駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

難しい間の取り方

2011年09月11日 | 町医者診言

 

 殆どの人は普段自覚しないけれども、別に船乗りでなくても、この世に生を受ければ板子一枚下は地獄(天国?)なのだ。何が起きるか分からないのが人生。幸い、事故は希なので、人はそれに慣れて平気に生きていけるように出来ている。中には、そうして生きてゆかねばならない方々もおられるだろう。

 尤も、時々異常な心配性で、頭が痛い脳腫瘍ではないか、胃がもたれる胃がんではないかと医療保険を使いまくってしょっちゅうあちこち受診される患者さんもおられる。不思議なことだが、そういう人でも飛行機は平気という方が多い。恐怖の種類が違うのか、強そうな筋肉男が飛行機はちょっとと尻込みしていたりする。

 希な事故に対する適度な距離というか間の取り方は、以外に難しいものだ。

 犠牲者に鞭打つつもりは毛頭ないが、警戒警報が出ているのに増水している川を見に行って流されたり、防波堤の荒波をどんなもんじゃと見に行って波にさらわれたりする人が居られる。当地では東日本大震災の時、津波で避難指示が出ているにもかかわらず、高台の中学校に避難された方は少数で、津波が来たら竜宮城へ行くからなどと家で寝ていた人が多かった。幸い津波は十数センチで被害はなかったのだが、大津波で多数の犠牲者が出ていたら、避難警報も虚しくと報じられただろう。

 芝居や落語は間が肝腎と言われるが、あるいは人生もそうなのかもしれない。想定外のことにも慌てず騒がず心静かに絶妙な間を取れるのが人生の達人なのだろう。診療していて感じるのだが、この達人はどうもは目立たず普通の顔をしておられるようだ。

コメント (2)
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