駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

人間の尊厳、何それ

2016年05月18日 | 医療

             

 今朝は日本晴れの好天だ。そのせいか、早く明るくなり五時過ぎに目覚めてしまい、いつもより三本早い電車に乗ってきた。電車はまだ空いており最初から座ることができた。いつもの列車よりも携帯をいじくっている人が少なく寝ている人や朝ごはん?を食べている人が居た。高々四十分くらいで、乗り合わせる人も違うものだ。

 早く着き、時間があったのでマッサージ同意書を何枚か書く、そんなものを書くなという整形外科医の声が聞こえるが、敵もさるもので患者に要望させるので断りにくい。

 マッサージ同意書もそうだが、世の中の現実は机上の離論とは違う。グループホームの患者さんを少し診ている。どこの施設もそうだとは言わないが、施設によっては飼育に近い感じがする所もある。受け入れている認知症患者さんのレベルにもよるので一概に問題とは言えない。よしさんとかさっちゃんとか親しみを込めて呼びながら食事から下の世話まできちんとしているので、それでよいというか精一杯なのだろう。一日中、「いち、にっ、さん」と大声を上げている人、よだれを垂らしてうーあーとしか言えない人、車いすに座り毛布を掛けてもらい、夏も冬もいつも寒い寒いと言っている人・・・。

 世話をしている職員(ほとんどが女性、男性は大抵半年で辞めてしまう)の最大の関心事は排便睡眠がうまくいっているかどうかだ。要するに手間がかからないということが重要なのだ。視察で数時間見回りして、もっと人間の尊厳を考えて一人一人をキメ細かく大切にと注意すれば、きっと尊厳て何、私たちは精一杯やっていますよと返事が返ってくるだろう。まともな会話はできず、歩行もおぼつかない人達を暴れても縛ったりせずに、親しく名前を呼んで年余に渡り昼も夜も世話しているわけだから、一瞥の人に尊厳はと問われても、何のことと聞き返してくるだろう

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