駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

わかりにくい格差の問題

2016年08月27日 | 小考

                

 格差社会で格差拡大と言われている。どこまで本当なのかは実感しにくい。格差というのは「かくさ」と三音で覚えやすく、差があることだろうと何となくわかったような気になるので浸透しやすく、言葉が先行蔓延している。ところが、言われ出して二年以上経つのに先行する言葉に内容の理解が追いつきそうで、追いついていない。

 それは政府批判に用いられることが多いため、格差はさほどではない是正に動いているという政府側の主張にマスコミが押されていること、人の生活範囲は横に広がっても縦にはさほど広がらないので格差が実感しにくいこと、格差で自分が下の方だと意識するのを避ける人が多いこと、それにきちんとした説明には専門用語や概念が出てきてわかりにくということなどによるだろう。

 誰をも診療する医師にしても、医院の位置する場所によって患者層に偏りがあり、必ずしも格差が実感できるわけではない。生活保護が多く駐車場に滅多に外国製の高級車が駐まることのない私と高級住宅地に位置し駐車場は外国製の高級車で一杯ですよと自慢するM医師では感覚が違う。

 私は経済的にはずいぶん恵まれているはずだが、富裕の定義からは外れてしまう。準富裕層がせいぜいで、東京の億ションを見ると世の中には桁違いのお金持ちが数多いと驚いてしまう。開業医は収入が多そうでも何の保証もなく忙しく働くばかりで、蓄財の才能がないと富裕層まで届かない。一人一人患者を保険診療で診察するのでは、収入はどんなに多くても十倍止まり、手取りは数倍が本当のところだ。尤もこれは盛業の場合で、ほどほどぼつぼつだと収入は多くはなく、アルバイトで当直をしている開業医も居る。

 格差の肝は格にあり、どうもこれには上下というか優劣というかそういう意味合いが感じられるのだが、これをどう捉えるかに差そのものと同じくらい大切な問題が隠されていると思う。私の手に余る問題でも、またいつか少し書いてみたい。

コメント
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