岩田です。暑くて暑くて、ほんとにこれからどうなるの?って感じですが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。
先日、しんちゃん先生の着彩のデモンストレーションが行われました。
今年、東京藝大の日本画科に進学した学生で、モノを描くセンスと技術はピカ一です。今回は、彼の描いたプロセスを追いながら、解説を加えていきます。
透明水彩も扱い方で、進め方も様々ですが、対象を立体的、空間的にリアルに描くことを目的とした描き方です。画像では、花の陰が黒っぽく写っていますが、実物は、光を感じさせる美しい陰色です。
先ずは、構図決め。
セットされたモチーフの中で、主役は間違いなく花です。この花を中心に構図を組み立てています。
花をできるだけ見やすい位置に描き入れたいので、上端ギリギリにならないよう、間を空け、左右の空きもどちらかに大きく偏らないよう配慮されています。左にジョッキを置いたので、全体のバランスを取るように貝を右下に配置しました。その為、下が多少詰まるのは仕方ありません。だからといってモチーフを小さくしてしまうと、こじんまりした印象になるので、そこは描き方で、収まりの良い構図に持っていきます。
透明水彩を始められた方からよく聞く質問で
「どのくらい下描きするべきですか?影は付けた方が良いのでしょうか?鉛筆の線が汚く残りそうで、おっかなびっくり描いているのですが…」という答えとして、
鉛筆での下書きは、デッサンという言葉で置き換えることができます。リアルに描く場合は、それほど鉛筆における仕事を重視して良いのです。
絵の具を乗せるので、鉛筆で塗り込める必要はありませんが、この時点で、形は勿論のこと、そのものらしさ、質感、空間性等をしっかり感じられる位、入念に描きます。
とは言え、見て分かるようにそこまで黒々した線でないのが分かるでしょう。最後に練り消しを転がして、余計な鉛筆の粉を取ってあげても良いでしょう。
しんちゃん先生も時間が許せば、本当はもっとデッサンを描きたかっただろうと、見ていて感じました。
透明水彩を始められた方からよく聞く質問2
「最初にどのくらい濃く絵具を乗せたらいいか分かりません。消せないと思うと怖いです。」
「どこから描いた方が良い(もしくは楽)など正解はありますか?」
の答えとして、濃い色のモチーフは始めから濃く、薄い色のモチーフはどちらかというと慎重に絵の具を乗せていって下さい。
色の暗い葉っぱなどを描く場合、先に鮮やかな下色を置いた後は、その上からは、濃度の高い絵の具を思い切って乗せてみましょう。
とは言え、これも加減がありますから、失敗を繰り返して丁度良いところを知るということになりますが、一番やって欲しくないのは、怖がって水っぽい絵の具を何度も何度も重ねることです。
そうしたやり方をしていると、出来上がった絵の発色が悪く、個々の質感も失われ、湿っぽく重い感じになってしまい、カラッと軽やかな印象がなくなってしまいます。
今回はデモンストレーションということもあって、花を他よりも、かなり先に進めていった経緯があると思いますが、基本的に全体的に進めていくのがベストです。とは言え、あくまでも主役の花をある程度先行して描いていきながらというのは間違っていません。
基本はデッサンと一緒で、空間や個々の関係性を確かめながら、全体的に進めることで、短時間で合理的な仕事ができ、私が良く言う、最小限で最大限の効果を生むことが可能になります。大きい仕事から細部へという流れがムダのない描き方をする為のベースです。
皆さんも、しんちゃん先生のプロセスを参考にしながら、同じモチーフを描いてみてはどうでしょう。凄く勉強になると思います!