カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

大変な災厄。

2020-04-08 06:18:09 | Weblog
国境警備隊から〈国籍不明のブルドーザーが何台も国境線を突破してブルネグロの町へ向かっている〉と報告を受けたブルネグロ飛行男爵は、〈想像力は死んだ。想像せよ。〉と呟いて、白鳥のように両手を広げて寝床に仰向けに寝転がった。

詞書「その年、大変な災厄が起こつた。生き残つたひとびとは暫くの間、地下での生活を余儀なくされた。」

ブルネグロの城地下深き湖にあり 打ち捨てられたる貸しボート乗り場

そのひとをかあさんと呼ぶ不思議。湖の駅に汽車は来てゐて

お別れのときが来てゐますと後ろから声せり 知つてゐましたよ慥(たし)かに

赤き布に包(くる)まれて弁当箱は僕の手のなか 揺すれば焼売(シューマイ)と焼き銀杏鳴りぬ

ぶつぶつと声だし本を読む人なり 隣席(となり)の青き鞄の主は

「時刻表通りじや」とぽつつり独りごつ水売り老婆の虹色グラス

湖の駅のホームの突端に立ち尽くしかあさんは手を振り続けたり

地下照らす灯りは青くあをく光る虫たちの羽でできてゐました



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