駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

苦肉の診療のコツ

2011年12月20日 | 診療

      

「患者を速く診るにはね、患者の眼を見ないことだよ」。と元循環器部長。そういえば現循環器部長のT先生も「患者さんを沢山診るには患者に触らないことだよ」。と呟いていたな。

 同窓でない医師が数名居たせいか、じろっと見られたのを意識してか「そんなこと言ったかな」。と元循環器部長はとぼけてはいたが、ポロリ漏らした神風診療の極意なのだろう。ゆっくり十人診れば、疲れたと院長室に引っ込む院長の分まで五時間で百人診るために編み出したあるいは見出した極意だったのだろうと思う。

 三十年前だからさほど問題にならなかったのか二分で納得させるオーラを放っていたのか、今ではパソコンばかり見て検査検査という不満、批判が聞かれる。

 勿論、これを直ちにけしからんと言おうと取り上げたわけではない。何よりも現実を知ってほしいと願うからだ。病棟の患者も診なければならない勤務医が時分どきに昼飯も食べられず六十人七十人の外来患者を診なければならない。三時間待って三分診療と揶揄されたけれども、三時間待たせて三分で診療する身にもなって欲しい(三分で診察しても実際には一人四分掛かる)。どうして長く待たされた揚句流れ作業のような診察の大病院へ押し掛けるのか不思議な気がする。設備の揃った大病院の部長に診て貰っておけば大丈夫と感じるのだろうか?。

 この十年、地域の医師と病院勤務医の役割分担が進み、病院外来の混雑が一時ほどでなく和らいだのは合理的で望ましい変化で御同慶の至りだ。

 

コメント
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