駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

思わぬ高齢化

2011年12月09日 | 診療

  

 後期高齢者の女性が半年くらい前から両腕が重くて動かしにくい、整形外科に通っているがよくならないと来院した。それは整形の病気じゃなさそうだと神経内科を紹介したところ、進行性筋委縮性側索硬化症と思われますので精査中との返事が来た。えー、進行性筋委縮性側索硬化症は中年の病気で遅くとも六十くらいまでには発症すると思っていたので驚いた。

 昨日、勉強会で病院の先生方に会ったのでその話をしてみたところ、先生この頃は病気が高齢化して、高齢者の重症筋無力症とかも居ますよ。横から膠原病の専門家がこの頃は高齢発症の全身性エリテマトーデスも居るんですよ、と教えてくれた。(全身性エリテマトーデスは一般には若い女性の病気)。

 そうか四十年前に刻印された確固たる貴重な知識も修正を余儀なくされるのかと、思わぬ高齢化に驚いた。四十数年前なら、膠原病の大家であった某教授の口頭試問で六十歳女性の関節痛の鑑別診断に全身性エリテマトーデスを第一に挙げれば、じろっと睨まれ、背中でS君が小声で助け船を出してくれただろう。

 病気の好発年齢は臨床医がいつも頭に置いている大切な指標で、それが変更を余儀なくされているわけだ。病気の高齢化と言うより高齢者の若年化と言った方が適切なのかもしれないが、二十年ほど前から小児科の向こうを張って老年化を立ち上げてきたO先生たちも思わぬ伏兵にたじろいでいるかもしれない。

 要するに昔の年寄りと今の年寄りは違ってきたのだ。二十一世紀の高齢者は古いけれども新人類なのかもしれない。

コメント (2)
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