玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*鈴木邦男の著作(下)

2023年04月28日 | 捨て猫の独り言

 会議中に私の「天皇制に反対」という発言で、その場がぎこちない空気に包まれたという苦い思い出がある。いまでは、その発言は軽率だったと思う。国民の8割以上は(象徴)天皇制を支持している。しかし元号と西暦の併用の不便さはどうにかならないかと思う。そして私は時折り、先の大戦で捨て石にされた沖縄の人たちの反天皇感情に思いを巡らすことがある。

 「皇位は世襲であって、その継承は男系子孫に限ることではない」「日本国民は祖国防衛の権利を有する。国民は徴兵を課されない」「国際連合との協力において海外での治安維持およびその他の活動を任務とする国連警察軍を編成する」鈴木さんは著作の中でこれらの三島由紀夫の発言を紹介している。

 つぎに鈴木さん自身の発言を記す。「生長の家が天皇問題を学ぶきっかけになった。勉強と言っても理論的なものではなく天皇信仰から入ったというべきだろうし、今もそれが根底になっている。信仰に基づくものだから論理的に説明するのは難しい。自分の恋愛感情を説明するようなもどかしさを感じる」

 「天皇は政治的立場にないと言っても、いや外国から大統領や首相がくると日本を代表して会われているではないかとなる。日本イコール天皇であり、天皇イコール日本なのだ。象徴天皇制という名の元首だろうと僕もテレビで感想を言ったが、外国では確かにそう見ているのだ」(了)

 

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*鈴木邦男の著作(中)

2023年04月27日 | 捨て猫の独り言

 1970年に起きた三島事件で民族派運動から足を洗いかけた鈴木さんたちは同年輩の森田必勝の自刃に衝撃を受けて、その後ろめたさから第一水曜日に勉強会「一水会」を始める。一水会の機関誌「レコンキスタ」はスペイン語で失地回復を意味する。

  新右翼の主目標はヤルタ・ポツダム体制の打破である。つまり安保と憲法を二つながらに否定する。その精神は在野であり、反体制でなければならない。60年安保は反米の国民的抵抗運動であったが、右翼は「反共」という大義名分で安保支持に回ってしまった。

 1972年に左翼による三菱重工爆破事件が起きる。そのことについて鈴木さんの「腹腹時計〈狼〉」が出版された。「今までと全く違う左翼が出てきたということに興味を持って書いたのだがマスコミからは新右翼が新左翼の爆弾闘争を評価した、という形で報道され、これで新右翼という言葉も定着したようだ」と語る。

 最後の章は「国家が暴走する時代をどう生きるか」だ。 「国家が強くなれば国民も強くなれると国民は思う。 錯覚なのだがそう思わせるムードがある。 憲法を改正し、自衛隊を国軍にしてアメリカと共に世界に出てゆく。 テロには屈しないというイサマシイ言葉だけが先行して、イスラム国に捕らえられた日本人は見殺しだ」 

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*台湾の半導体産業

2023年04月24日 | 台湾のこと

 台湾では来年早々に総統選挙が行われる。この3月末には民進党の蔡英文総統が訪米し、ほぼ時を同じくして国民党の馬英九前総裁が訪中した。このように総統選挙を目前に、米中の外交上の駆け引きが活発化している。

 「一つの中国」が米国の政策である。米国は台湾総統の公式訪問を認めることができない。これまで台湾総統の訪米によって中国を刺激することは避けられてきた。今回も蔡英文総統は中米のグアテマラなどを経由してロスアンゼルスで下院議長と会談している。

 一方国民党と共産党は、かつて中国の支配を巡って戦った宿敵で、どちらが正当の政権かという歴史的な矛盾を抱える。ただし国民党の馬英九前総裁は現職総統時代に対中貿易や交流の拡大を進め、党内でも台中融和に積極的だという。

 台湾は最先端の半導体の9割を生産し、世界のコンピューターの処理能力の3分の1以上は、台湾産の半導体がもたらしているという。もし台湾が中国に封鎖されれば台湾の半導体に頼る企業には打撃となり、その後、さらに世界経済に打撃が生じる。世界最大の半導体受託製造企業TSMCの創業者が張忠謀(モリス・チャン)だ。プラスチックの王永慶といい、台湾はよく偉大な実業家を輩出する。

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*青柳知義さんのこと

2023年04月20日 | 捨て猫の独り言

 安倍内閣になにか事あるごとに、コメントを求められてきたのが元成蹊高校社会科教諭の青柳知義さんだ。原因は1970年に成蹊高に赴任した青柳さんが授業の中で日米安保条約に反対の立場で話したところ、教室で安倍氏が疑問をぶつけてきた。そのことをのちに安倍氏が著書で触れたことによる。

 なぜか私は自分の属する数学科より社会科の先輩教諭との交流が多かった。青柳さんがその一人だった。この3月に胸騒ぎを覚えながら葉書を出したところ、ご家族から折り返し電話があり、今年の1月に83歳で死去されたことを知った。そのあと私が要望し、生前の詳しい様子が記された手紙がご息女から届いた(青柳さんは奥様に先立たれていた)。

 昨年7月8日の安倍元首相(67歳)銃撃事件の後にコメントを求められ「民主主義を根底から覆す行為で許されない。首相経験者への銃撃なんて戦前に逆戻りしたようだ。礼儀正しい生徒だったことを覚えています。長く首相を務めただけに、後世のために回顧録や在任中の記録を残して欲しかった」と語っている。

 このときすでに青柳さんは癌の告知を受けていたことになる。「師匠は久野収」と一度だけ私にもらしたことがある。1998年には素人企画の20日間のハンガリー旅行に共に参集、2012年には民宿利用の4泊5日の沖縄旅行をご一緒した。西武新宿線沿線の酒場で二人だけで何度か飲んだ。退職後は毎年夏になると長岡に帰りサツマイモを栽培していたので、それを紙袋に入れて酒場にもってきてくれた。

 

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*鈴木邦男の著作(上)

2023年04月17日 | 捨て猫の独り言

 私は、鈴木邦男さんとほぼ同時代を生きてきた。その鈴木さんが今年23年の1月に79歳で亡くなった。「週刊金曜日」で2020年から30回続いた連載「ハンセイの記」を読んでその存在を知った。その連載を終えて最後の2年間は体調を崩していたようだ。

 4月2日に「鈴木邦男さんを偲び語る会」が開かれたという。参加者の顔ぶれがすべてを物語る。田原総一朗、佐高信、武田砂鉄、松元ヒロ、麻原彰晃の三女松本麗華、有田芳生、吉岡忍、森達也、雨宮処凛などだ。

 鈴木さんは新右翼「一水会」の元代表である。さすがに偲び語る会には民族派の団体の参加はなかったと思う。「テロ反対」の先陣を切った鈴木さんは右翼からの評判はすこぶる悪かった。右であれ左であれ大切なのは人間性だと分かるのに何十年もかかったと語る。そして「言論人」として生きた。親しかった姜尚中さん(72)は「含羞の人。そこが好きでしたね」と述べている。

 彩流社から15年に出版された「新右翼最終章」を読んだ。初版が1988年で再版を重ね27年にわたる民族主義運動の現状報告の貴重な記録だ。鈴木さんは早大進学時に、信徒だった母の勧めで新宗教「生長の家」の学生寮に入った。朝5ま時前に起床。祈り、講話、国旗掲揚、体操、掃除と続いた。同期の大半が退寮する中、それでも残った。それとは対照的に、私は騒然とした社会の雰囲気の中で目標をもてず、下宿の部屋でずるずると怠惰を続け自らを袋小路に追い込んでゆくような情けない生活を長く続けていた。

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*生きるLIVING

2023年04月13日 | 捨て猫の独り言

 立川の昭和記念公園の開場は8時半だ。その「あけぼの口」に自転車を止めて10分歩くと映画館に到着する。ノーベル賞作家のカズオ・イシグロ脚本の英国映画「生きる LIVINNG」を見た。黒澤明監督の「生きる」のリメーク版だから、それとの比較が楽しめる。平日の早朝で客席はまばらだった。

 舞台は日本から英国に変わり、時代設定、あらすじやテーマは同じだ。映画は煙を吐く通勤列車を上空から斜めに見下ろす印象的な映像で始まる。映画では、この鳥瞰するカメラアングルが多用されていたと思う。鳥の目でなく絶対者の目かもしれない。通勤列車の仕切った区画には、主人公の4人の部下たちがいつも乗り合わせる。

 黒澤映画では通夜の席の酒盛りの場で主人公を偲ぶのだが、リメーク版ではそれが列車のコンパートメントになる。無表情で淡々と仕事をこなす主人公に部下たちがつけたあだ名は「Mr.ゾンビ」だ。主人公がスコットランド民謡の「ナナカマドの木」を歌う場面は2回ある。

 

 1回目は自暴自棄になり盛り場をさまよい、酔った主人公ウイリアムズ(ビル・ナイ)が、酒場で(亡き妻を思いながら?)絶唱するナナカマド、それから命を懸けて完成した子供たちの遊び場のブランコで、ナナカマドを歌ううちに、雪降る中で絶命するのが2回目だ。期待を裏切らない出来に私は満足した。

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*凄い人がいるもんだ

2023年04月10日 | 捨て猫の独り言

 その人の名は猿田佐世(46)さん。「いま必要なのは戦争を起こさないための外交ですと訴え、講演で国内各地を飛び回る。フロントランナーという新聞の記事で知った。99年司法試験に合格、02年以降人権にかかわる案件を担当、07年ニューヨーク州のコロンビア大ロースクール入学、ニューヨーク州弁護士資格を取得。

 09年にワシントンへ。アメリカ大大学院で国際関係学を学びながら、日本の多様な声を米国へ届ける活動を始める。13年東京でシンクタンク「新外交イニシアチブ」を設立。毎年ワシントンを何度も訪れ、米政府や議会への働きかけを行う。家族は弁護士の夫と6歳、10歳の男の子。

 日本政府や大企業は知日派の属する米シンクタンクに多額の資金を提供、追い風になる発言をしてもらい、日本メディアに報道させて「外圧」をつくり自らが望む政策を日本で実現させていた。この仕組みを「ワシントン拡声器」と名づけた。こんな外交はおかしい何かできることはないか。

 まず沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設反対の声を届けようと手探りで米議会に働きかけを始めた。最初は連絡先もわからなかったが、少しずつ人脈を築いていった。外交に影響を与えるのは容易ではないが、米国防権限法から「辺野古は唯一の選択肢」という条文が削除されたり(15年)、米下院軍事委員会の小委員会が辺野古の軟弱地盤に懸念を示したり(20年)「仲間とともに、少しだが変えられたと成果を感じている。仲間はひたむきに外交に打ち込んでいる姿はアスリートのようと評価している。

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*ツンデレ

2023年04月06日 | 捨て猫の独り言

 WBCの栗山監督が「大谷とはツンダレなんだ」と発言したという記事を見て、私は初めなんのことだかわからなかった。若者言葉にちがいないが、意味は想像もつかない。あの監督が使いこなしているのに私は時代の波に乗り遅れていると思った。

 遅れを取り戻すためただちに調べた。普段は「ツンツン」としてぶっきらぼうな態度をとっているものの、何かのきっかけで「デレデレ」として好意的な態度をとること、またはそのような人のことをいうと定義されていた。もともとはアニメなどの女性キャラクターを形容するのに用いられたようだ。

 

 言葉は、人口に膾炙していくうちにいろいろな役割が付加されて自己増殖してゆく。ツンデレ女子だけでなく、ツンデレ男子も生まれて、さらにツンデレ男女の特徴と恋愛攻略法などのように人と人との関係性へと広がりを見せてゆく。

 親鸞生誕850年を記念する女性住職たちの座談会で、司会の釈徹宗氏が「親鸞聖人に対するイメージや魅力をお聞かせください」という呼びかけに、「聖人とあがめるより、先輩というか、身近な感じがします。今でいうツンデレでしょうか。遠方から教えを聞きに来た人に〈いや、知らんし〉みたいな態度をとることもあれば、弟子の唯円さんが悩みを明かすと〈自分もそうだ〉と寄り添ってくれる」とある女性住職は話していた。

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*長射程ミサイル

2023年04月03日 | 捨て猫の独り言

 沖縄県・石垣島に3月16日、陸上自衛隊の石垣駐屯地が開設された。18日には午前7時ごろ海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」が石垣港に入港。ミサイル部隊が扱う12式地対艦誘導弾などが含まれているとみられる約15台の自衛隊車両などが船から港に下り、駐屯地に向かった。

 南西諸島では、2016年の与那国島、19年の宮古島、奄美大島に続く駐屯地である。これまで宮古島、奄美大島、石垣島には警備部隊とミサイル部隊が置かれている。2012年度から調達が開始された現在のミサイルの射程は百数十㌔、政府は昨年末に12式の射程を伸ばし敵地攻撃能力(反撃能力)を担わせる方針を決定した。

 将来的には今の10倍の1000㌔以上の射程を目指すという。これは敵の射程圏外からでも攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」と呼ばれる。スタンドオフとは攻撃者が敵の射程の「外に立つ」という意味だ。これは「長射程ミサイル」と呼ぶのが通りがいい。いつものことだが長射程ミサイルの保管・配備について防衛省沖縄防衛局は「白紙」を強調するのみだ。そして昨年末に与那国島には新たにミサイル部隊の配備が発表された。

 自民に推されて、21年まで与那国町長を4期務めた元町長の外間守吉氏が取材に応じた。「監視部隊の誘致はしたが、ミサイル部隊は聞いていない。とんでもない話で、だんだんと人やモノ、予算がつぎ込まれて強化しているのを感じる。我々は、政府よりずっと近くで台湾を見てきた。中国が台湾に銃口を向けることはないと思っている。政府は米国に追随し、言いなりのように見える。ミサイル部隊配備は、自ら緊張を煽るようなものだ」

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