ついこの間年が明けたばかりなのに、もう春分の日を迎えた。花は正直に春を告げている。
今年のNHK杯は将棋は村山慈明七段、碁は張栩九段が優勝した。相手は将棋囲碁とも若手で、順当な勝利と言えるだろう(若手が弱いと言う意味ではない)。勿論、順当に見えてプロ同士で易しい勝利はなく、厳しい戦いを制したのだが、今年は二人の優勝の後ろに妻の力を垣間見た気がした。人間に苦しさを半減し喜びを倍増する存在は大きい。
張栩九段の奥さんは小林名誉棋聖のお嬢さんで女流棋士のトップ争いをしていた実力者なのだが、この数年不振で心機一転を目指して台湾に戻った夫に付いてゆかれ、今は休場されている。張栩九段が今期のNHK囲碁で優勝した影に妻の力があると読んだ。
なぜそんなことを感じたか、将棋の司会者と解説の佐藤九段の言葉がきっかけだったのだが、碁の張栩九段もそうだと閃いた。
内助の功という表現は多少手垢が付いているし、功という表現は一寸違うとも感ずるが、夫に生きる妻の存在というものがあると思う。絶滅危惧力とまではゆかないが、今の世の中、失われつつあるのではと思う。もっと踏み込んで安吾が言ったように愛しい女の力と申し上げてもよいかも知れない。
あるいはうんと踏み込んで、市井の町医者は信頼する人の力と申し上げたい気もする。