駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

テンポがずれている、阿保か

2016年01月15日 | 診療

                       

 今朝も快晴で冷え込んだ。早足で駅へ急いだのだが、途中で靴の中に小石が紛れ込み気になり立ち止まる羽目になった。希だがこうしたことが年に一回くらいある。砂利道でもないし靴と足の隙間はせいぜい二三ミリと思うのだが、どうやって入り込んだのだろう。思いも寄らぬ事が起きるものだ。

 昨日は阿保かと言いたくなる人物に二人ばかり出会った。朝一番に爺さんが昨日から血尿が出るとやってきた。一時薄くなったが今朝は又血尿で今度は尿が出にくいという。成る程、尿に小血塊が混じっている。内科医の守備範囲ではないので総合病院の泌尿器科に電話する。交換手が

 「**先生に代わります」。

 「もしもし、駅前の**医院です。・・いつもお世話になっております。・・・昨日から血尿が出て、今朝から排尿困難になっている患者が来たんですが。・・82歳の男性です。・・」。返事がないので

 「もしもし」。

 「はい」。

 「今から送りたいのですが見て戴けますでしょうか?・・・」。返事がないので思わず「よろしいでしょうか?」。と声を上げて聞いてしまう。

 「どうぞ」。

 どうもこの聞き慣れない名の新任の医師は電話で相槌を打つことを知らないようだ。

 午後の外来にもう一人ずれたのが来た。

 二三日前から食欲が無いという婆さんを連れたおばさんが診察室に入ってきた。大きなマスクをしている。「せんせー、分かりますか?」。怪訝な顔をすると

 「やだー、病院の時お世話になった。看護師の**ですよ。」

 「なんだ、**か。マスクでわかんないよ。・・・えーちっとも変わんないねー」。

 「二十年ぶりですよ、先生は年を取られましたね-」。うんと頷いてみたが、返す言葉がない。もっと他の言い方はないのかね。君だって、よく見るとこじわがと口には出さなかった。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする