駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

幻想行程

2011年12月25日 | 町医者診言

      

 あれ字が違うと思われたかも知れない。確かに玄宗皇帝が当初目指した国作りのように理想を目指している点ではちょっと似ているが、変換違いではなく理想の医療をちょっと揶揄しようという私の造語だ。

 私の書斎にはいつも医学雑誌が溢れ、三分の一も読めず、時々途方に暮れるのだが、それを助けようというのか、様々な疾患の診療や治療のガイドラインやマニュアルが出ており、その内の十冊ばかりが置いてある。実はこうした疾患の診療治療のエッセンスをまとめた本(大体A4百ページ前後)は数十冊とあるようだが、前線の内科医の私には取り合えず十冊ほどで間にあう?。高血圧、高脂血症、糖尿病、肺炎、慢性腎障害、脂肪肝、慢性閉塞性肺機能障害、動脈硬化、慢性咳嗽、慢性肝炎、インフルエンザ・・などである。

 百ページはまとめた先生方はコンパクトで読みやすいと自負自賛しておられると思うのだが、読む方には内容が濃く中々読み応えがあり、歯ごたえ十分というか歯が欠けそうになる。椎茸で歯を痛め笑われた寅彦先生の肩を持てば、椎茸は時にかみ切れず結構難敵である。それはこうしたガイドラインマニュアルにも言える。しかも中高年になるとこうした疾患を複数抱えた患者さんが多く、あちらを立てればこちらが立たずということが起きてくる。それに丁寧に従えば医療費も嵩む。それが本筋と言われても、おいそれと行かないことも出てくる。

 幻想とは言い過ぎだとは思うが複数の疾患を抱える多くの患者に、それぞれガイドラインを遵守させることは中々難しく、どうも幻想に思えて幻想行程などと苦情を言いたくなる。

コメント
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