モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

穏やかな空間に工夫された絵作り

2024-07-25 23:32:04 | 大人 油絵・アクリル


鈴木 油彩

マユカです!今回は鈴木さんの作品をご紹介していきたいと思います。

お孫さんが持ってきた本を一緒に見ている時の様子を描かれました。かなり長い間「ああでもない、こうでもない」とじっくり悩みながらようやく完成まで持ってきたほど、こだわりぬいた一枚です。鈴木さんの優しいまなざしと、お孫さんの楽しそうな表情、ハリのある肌と皺の刻まれた肌との対比も美しく、描き分けがしっかりとされています。手指のこまやかな仕草もいいですね。油彩特有の重厚感のある質感が、選ばれたシーンによく合い肖像画のような印象を受けます。

この絵を見て、先に目が行くのは中央二人だと思うのですが、その2人にフォーカスを当てるために様々な工夫が画面内に散りばめられています。まずは光。奥の大きな窓から入った光が2人に影を落とすように逆光気味の構図になっているのですが、顔周りには明るい色を配置し、身体の周りには暗い色を配置することで「明るい」「暗い」が人物の中に交互に存在しているんですね。こうすることにより明度に差が生まれ、視線が滑って行かず、人物でピタリと止まるようになっています。未来あるお孫さんにバトンを渡していくイメージで、お孫さんには光を多く当て、鈴木さんには影が多く乗るように気をつけて明暗を調整されました。

更にもう一つ。ソファ以外に家具が存在しないことに気が付かれた方はいますでしょうか?鈴木さんはこの作品を制作する際、参考として写真を見ながら描いていたのですが、窓際には観葉植物がありました。この観葉植物、確かに部屋の色どりという意味ではあっても素敵なのですが、描きたいのは人物、お孫さんとご自身の関係性や明暗に込められた印象…人物を邪魔してしまうという理由で観葉植物は描かないという判断をされました。また、中央に大きな面積を占めるソファが寒色系の緑で、人物の肌色の暖色を際立たせるという所にも、主役を目立たせる工夫を感じられます。

一番見せたいのは何か、何を描けばそれが目立つか。逆に何を減らせばより効果があるか…込めたい思いによって構図や明暗を調整するのも、すべて『絵作り』です。何かを参考に絵を描いていると、どうしても忠実に描きたくなってしまいますが、光だけでなく色味や置いてあモチーフを大きく変えても良いんです。皆さんもご自身の作風に会った取捨選択をしていってくださいね!

コメント
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