員とさせていただいてから十年以上になるでしょうか、昨年からこの学会の日本支部の事務局長のような役割を仰せつかってしまい、固辞したのですがお聞き届けいただけなくて、今回は会員の学会費を直接収めるというお役目もあり参加したのでした。学会費はフランス方式では各国の会員が各自でツールの学会本部に送金することになっているのですが、郵政民営化以来、日本の国際郵送システムでは20ユーロの会費を送金するのに2500円もかかるので、団体送金するか参加者が代表して全会員の分を持参する方が賢明なのです。

コロックのテーマは "Provocation en litterature"。50名近くの参加者があり、3日間に渡り39の発表がありました。
デンマーク、ロシア、ベルギー、フランス、ギリシャ、セネガル、南アフリカなどから参加された会員の方々による、ルソー、ラ・フォンテーヌ、ミラン・クンデラ、グラック、オスカー・ワイルド、トルストイ、ナタリー・サロートなどに関する発表のほか、日本からは私以外に大学研究者の先生が永井荷風に関する見事な発表をなさいました。なかでも驚いたのは、日本に原爆を投下したアメリカ人パイロットが廃人となってゆく様を描いた心理劇が、70、80年代のフランスで上演されていたという発表があったことです。日本人の発表者がいるための主催者側のサーヴィス精神かと一瞬思ったほどでした。発表者のフランス人の方に、日本には似た例があるが、フランスでそのような事実があることを知らなかったと感想を述べたところ、ご親切に翌日わざわざ関連資料を持ってきてくださり、感激してしまいました。

私の発表は "Provocation et deguisement dans l'oeuvre sandienne" というタイトルの稚拙なものでした。サンド作品における変装は性を隠すという意味において挑発的行為であり、変装と挑発の主題は密接な関係にあること、特に数多くの作品に登場するヒロインの変装には女性であるがゆえにこの傾向が強いことをCorambe、Hisoire d'un reveur, Gabriel, Secreaire Inime, Nanon, 時にはRose et Blanche, Indiana, Isidora, Consuelo などをも例に示し、これらの変装と作家の性のアイデンティティの問題、あるいはフローラ・トリスタン等の当時のフェミニズム運動家たちと一線を画していたサンド独自の発展的人間思想との関連性について、Hisoire de ma vie やCorrespondanceからの引用を用いて分析してみました。

このように不細工な実験的な内容だったのに、真面目な主催者の方は興味深い発表だったとお世辞をおっしゃってくださって赤面、恐縮するばかり。加えて、発表者の方々の中にはメモを見る程度で、まるで講演のように滔々と滑らかな発表をなさる方がおられるというのに、第一セアンスの最初の方の発表だったせいにしていますが、こちらは練習不足の怪しげな発音のフランス語で、時にはつっかえてしまいpardonとお詫びを入れつつというひどいもので、まともな発表にはほど遠しと至らなさを痛感するばかりでした。

これが若い頃であればしょげかえってしまうところなのですが、年端がいっているせいか、僧院の庭園に咲く深紅の薔薇や美しい花々を目にし、美味しいワインやお食事を頂くとすっかり良い気分。外から見る限りでは、参加者の方々もご自分の発表の可否についてさほど気にはされていない様子。一部の方々は毎晩、夜の街に繰り出していたようで、誘われもしたのですが、ホテルに帰ってからもその後のパリの滞在に関しおこなわなくてはならないことが沢山あったために、最後のパーティのみの参加で勘弁していただきました。幸い、お住まいが私の滞在したホテルと同じ方向だとおっしゃるTourangelleの方がお車でホテル前まで毎晩送り届けてくださったので、大変助かりました。彼女はツールに3日間しか滞在できない私のために、お城の方まで大回りして観光案内までしてくださり、その親切心は、宵闇に浮かび上がる幻想的なツール城の美しさと同じほどに深く私を感動させてくれたのでした。

画像は僧院の薔薇の花です。


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2008 フランス

2008年10月01日 | 旅と文学

ツールで開催された国際コロック(ツール大学主宰)にてサンドについて発表し(司会まで仰せつかりドキドキでしたが)、何とか無事に終了し帰国したところです。

ロンサールの墓所で有名なPrieure Saint Comという薔薇や美しい花々に囲まれた中世の僧院に、フランスはじめ、ギリシャ、ロシア、アフリカ諸国等から研究者、作家、詩人が参集し、Provocation en litteratureというテーマを巡り、様々な視点から興味深い発表と質疑応答が繰り広げられました。ツールのChinonというワインが大変美味しく印象に残りました。かつて、車で何時間かかけて訪れたことのあったツールが、新幹線で行けばパリから最速で一時間あれば行かれる至近距離の街となったことも発見でした。

コロックの後、モンマルトルの麓にあるLe Musee de la vie romantiqueなどのほか パリ郊外のPalaiseauを訪ねました。L'Association Les Amis de G.SandのBeaumgartnerご夫妻が、大変ご親切にサンドとマンソォがかつて住んだ邸宅を丁寧にご案内くださり、感激しました。現在ご夫妻が実際に住まわれMaison Blanche と呼ばれる木々に囲まれた緑豊かなこの邸宅には、サンドの面影を残す数々の絵画や当時の様子を彷彿とさせる家具や調度品が大切に保存されています。ご夫妻のお取り計らいにより、折しもJournee du patrimoineの一環としてPalaiseauの町が開催していたサンドのレクチャーコンサートにも参加することが出来、短いながらも充実した仏滞在となりました。


画像はロンサールのお墓です。

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