駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

惚けにも効用

2016年01月05日 | 小考

                     

  昨日は一昨日から調子が悪いと臨時の往診が三件入り、往診は忙しかったが通常の患者さんはいつもの六割ほどで、忙しくはなかった。これは例年のことで最終日と初日は混まない。そのため、休みの日程に迷うのだが、他業種に倣い、暦の曜日にも依るが大抵六日間の休みにしている。あまり長いと通常の患者さんもお困りになるだろうが、何と言っても寝たきりの患者さんに調子の悪い人が出てくる。

 認知症は今では癌や動脈硬化性疾患と並んで三大疾病になってきた。確かに家族の介護負担、国の経済的負担は増大するばかりで、大問題ではある。まあしかし、三大疾病はどうやって死ぬかということと直結しており、そうした観点からの議論思考がもっと必要と思う。不老長寿は人類の夢ではあるが、それが正解というか当然のものというのは勘違いというか踏み込みが足りないような気もする。

 在宅医療もマスコミに出たり講演したりされる医師は、上手く行った例を取り上げられることが多いけれども、困った例や悲惨な例も数多くあるわけで、根底には財政的な圧力意向があることを忘れてはなるまい。

 急な往診を頼まれた三人の患者さんは寝たきりあるいは準寝たきりでも、認知がないか軽い人ばかりで、誤解を恐れず言えば認知が進んでいる患者さんなら往診は要請されずもう少し様子を見られたような感じがする。認知で五年十年は患者家族とも負担が大きいが、亡くなる半年一年前からの認知は死を和らげる側面もあるように感じている。自分も惚けるのは嫌な気がするが死ぬ半年くらい前からなら、それもいいかなと思う。「ありがと」「さよなら」くらいは言えるほどにはまともなところを残しておきたいが。

コメント
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