駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

変容する時間

2015年04月27日 | 人生

            

 年を取ると時間感覚が変容する。勿論、どの年代でも変化しているのだろうが成人してから高齢の入り口までは連続的でさほど大きな違いはないようで、、高齢者になるまで愕然とすることはなかった気がする。ところが六十代後半になって、あれあれと驚くように時間の流れが変わってきた。若い人には分からないだろうが、ダリの描く時計のように時間がゼリー状というか粘土状というか、一定の速度で流れなくなり、時々逆流したりスキップしたりするようになる。

 個人差があるだろうから誰もがそうとは限らないかも知れないが、記憶がこねくり回されて後先が不明になり、親に聞いたことが自分の経験のように感じられるようになる。何時のことだか思い出してごらんと言われても、そういうことがあったような気がするものことが溢れ、境目がはっきりしなくなる。どうもこの境目がはっきりしなくなるというのが、老化というか惚けの始まりではないかと思う。ついこないだまでは惚けは恐怖であったが、七十を目の前にしてやむを得んという心境になっている。

 物理的な時間は分かったようで人間の感覚とは乖離があり受け入れがたい。人間は結局記憶で時間を感じているので、惚け始めると蒟蒻時間というかダリタイムというか、渦巻き時間を生きることになるらしい。

 まさかと思う人もそのうちあれそれほれどれの世界を泳ぎ漂うようになる。昨日は散歩していたら永遠が垣間見えた。

コメント (2)
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