駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

受け入れがたい現実

2013年03月30日 | 診療

         

 

 Mさんは77歳の感じの良い老婦人なのだが、残念というか可哀相なことに徐々に耳が遠くなってきた。数年前までは面と向かって少し大きな声で話せば通じたのだが、この頃は耳に向かって大声で話さないとよく聞こえなくなった。

 特定健康診断で身長を測定したのだが、147cmがどうしても受け入れられない。150cmあるはずだと譲らない。看護師が何度も測るのだが、どうしても3cm足りない。実は去年も148cmで既に150cmを切っていたのだが、十数年前の150cmが脳味噌にこびり付いているらしい。穏やかに小声で話せば通じるとはゆかないので、隣室からやりとりが診察室まで聞こえてくる。

 診察室に入る頃にはついに「3cm縮んだのねえ」。と150cmに未練を残しながら何度も大声で呟かれた。幸か不幸か「年を取ると背が縮むんですよ」。という私の相槌ちは聞こえなかったようだ。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする