モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

木炭は紙を彫る?

2020-04-23 21:50:29 | 小学生 絵画

旭です!今回は先週の一平先生特集に続き、三夜連続旭特集でいきます!どうぞよろしくお付き合いください!
第一弾は小学生クラスの木炭デッサンのご紹介です。個人的にはかなり面白い課題でした。


まず大人の目線からの面白さは『モチーフの豊富さ』です。剥製のキジ、カモ、牛の頭の骨、牡鹿の頭の骨の4種類でした。フワフワした羽毛の質感にチャレンジするか、ゴツゴツして凹凸の多い骨の質感にチャレンジするかが選べる題材でしたので、どれを選んで描いてもとてもいい経験になったと思います。
そして、子ども目線からの面白さは『戸惑いの連続』というところでしょうか。
普段触れることのない「木炭で絵を描く」というチャレンジがひとつめ。鉛筆より太くてまっすぐじゃないから持ちにくい。力を入れすぎると折れる。手が炭で真っ黒になるので、顔を触ると地獄。
ふたつめは「間違えたらパンで消す」こと。きれいに消えないし、パンだからボロボロ崩れて何度も使えない、「パンの耳は食べちゃっていいの!?」(図らずもおやつが増える)で気力回復。食パンの耳の部分は硬いので炭の粉を吸着してくれないのでいらないんですね。
さらに「紙が大きい」がみっつめです。写真を見ていただいてもわかる通り、小学生の体に対してはかなり大きめの紙を使っています。これは木炭紙というフランス製の専用紙で、炭の粒子の載りがとてもいい紙です。しかし、小学生のみんなには不評。手が届かない、紙に手を置くと絵が擦れてぼやけてしまうので、悪戦苦闘している生徒さんもちらほら。
などなどの前代未聞の事態の連続でしたが、モチーフをよく見て描いていましたね。


木炭で絵を描くのは、ペンや鉛筆で描くことと違い、輪郭を切り取るというより像を削り出す作業に近いです。細部より物体の面を意識して描くとうまくいく気がします。でも、「輪郭モード」(便宜上、鉛筆、ペン)から「面モード」(木炭、筆)に頭を切り替えるのは結構大変です。うすーくアタリをとったら、ぼやーっと広く物体を見て(近眼の方はメガネを外して見た感じ、薄目で見た感じといったら近いでしょうか)、優しく濃淡をつけていきます。
キジとカモは羽が重なった質感とクチバシの硬さを表現しなければならず、羽を細かく一枚一枚描くという几帳面な作業が求められます。牛の頭蓋骨は凹凸の表現を細かく追求しなければならず、白い骨だからといって白を残しすぎると重量感がなくなります。鹿の頭蓋骨は角と頭蓋の大きさ、色味の違い、骨の薄さなど様々なバランス感覚を求められます。
要するに、結構苦戦するモチーフだよ、みんなよく頑張ったね!ということです。しかしなぜこんなにディテールに言及したかというと、生徒の数が減少したため。この人数ならいつもより細部を厳しくしつこく指摘できるな、という方針のもと授業を行ったからでした。授業中何度も「飽きたー」だの「もうやだー」だの言っていた皆さん。なにも私は嫌がらせでやっていたんじゃないんですよ。


出来上がった木炭画たち。みんな「きれいに消えないから絵が汚く見える」と言っていましたが、そんなこと全然ありませんよ!モチーフの周りに黒く跡が残っていることがまた美しいと思います。頭蓋骨はただ写真で見るよりも生々しく、重い存在感を持つようになりますし、カモとキジは剥製なのに躍動感を感じます。何より、黒く塗り込められた怨念にも近い皆さんの思いが(私たちへの恨みかもしれませんが笑)、作品をより感慨深いものに変えてくれる気がします!


お家でトライするにはなかなかハードルの高い(激しく汚れるのでお母さんの許可が下りなそうな)木炭ですが、濃い鉛筆を長く削り芯をたくさん出し、寝かせて「面」を意識した描き方に是非トライしてみてください!モチーフは身の回りにあるもの、なんでもOK。消しゴム、カップ、ただの葉っぱなど。もしかしたら、新しい発見があるかも知れませんよ?


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