2024/04/17 読売新聞オンライン
堀江大(まさる)容疑者(32)
日本橋高島屋(東京都中央区)で開かれていた「大黄金展」会場で11日、販売価格約1040万円の純金製茶わんが盗まれた事件は、警視庁の捜査で、逮捕された男の当日の行動が明らかになってきた。茶わんは男が古物買い取り店に約180万円で売却後、事件当日に約480万円で転売されたことも判明し、警視庁が詳しい経緯を調べている。
「取れそうだ」
「ケースを持ったら動いたので、取れそうだから盗んだ」。13日に窃盗容疑で逮捕された江東区塩浜、無職の堀江大(まさる)容疑者(32)は警視庁の調べに対し、こう供述している。
捜査関係者によると、男は事件当日、東京・日本橋を散歩中に大黄金展が開催されているのを知ったと説明。防犯カメラには午前11時半頃、エスカレーターで本館8階の会場に上がる様子が映っていた。
会場には仏具や食器など1000点以上の金製品がずらりと並び、事件当時は約20人の客がいた。男は10分ほど会場内を歩いた後、店員が接客対応している隙に、プラスチックケースから24金製の抹茶茶わんを取り出し、体の前に抱えたリュックの中に忍ばせたという。白昼堂々、わずか数秒の早業で、店員が盗難に気づき110番したのは約35分後だった。
会場内には多数の防犯カメラが設置され、店員約20人と警備員1人も配置されていたが、ケースは無施錠で警報器もなかった。
「借金があった」
男は茶わんを持ち去り、一度は会場を離れたが、何度も会場を出入りしていた。「他にも盗める物がないか」と考えていたという。その後、東京メトロ日本橋駅から地下鉄東西線で木場駅(江東区)へ。午後1時半頃、スマートフォンで検索して見つけた江東区の古物買い取り店を訪れ、自身のマイナンバーカードを提示して約180万円で茶わんを売却していた。
査定結果は金の価格相場を大きく下回っていたが、男が店員に文句を言うことはなかったという。
警視庁は周辺の防犯カメラ映像を収集・解析する「リレー方式」で行方を追った。2日後の13日午前10時前、木場駅近くで男を発見し、約4時間半後に千代田区の東京駅付近で確保した。所持金は約130万円だったという。
男はマンション一室で父親と2人で暮らし、生活保護を受給していた。調べに「(盗んだ茶わんで)茶を飲もうと思ったが、換金した方が良いと考え直した」と供述。「借金があった」とも説明している。
事件当日に転売
被害品の茶わんは、15日に台東区の別の古物買い取り店で発見された。男から買い取った江東区の店が、事件当日に売却を持ちかけ、約480万円で転売していたという。
古物営業法では、古物商は盗品の疑いがある物が持ち込まれた場合、直ちに警察官に申告する義務があると定められている。盗品と知りながら買い取った場合、盗品等有償譲り受け罪に問われ、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される恐れがある
今回の事件では、警察から古物商に対し、茶わんが盗まれたとの情報提供はなかったが、事件当日の午後2時以降、新聞やテレビが窃盗事件を速報していた。
警視庁は両店から事情を聞き、買い取りや転売の経緯を調べる方針だ
大黄金展は各地の百貨店を巡回して開催されており、昨年4月9日には長野市の「ながの東急百貨店」でも純金製の花立て(販売価格約383万円)が盗まれ、県警が約2か月後に80歳代の男を窃盗容疑で逮捕した。