患者さんの中に障害児の教育に携わられている方が居る。障害者という表現は適切でないのかもしれないがこれ以上差別的でない短い表現を知らないので障害と表現する。身体障害と知的障害との混合の学級を受け持たれている。物静かな先生で、「お仕事大変ですね」。と申し上げると「いいえ、そんなことはありません」。と自然に答えられる。
「いやあ、なんとか」。とか「中々大変ですわ」。とは言われない。質素な身なりで、声を荒げたり不平そうにされたりすることがなく、いつも穏やかで昔はこんな先生が居られたなあと懐かしくなる方だ。
障害者程度区分判定委員をしているので、障害者の実態をある程度知っているのだが、そこは常識のない世界で正直に言えば不毛とか消耗という言葉が浮かんでしまう。いっぱしの親切医者の積もりの私は仕事で多少苦労しても、経済的には恵まれている。とても障害者の教育など自分には出来ないと思う。出来たとしても不平不満が付きまとうだろう。
誰が目眩くるめく巨大な人間界のマニ車を回しているのだろう。障害者用のトイレを壊して回る捩れた腕に聖なる人々の腕も交じっているだろう。