駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

隠れている?認知

2016年01月19日 | 診療

                

 今朝は一段と冷え込んだ。我が家から三層の山が見えるのだが、中層の千メートル級の山にも僅かに積雪があり頂上付近がほんのり白くなっていた。冬将軍を忘れるなと言う声が聞こえる。

 21世紀最大かも知れない難病、認知症に振り回されている。認知症は診断はさほど難しくないが、矢面に立って診てゆくのは簡単ではない。レビー小体型ですよと得意げに総合病院から戻されてきても、ああやっぱりと受け取る側は手間取る長い道のりを覚悟しなければならず、診断が確定してにっこりとはゆかない。

 認知症には断線と言うべきわかりやすい物忘れ・・・の他に線は繋がっているのだが、働きのおかしくなった認知もある。こういう患者さんは一見まともに受け答えされるので、最初は認知があるのに気付けないこともある。

 Fさんは81歳のお爺さん、いつも新築した立派な二世帯住宅が住みにくいとこぼされる。高血圧に虚血性心疾患、下肢痛があり五種類の薬を飲んで居られる。前回は下肢の痛み止めが余っているというので、それだけ二週間少なく投与した。今回は5種類全て四週間投与したのだが、一週間ほどして、痛み止めが無くなったので出して欲しいとやってきた。

 「えっ、全部四週間出したでしょ」。

 「いいや、この前の二週間分が足りない」と不思議なことを言う。

 「この間出したからまだ三週間あるはずですよ、あれ、じゃあ他の四種類が余計にあるわけ」。  

 「いいや、他のは三週間しか残ってない」。

 「ああ、痛み止めだけ失くしたんだ」。

 「違う、前回の二週間分が足りない」。

 「一日二回飲む薬だけど、余計に飲んでない?」

 「そんなことはない、この前の二週間分が足りない」と言い張るというか、怒り出す。 

 なんだか狐につままれたというかどうも隠れている認知につままれたような話で、とても二週間分は自費で買ってくれとは言い出せず、保険で二週間出すことにしてしまった。当然という顔でお帰りになったのだが、どういうことなんだろう?。余計に飲んでいると困る、これから薬は一包かするようにしよう。多分、失くしたか前回分を取り戻そうという思い込みだと思うが、よく分からない。隠された認知がある気がするが、まさか私が惚け始めたんじゃあないだろうな。

コメント
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