西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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Agota Kristof est morte

2011年07月30日 | 翻訳 traduction
ペンネームが英国のミステリー作家アガサ・クリスティに似ているので間違えられそうですが、現代仏文学関係者の間ではよく知られているアゴタ・クリストフ(世界的に知られる大ヒット作:"Grand Cahier" 堀茂樹訳『悪童日記』)が、7月27日に亡くなられたそうです。1935年のハンガリー生まれですから、享年76才という惜しまれる死でした。

かつてパリに滞在していた時に、本屋さんで偶然手にして初めて読んだアゴタ・クリストフの"Grand Cahier"。その文体と内容の迫力に圧倒され、とうとう夜を徹して読み終えてしまったことを思い出します。

『悪童日記』"Grand Cahier"は、二人の双子の少年が戦時下の貧困の中で成長していく様を描いた一人称小説(語り手が「ぼくらは」という一人称複数で語り、物語が進行してゆく)です。これは是非とも翻訳して世に紹介すべき偉大な作品なのではないかというのが、その時に覚えた読後感でした。

帰国後、ある外国語学校の上級クラスの講読の授業で、早速、原著の"Grand Cahier"をテキストに使ってみました。ところが、社会人がおもな生徒のこのクラスでは、皆さんとてもよく訳が出来るので不思議に思っていたところ、なんとすでに立派な翻訳が出ていたのでした。

『悪童日記』"Grand Cahier"を翻訳されたのは、アニー・エルノーAnnie Ernaux の名訳でもよく知られる堀茂樹氏。早川書房から出版されています。直訳では「大きな手帳」という意味の"Grand Cahier"を『悪童日記』と訳出されたのは、烏滸がましいことながら、翻訳者のこの小説への深い思い入れが反映されている秀逸な訳と言えるのではないでしょうか。

この小説は連続する四部作の第一作目となっており、第四作目の『昨日 Hier』は映画化もされています。映画はまだ見ていませんが、この四部作もミステリーの内容と脚本調のテンポの速い文体に惹かれて一気に読んでしまうことができます。

外国語学校での未熟な教師の体験から数年後のこと、大学の教員食堂で『悪童日記』の翻訳に纏わる抱腹絶倒の裏話を堀茂樹先生ご本人からお伺いすることになったのでしたが、翻訳者のプライベートに関わることなのでここで愉快なお話を披露することができないのが残念です。

いずれにしても、まだお読みになられたことのない方に是非お薦めしてみたい一冊です。

Agota Kristof est morte

Agota Kristof, l'auteure du Grand Cahier (Seuil, 1986), est décédée ce mercredi 27 juillet à son domicile de Neuchâtel. Née en 1935 en Hongrie, elle avait fui l'oppression communiste à l'âge de 21 ans, avec son mari et leur bébé. Réfugiée en Suisse, elle a raconté dans un récit autobiographique, L'analphabète, comment elle dut réapprendre une langue, le français, pour retrouver une culture et les moyens de s'exprimer.

Le Grand Cahier, traduit en 30 langues, raconte le destin de deux jumeaux livrés à eux-mêmes. Le livre a fait scandale en 2000 à Abbeville quand plusieurs parents d'élèves se sont plaints à la police qu'un enseignant le fasse lire aux collégiens, car ils jugeaient certains passages trop crus. Soutenu par sa hiérarchie, l'enseignant a pu continuer à faire étudier ce texte.

Agota Kristof a écrit aussi une dizaine de pièces de théâtre, tandis qu'Hier, un de ses romans, était adapté au cinéma en 2002.
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