駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

鑑定団のつぶやき

2011年09月15日 | 診療

 

 皮膚科のA氏はシティーボーイの愉快な大男で、時々患者さんを送るのだが、昨日は午前中で百人診てちょっと疲れたなどと、耳を疑うようなことを言う。内科医は逆立ちしても午前中で百人の患者さんを診ることはできない。優秀なスタッフに囲まれて、難しい患者や初診が少なければ、一時間に二十人位までならなんとか診ることが出来るが、それ以上は無理だ。

 皮膚科医がどうしてそんなに早く患者を診ることができれるかというと、皮膚科の診察は例外はあっても見ることが全てで、十秒で診断が付くからだ。本当は二秒でわかるらしい。内緒の話だが薬や検査の種類も少なく、目に見える病気が相手なので説明もしやすい。決して皮膚科が簡単とか楽とかいっているわけではない。彼らはそうした論評に敏感で、下手にそうしたことを漏らせば、皮膚科医の大変さを聞かされることになる。

 内科医の私は皮膚科の病気の診断は絵や骨董品の鑑定に似ているのではないかと秘かに思っている。これもそうよとにっこり頷くやさしいT先生みたいな人ばかりではなく、沽券に関わると思われるのか、窘めてくる先生も居るので口に出すことは殆ど無い。

 内科でも患者さんが質問に答えるだけであとは黙って、さっさと動いてくれれば、午前中に百人診ることも可能かもしれない。しかし何だか色々聞かされるし、さっさと動けない人が多い。まあそれでいいのだ。急いで診なければならないほど患者さんは居ないし、話を聞くのも診療範囲に入っている。

コメント (4)
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