駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

代えたのとは聞きくい

2015年04月22日 | 旨い物

          

 一寸値の張る店には年に一回くらいしかいけない。そうした店が和洋中と七、八軒ある。雛には希な天麩羅の店Nがあり、久し振りに訪れた。

 天麩羅を食べたくなるといつもは庶民的で値段も手頃なバス通りの店Hに行く。ここはそこそこ広く座敷もあり、お客さんのおしゃべりで賑やかだ。Hの天麩羅は美味しいのだが、茶色に揚げられ衣が勝っておりいかにも天麩羅の味がする。其処へ行くとNはカウンター七席だけで座敷はなく、客も大声で喋るような人は居ない。Nの天麩羅はほんのり茶色だが白に近く素材の味が上手く引き出され、さすがと思わせるものがある。

 Nの大将は相変わらず鯔背な良い男で、今回は何だか弟子と思しき若者が脇に控えてあれこれ手伝っている。Nは開店して七、八年になるだろうか、東京一流店並みのお値段でこれで客が付くだろうかと懸念したのだが、久し振りに来て健闘繁盛しているんだなと感じた。お茶とおしぼりを運んできた女性は、何だか前と違う感じがする。若くなって肌がすべすべして、以前の女将とは違うような気がした。前は一寸もっさりとした小太りの三十代の平たく言えば小綺麗とは言えない女性だった。一寸不釣り合いの気がしたが大将とのやり取りで御内儀とわかったものだ。

 店も落ち着いてお内儀は仕事場に出なくなったのかなと思ったのだが、二三度の大将とのやり取りを見ていると従業員とは違う感じがして、あれ代えたのかなと戸惑った。まだ四五回来ただけだし、勿論相当の馴染みでも代えたのとは聞きにくい。

 帰り道、女房はあれは前の女将が磨いて化けただけと言う。女性を見る目だけは負けないので、否あれは代えたのだと思った。おいしい天麩羅を戴いたのだが、妙なおまけが付いた。

コメント (6)
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