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医療制度改革4

2004年12月11日 13時33分12秒 | 社会保障問題
途中になっていましたが、また再開します。防衛大綱決定前までは、防衛問題ばかり書いてしまっていたかもしれません。

医療費の保険制度は、今まで一定の評価はあると思います。しかしながら、問題点もないわけではありません。そこら辺について私なりに考えてみたいと思います。(カテゴリー:社会保障問題を参照して下さい、前を読まないと何のことかわからないかもしれません)




現在の保険制度は、1人ひとりの患者にかかった薬剤費、手術料、入院費、診察料、指導料等を出来高払いによって各医療機関に払うというシステムです。過去数十年に渡りこのシステムによって医療は運営されてきましたが、幾つか問題点が出てきました。
出来高払いというのは、患者が多ければ多いほど、実施した医療行為や投与した薬剤が多ければ多いほど医療機関の収入が増えます。その為に過剰な薬剤投与や検査などが実施されたり、検査のためのいわゆる「レセプト」病名と呼ばれるようなものまであると言われています。また、医療機関の基準として、医師数や看護師等の数によって入院費などが異なっているため、名義貸し問題のようなことも起こってしまいました。


個々の医療機関の経営的な問題は今のところ考えないものとして話を進めます。
医療関係費が今後も増大してゆくことは既に記事で書いています。このままでは、社会保障費の増大とその財源難から、国債依存が益々高くなり今以上にプライマリーバランスは悪化してゆきます。そのことは財務省の十年後の予測でも明らかです。

ではどうしたらよいのか、ということになりますが、現在の医療における非効率の面をなくしていく努力をする必要があります。基本的に高齢化により病院にかかる人の割合は高くなるし、その高齢人口が増加すれば医療を受ける対象者が増加するので、削減努力によって完全に伸びを抑制できるということではありません。現在と同じ価値(物価や人件費の伸びがゼロとして)であっても、将来は医療費が増大します。


現在は65歳以上の高齢人口は約20%で、保険料を払う人はそれ以外ということになります。年金と同じ考え方ですね。比率でいうと1:4ですが、2025年頃には1:3、2040年頃には1:2となるのです。高齢者の中で、病気にかかったり入院したり手術したりする人の割合が変わらなければ、2400万人の高齢者の時代と、3600万人の高齢者の時代では、その人達にかかる医療費が単純に1.5倍に増えると言う事になります。保険料を払う人が約1千万人減少して保険料収入が減少し、、なおかつ費用は1.5倍に増えることになってしまいますから、保険料を払う一人当たりの負担率を大幅に上げないと支えきれません。



私が考えた効率化に寄与するものとして、医療情報の共有(医療用統合情報システム、「社会保障番号の導入」に書いています)と医療報酬改革であると思います。


医療情報の共有はどのようなことなのか。前の記事にも少し書いていますが、具体的に書いてみたいと思います。

例えばあるおばあさんがいるとします。この人が、曲げられないほど「膝が痛い」ので病院へ行くとします。行くと整形外科で診てもらい、胸や足のレントゲンやCTなどを撮ったりします。手術の必要があり、人工関節を入れることにします。手術前には血液検査などをして、他の臓器に特別な異常がないか調べます。もともと高血圧で薬をのんでいたらしく、心臓や血管系に不安がありそうです。手術に耐えられるかわかりません。そこで、循環器の専門医ということで心電図や超音波などで検査して、薬を追加されるだけで一応手術は大丈夫ということになり手術することにしました。

この流れの中で、整形と循環器が同じ病院内にあればよいのですが、別の病院ならばまた胸部X線や血液検査等が行われてしまいます。重複する検査を、受診する施設が違うと行ってしまうことがあるのです。また、診療情報の交換には現在保険請求できるようになっていますから、こうしたコストは削減できるようになります(ただし、医師同士での専門的見解を聞くときにコストがなくてもよいか、という議論はネットワークシステムにどのような情報を載せるかで変わってくるかもしれません)。


ネットワーク上で医療情報が共有できれば無駄な検査を何度もする必要がなくなります。今までは検査すると収入増になっていたので行っていた面もあるかもしれません。しかし、社会全体で考えると、個々の医療機関が検査器機に投資していくことは医療資源としては非常に無駄が多くなると思われ、そのコストは診療報酬の中から支払われていると考えられます。このような非効率を改善するにも医療情報の共有化が役立つんではないかと思います。


現在まで医療情報は各医療機関や診療科同士である程度の共有はされてきましたが、効率的というには程遠く、また患者の病歴についても正確に追跡できないことも多いため、過去の手術歴や治療歴等についてもオープンな状態(医療担当者同士で)とは言えないでしょう。これらが分っているほうが有益であることの方が多いと考えます。例えば、精神科領域や心療内科領域でのアプローチとして、過去に有効あるいは無効と思われる治療(患者の話などから総合して)があれば、そこからスタートする必要がなく、無駄な試行錯誤が減らせるかもしれません。

現在は患者から「どのような治療を受けたか」については特別な紹介がない限り、患者の言葉として聴取しなければならず、患者の説明能力に依存してしまう面があると思います。ネットワーク上で情報が得られていれば、次の治療に生かせると思います。また、医療過誤があった場合にも、記録が残っているので今までの改竄問題がなくせるでしょう。治療内容の不適切な部分も他の医師のもとに晒されるならば減少するかもしれません(医師同士のチェック機能が働く)。


介護保険ではある程度情報共有が進んでいて、介護度の判定や報酬請求などはかなり電算化されています。医療に全く同じ手法は使えないとは思いますが、参考になるのではないでしょうか。また、大きな医療機関(大学病院とか地域の基幹病院等)では、院内のネットワーク化が進んできていますから、医療業務の効率を考えるとそういう流れになっていくのではないかと思います。個々の医療機関情報で終わるのではなく、全国的ネットワークを構築できれば遠隔地医療の質の面でも、医療経済の面でも改善されるのではないでしょうか。また、医療分野と介護分野の連携も円滑になると考えます。


次回に医療報酬改革について考えてみます。