駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

餅だけではない

2011年12月01日 | 診療

   

 今日から師走と言うのに、頬に当たる風はさほど冷たくない。外套も羽織っていないのに医院に着いた時には汗ばんでいた。

 昨日、思いがけないことがあった。

 医院を開けて間もなく、K爺さん87歳が息子に付き添われて青白い顔をしてやってきた。呼吸が苦しそうで肩で息をし震えている。朝は普段と変わりなく、朝ごはんを食べて暫くしたら震えだしたという。血圧は104/74と普段より少し低い程度なのだが脈が132と速い。酸素飽和度が81%と異常に低い。呼吸音は両肺で聴取されるが、喘鳴はなく上肺野で吸気の始めにやや粗い断続音がする。食事の時咽せなかったかと言うと咽せないという。肺炎の可能性はあるが熱がなく発症が急なので、なんだかおかしい。まさか肺梗塞とは思うが胸痛はないと言う。 

 とにかく、重症なので、病院へ送ろうと酸素を吸わせて待たせ、S病院へ連絡を取る。満床で受けられないという。弱ったな、T病院にするかと電話しようとしていたら、看護師のMさんが「先生、こんなものが出ました」。と飛んできた。Kさんの背中をさすっていたら突然げっと何かを吐き出したという。よく見ると茸だ。シメジみたいだなと顔を見合わせる。慌ててKさんを見に行くとにっこり楽になったという。酸素飽和度も94%に回復、顔に血の気が戻ってきた。そういえば来た時は声がしゃがれていたような気がする。喉の奥をきちんと見なかった。反省!。

 茸でよかった、餅なら死んでた。

 

 

コメント (2)
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