駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

揺れる世界の中で

2020年03月03日 | 小験

            

 

 寒暖の差が大きく急に変化するので体調がおかしくなってしまう。患者さんの中に昨日暖房を入れて寝たら暑くて目が覚めたと言う人が居た。一日の中でも気温の上がり下がりが大きく、朝チョッキを着てゆくか手袋をどうするか考えてしまう。基本的に薄着なので日中暖かくなると脱いだチョッキや手袋を忘れそうになる。勿論、家内は着てゆけ持って行けと、言い方は違うが遠い昔の母親と同じことを言う。

 心が落ち着かない時は、愛読著者に手が伸びる。川本三郎さんの「映画をみればわかること」、藤本和子さんの「どこにいても、誰といても」を拾い読みした。川本さんの百分の一も映画を見ていない、二十分の一も憶えていない、四分の一も理解できていない。自分の知らない世界がこんなにあるんだと驚いてしまう。そして藤本さんの生きている世界は微かに想像は出来る程度にしか分からないのだが、米国中西部の広い空と地平線の世界をどこにいても誰といてもと生きてゆく精神に触れて、心開かれる思いがした。

 以前米国中西部の暮らしを書いて居られた方のブログを思い出した。そういえばこの頃はネットで新しいブログを捜さなくなった。物珍しさが薄れたこともあるが億劫に感じてしまうのだ。その代わり、昔読んだ文章を微かな記憶を頼りに、初めてのように読むことが出来るようになった。高齢医師になって、理解力や新しい知識で若い人に敵わなくなったが、年を取るという実感がありその意味が分かってきたところは優っているかもしれない。それを十全に使う活力は残っていないのは残念だが、手の届く患者さんに生かせるので諒としたい。

 米国の有力民主党大統領候補サンダーズ、バイデン、ブルームバーグの後期高齢トリオは皆私より年上なのになんであんなに元気?と訝しみながら見ている。長く生きた知恵を生かす活力があるのは素晴らしいことだ。政治家を目指すような人は特別な心臓を持っているらしい。

 

コメント
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