
金杉 鉛筆デッサン
卒業式にばっちり桜が咲いて、ほっこり気分になりました。酒井です。
今回は水曜大人クラス、金杉さんのエンピツデッサンをご紹介致します。ミオスでは入会したばかりの方に、基礎として決められたモチーフのデッサンを4枚書いて頂くのですが、このモチーフは3枚目のもの。アトリエに入会されている方は、皆さん1度は描いたことのあるモチーフだと思います。もしくは、今調度挑戦中!という方もいらっしゃるかもしれませんね。皆さん挑戦されるモチーフなので、普段はブログではあまり紹介しないのですが、今回金杉さんのデッサンの完成度がとても高かったので、参考に載せさせて頂きました。質感の表現が難しいモチーフですが、爪で弾くとキンキン、と涼やかな音が響きそうなほど、硬質なガラスの質感がとてもよく表現されています。そしてワイングラスの華奢な佇まい。瓶よりも薄いガラスの厚みまでしっかりと感じとることができます。影の色もしっとりと美しく、「習作」と呼ぶには勿体ない!まさに「鉛筆画」と呼ぶべき作品です。
鉛筆は色彩こそ白黒での表現しか出来ませんが、芯の削り方、筆圧や持ち方の変化で様々な表現ができる画材です。芯の丸いまま描いてもいいし、尖らせて細密に描き込むこともできるし、また芯を直角にカットして幅の広い面で塗ったり、鉛筆を寝かせて大きな面をザッと塗ることも出来ます。色彩を使えない以上、鉛筆で具体的に物を描く場合は、それらの表現を使い分けていくことが必要になります。明暗の調子のみで描くと、ものの特徴や質感は表現しづらく、生気のない絵になりがちです。逆に線の表現のみでは、重さや質感が表現しづらく、軽くぬるっとした質感になってしまいます。この明暗の調子と線の表現が複合したバランスこそが、生き生きとした絵を描くのに大切なことなのです。
鉛筆デッサンの時、「薄っぺらい」「重さを感じない」などと指摘されて首を傾げた、という経験はありませんか?その場合、まさにこの明暗と線の「バランス」が上手くいっていない場合が多いように感じます。瓶の黒さをしっかり塗る前に細かい描き込みをしてしまったため、線ばかりが目立って瓶の重さを感じられない。または細かい描き込みの上を塗りつぶしてしまったために線の表現が消えてしまった、など、バランスがどちらかに傾いてしまっているのです。金杉さんのデッサンは、必要な量の暗さの上に、それを損ねない丁寧な線の表現が乗っかっているので、こんなに洗練されて見えるのですね。対象の特徴をとらえ、それを自分の感性を持って描くためには、絶対に線での表現が必要になります。ながいもの、短いもの、動いているもの、そのもののもっている方向性など、ものに応じてタッチは変化します。「こんな描き跡が残ってしまって大丈夫か?」と不安になっても、多少冒険心を出して「このモチーフは丸みがあるので、形に沿ったカーブを描いてみよう」など、鉛筆の跡をしっかり残していくことが「薄っぺらい」デッサンを脱却するコツではないでしょうか。