駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

経費削減に提言

2011年12月30日 | 政治経済

 研修医は医療過疎地域での研修が義務づけられている。彼らから山奥や漁村の診療所(自治医大出身者が殆ど)での情報を聞いて、市中の町医者は恵まれていると感じた。もとより何に仕事のやりがいを見出すかは人によって違うが、収入、子弟の教育環境、生活の利便性からは市中の医師が恵まれていると言える。医師会の会合では医療費抑制や競合施設増による収入微減の不平や不満を言い募る医師も居られるのだが、それは視野が狭いというものだ。自治医大出身者の仕事環境を思い浮かべたい。

 仕合わせは勿論だが、不仕合わせも分かち合うのが、社会に生きる人間の智慧であり心得でしょう。医療費を出来るだけ質を損なわずに抑制するのは赤字大国では当然の選択だ。そして、それは可能だと経済非専門家の医者の私でもわかる。ただちに明日からでも5%の医療費は削減できる。きちんと洗い直せば10%の削減も容易に可能だと思う。

 私の患者一人当たりの平均保険診療点数は百人中七十番前後(市内の開業医)である。専門性や患者層によって、ある程度バイアスがあるので、比較は簡単ではないが、私の診療内容は百人中三十番の医院と比して決して引けは取らない。これは診療側からの医療費削減分析に役立つはずだ。逆に患者側からの医療費削減策の参考を提供すれば。私が診療していて、なぜこんなことで何度も受診するのかあるいはどうして高額な検査をするのかという患者は受診する患者の10%は居る。頭が重いからMRIを撮って貰ったという高齢者。どうしてそんな検査をしたのと聞けば「隣の誰々さんも撮った。異常がないと分かれば安心するでしょ。安心料と思えば安いわ」。と言う。安いと言っても一割あるいは三割の負担で残りには公費が使われている。脳ドックを受診してご覧なさい。懐が痛んで頭が重いのは吹き飛んでしまいますよ。

 こうした一見容易に出来そうな医療費削減を阻んでいるもの(勿論医療費だけでなく殆どの経費削減に共通)、それは困難な公平性担保と個人的欲望制御であろう。更に、この具現を一層困難にしているものは手続きの煩雑性と道徳規範の拡散だと思われる。

 どうすればよいか。野田首相のお考えは如何なものか、お聞きしたい。

コメント (2)
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